第二十二話 武器
ガサガサとバッグの中を探る音が響き続ける。
だが、段々とその音は小さくなりあまり良くない結果が想像出来てくる。
……やっぱりないか……
「すみません……今は持っていないですね……」
「そうですか。お手数かけて申し訳ございません。」
やっぱり、探すしかないようだ。
早めに見つかるといいな……
「そうだ!よろしければ私達と途中まで一緒に行きませんか?」
「えっと……どういうことでしょうか。」
「少人数よりも大人数の方が効率がいいじゃないですか。崩壊草が出たらそちらに差し上げますし、どうです?」
少し考えてみる。
この提案はなかなかいいものではないか?
魔物を倒すためにかかる時間も単純計算で半分になるし、アイテムとかも見つかりやすくなるかも……
これは、受けるべきだろうか。
「シュナはどうする?」
「わらわも別にいいと思うのじゃ。そっちの方が効率が良さそうじゃしの。」
シュナもいいと言っているし、今回はいいかな。
「では、宜しくお願いします。」
「いえいえ、こちらこそよろしくお願いします。」
五人に増えたメンバーでダンジョン内の攻略を再開する。
五人だと、通路が狭くて大変な事はありそうだな……
「前方にモンスターを確認!三体のゴブリンです!」
確か、カルタと名前だった人が声を張り上げる。
警戒態勢を取り、拳を握る。
いや、さっきの戦闘で速さは十分だったから速攻で決めるために刀を使うべきか……
刀を抜けるように手を添えておく。
「イツキさんたちは、右の一体をお願いします。僕たちで左の二体を倒します!」
「了解です!」
「戦闘開始!3!」
カルタさんのカウントが始まる。
俗に言う参謀役なのだろうか。
「2!1!開始!」
その声と共に、足を動かして右のゴブリンに突撃する。
後ろから起句を唱える声が響くのが耳に入ってくる。
前への動きを保ちながら刀を抜き、ゴブリンの首筋に刃を叩きつける。
念の為に刀のギミックを作動させて風魔法をまとわせた状態なので、大した抵抗もなく首が落ちる。
風魔法をまとわせたのは、切れ味を良くするためだけじゃなく、血が付かないようにするためもあったが。
ぴくぴくと動いているゴブリンを横眼で見ながら、カルロさんたちの方を見る。
すると、既に絶命したような魔物が一体と肩に穴のあいた魔物が立っていた。
「マルスさん!拘束が間に合っていません!」
「お前の攻撃がいつも速いんだよ!」
カルロさんの方を見ると、手に見たことのない武器を持っている。
……少しだけ装飾された取っての付いている筒だ。
「拘束完了!いいぞ!」
マルスさんの声が響く。
ふと、ゴブリンの方を見ると、体に土でできた縄が巻きついている。
「行きます!『火弾』!」
筒の手元当たりに魔法陣が展開される。
シュナほどではないが、なかなかの構築速度だ。
弾魔法は、玉魔法の超上位互換で、小さな玉をものすごい高速で打ち出す。
ランクはAの使える人の少ない強い魔法だ。
なかなか難しい魔法陣を数秒で構築し、起動させる。
シュウィンという音と共に、小さな火の球がものすごい速度で飛んでいきゴブリンの脳天に直撃する。
そのまま、ゴブリンの脳を貫き後ろの壁が見えるようになる。
たぶん、一撃で絶命したのだろう。
相当な腕前だな……
弾魔法は難易度が高く、扱いも難しいのに……
ドサリとゴブリンが倒れた音が響く。
見事な戦いっぷりだな。
「いやはや、本当にお強いのですねぇ。魔法も使わずに一瞬で倒してしまうなんて。武器使いも捨てた物ではありませんね。」
「そういうあなたこそ、相当じゃないですか。あと、その武器は何ですか?見たことがないんですけれど……」
未知の武器に期待が高まる。
また、新たなアイデアが思いつくかも……
「これは、勇者の作りだした武器のレプリカです。名称は、ハンドガンらしいです。僕は、玉魔法と弾魔法だけが取り柄で、国の特別な許可を得て使っているんですよ。この武器は弾魔法の構築速度をものすごく速く、威力もさらに強く、そして狙いがつけやすくなるという利点がありますね。」
「勇者の武器のレプリカ……なかなかすごいものですね……」
「まぁ、これが手に入ったのも偶然なんですけれどね。」
ゴブリンから取れる素材でそこまでいいのはないが、念のために半分の皮とサーベルだけは魔法袋に突っ込んでおく。
「それでは行きましょうか。」
「えぇ、そうですね。」
止めていた足を再び動かして、ダンジョンの中を進み続ける。
「そういえば、あなたたちの役割とかはあるんですか?」
突然の質問にどう答えればいいのか困る。
魔法が使えないというのを明かしてもいいかもしれないけど、ないと思うけど宗教などに熱心な人だったら異端児だから始末するとか面倒な事になりそうだ。
ここは、誤魔化して乗り切るべきだろう。
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暴食の奪還者~奪われた闇の力~
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