第二十六話 白黒
マルスさんとカルロさんから何か悲しい物を見るような視線が感じられる。
何……何の事かわからない……
「ま、まぁこっちの話はここまでにしましょう!というか、彼女持ちなのに……純粋なんですねぇ。」
カルタさんが顔をゆでられたように真っ赤にしながら言い放つ。
今、爆弾発言があったような……
「わ、わらわ達は彼女なんかじゃないのじゃ……」
今度は、シュナの顔がゆでられる。
慌てふためく顔が、面白い。
というか、なんでここで慌てるんだろう。
いつもは夫婦とか言い張っているのに。
「まぁ、からかうのもほどほどにしろよ、カルタ。」
「はい、すみません……」
ちょっとだけ反省したような顔になるカルタさん。
「思いっきり話がそれましたね、あと一つ、僕に残された特技、それは聖魔法です。まぁ、白魔法とも言いますが。」
「それって……」
「そうです、基本五属性でもない、無属性魔法でもない二つの魔法の一つです。代償魔法ともいいますが……」
聖魔法。
火水土風雷無の次に並ぶ、聖邪。
あるものを代償にして繰り出す魔法で、適性のある人は非常に少ない。
無属性魔法よりも少ないだろう。
一族で守り継いでいる魔法と言ってもいいだろう。
聖魔法の効果は、治癒や守り。
神と契約を交わし、代償をささげる事によって普通には起きえない現象を起こすものと言われている。
この魔法を使えるものは神の加護を持っているともいわれる。
具体的な効果の中で有名なのは、浄化、回復、防御。
浄化は体内の穢れた物を取り除く効果があり、毒、麻痺などはもちろん、呪いの類の物まで治す。
回復は体の傷をいやし、普通には治らない傷まで治す。
蘇生まではできないが、致命傷までも治す事ができると言われている。
代償は相当の物だと聞いたことがあるが。
そして、最後の防御は魔法も物理も全ての攻撃を防ぐもの。
代償によって強度は変わるが、どんなものからも守りきれるらしい。
教会などに使える人が居る事はあるらしい。
ちなみに、僕が拾われた時に治してもらった傷も聖魔法による物らしい。
という事は、あの町にも一人が聖魔法の使い手がいたという事だ。
対する邪魔法の効果は、破壊や呪い。
悪魔と契約を交わし、代償をささげる事によって普通には起きえない現象を起こすものと言われている。
この分類の魔法は全て禁術指定を受けていて、使ってはいけない事になっている。
そのため、詳しい事は全くわからない。
ちなみに、代償は身も毛もよだつような物らしい。
聖魔法の代償は今だに明らかにされていない。
噂では、人の心とか、精神とか、記憶とかいろいろ言われている。
それに対して、邪魔法の代償ははっきりと分かっている。
それは、人の肉体。
足や、手、さらには目や耳まであるらしい。
とてつもなく強力な物までいくと、人ひとり消滅するぐらいの物になると聞いたことがある。
「気がついたのは、偶然でした。あの時は……カルロさんが強力な毒にやられそうな時でしたよね。」
「確かそうでしたね。謎の男に会うためには、強いダンジョンに行けばいいと思って三人で突撃して、死にかけたときですね。その時は命からがら逃げだしたんですが、僕だけ最後まで殿を務めていたら、毒を食らってしまいましてね……背負って運んでもらったというのを覚えています。役に立つ為に殿を務めたのに、結果的に重荷になるという皮肉でしたね。」
「まぁ、カルロは痩せ形だったから軽かったし、大した重荷じゃなかったがな。」
「でも、毒はどうなったんですか?」
とりあえず、気になった事を聞いてみる。
「もちろん致死性の毒で、死にかけましたね。その時に必死に解毒薬を飲んだんですけれど、ランクが足りなくて解毒ができずにどんどん体力が削られて、気がついたら気絶していたんです。」
「本当に大変だったな。顔は真っ青、ぶつぶつと何かを呟きながら体はぶるぶると震え、体温はほぼなく、死体のようだったからな。」
「慌てて慌てて、何かしようとしたんですが……何もできずに……ただ泣く事しかできなかったんです。役に立つ事の出来なかった自分への不甲斐なさと、カルロさんを助けたいという二つの心で……そしたら、頭の中に一つの魔法陣が浮かんだんです。」
「……覚醒ですか……」
聖魔法と、邪魔法は何かが鍵となって発動する事が多いと聞いた事がある。
それは、ピンチ、感情の起伏、怒りなどとさまざまらしい。
今回の場合は……感情だろう。
「頭に浮かんだ通りに泣きながら魔法陣を構築したんです……そして、起動したら……カルロさんの顔色が一気に戻り、体温も戻ったんです。たぶん……浄化です。それからステータスプレートに魔法が表示されるようになったんです。」
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