第二十四話 姉弟
「俺も生い立ちはカルロとほとんど一緒だ。まぁ、違っているのは一人、味方がいた事だ。姉なんだが、俺と同じように魔法がほとんど使えなかった。当然の流れでいじめられていたのは覚えている。」
マルスさんが何かをなつかしむような表情で話し始める。
「主に俺がいじめられていたんだが、姉が必ず助けてくれた。正義感が強いというか、人の事をほっとけないというか、ドジなんだけどかっこいい所もあったんだな。」
「いいお姉さんだったんですね。」
「まぁ、迷惑ばっかりかけていたからな……いっつも人の事を優先して自分の事は後回し。今でも、どうせあいつの事だ。誰かの為に東奔西走している事が目に浮かぶな……」
いい家族だなと思う。
一人でも頼れる人がいたら、心も楽になるだろう。
僕にも姉がいたらそんな感じなのかな……
「おっと、話が逸れたな。俺の場合はダンジョンではなく、図書館だったな。二人で歩いていた時に、急に目の前に現れて箱を渡してすぐに消えた。開けたら中に入っていたのは二冊の本と二つのペンダント。で、その本を読んだら、同じように魔法が使えなくなってその代わりに特定の魔法が使えるようになったというわけだ。」
「使えるようになったのは……何なんですか?」
「これを手に持った状態だと、縛魔法が使えるだけだ。」
そういって取りだしたのは、蛇をかたどったペンダント。
どこかで見た事がある気が……
「もちろん全属性で、上位互換の魔法も使えるようになったぞ。まぁ、普通の魔法が使えなくなったと言っても、魔法道具はまだ使えるがな。」
「えっと姉は、今どうしているのですか?」
「いい職業を見つけて働きに出たな。こっちの方面って事は覚えているんだが、場所とか町の名前を忘れてしまってな……」
聞けば聞くほど誰かに似ているような気がする。
声の質も、面影も似てるし……体つきとかは全く似ていないけど……まさかと思うけど……
「まぁ、怒るとものすごい冷静になって容赦が無くなったからな……怒らせそうになった時は抑えるのに必死だったな……絶対零度の視線は本当にきつかったな……」
「……ほぼビンゴです……」
「ん?どうかしたのか?」
ものすごい覚えのある説明……
この人は絶対に……
「その姉の名前って……アイカとか言いますか?」
「何!?お前!心を読めるのか!?」
「……図星ですね。姉には学校の担任の先生としていろいろお世話になりました。」
アイカ先生から、前に蛇のペンダントを見せてくれたことがある。
宝物だと言っていたな……
「姉と会っているのか……どんなふうだった?また、正義感を暴走させていなかったか?」
「先生としてしっかりやってましたよ。正義感もものすごいありましたし、怒ると怖かったですし、変わっていないようですね……でも、何度か助けられましたね。」
「そうか……元気そうで良かった。」
マルスさんの表情が少し柔らかくなる。
これまで不思議に思っていたけど、アイカ先生の魔法を、縛魔法をしか見た事がなかったのは他の魔法が使えなかったからなのか……
常に楽観的で何があっても怒らない限りは楽しそうな人だと思っていたが、昔は苦労していたんだな……
「まぁ、ありがとうな。姉の今の事をいろいろと知れて良かったぞ。」
「いえいえ、よろしければ今、働いている場所を教えましょうか?久しぶりの再会とかは。」
「いや、それはいい。今は、姉は姉の生活があるからな。また、いつか巡りあうときがあるだろう。それまで干渉するべきではないと思う。まぁ、俺の話はここまででいいだろう。まだ、説明してないのはカルタだけだったな。」
「そうですね、後は僕の説明ですね……」
マルスさんの話が終わり、最後に残ったカルタさんがゆっくりと話し出す。
「僕は……二人とは違って、謎の人にも、魔法が使えなくなったわけでもありません。弱いのは確かですが……」
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暴食の奪還者~奪われた闇の力~
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