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最弱異端児は夢を見る  作者: 時雨
第三章前編 客人は……
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第二十話 巨石

「うりゃ!」



掛け声と共にツルハシを叩き落とし、壁が崩れる。

落ちていた鉱石を魔法袋に詰め込み、再び歩み始める。



「ザクザク出てくるのう。全く多すぎるのじゃ。」

「種類も豊富、数も豊富、大きさもなかなか。最高の場所だな。」



ハルト鉱石が出たのは本当に良かった。

黒い鉱石で、並の攻撃じゃ傷も付かないほど硬く、魔力伝導率も高い。

杖などは当たり前、剣などの武器に鎧。

そして、乗り物の一部にも使える。

馬車から、魔力車までだ。



少しだけ顔を出している鉱石を発見する。

大きさが未知数だから楽しみだ。



「せーの!」

「止まるのじゃ!」



シュナが急に目の前に現れる。

慌ててツルハシを引いて、後ろに倒れ込む。



「いきなりどうしたの?危なかったんだけど。」

「そこを掘らない方がいいと思うのじゃ。嫌な予感がするのじゃ。」

「うーん。よくわからないけど、少し右の所はいい?」

「そこはいいと思うのじゃ。」



シュナの勘はなかなか当たる。

したがって間違いはないだろう。



「よいしょっと!」



ぼこりという音と共に壁が崩れる。

壁に埋まっていた鉱石が地面に落下し、ゴトリという音を立てる。

大きさはそこまでではないな……



「どこに危険なところがあるの?大丈夫だと思うけど……」

「下がるのじゃ!」



空いた穴に足を踏み入れた瞬間、シュナの叫び声が鼓膜を叩く。

即座に地面をけり、後方へ飛び出す。



その直後、僕がさっきまでいた天井の部分から細かい砂が落ちる。

……まさか……



「上に……大きな反応があるのじゃ。」



落ちてくる細かい砂は小石に代わり、天井がたわみ始める。

そして、遂に天井から黒い鉱石が顔を出しずり落ち始める。

斜めに滑るように落ちてきて、地面にぶつかりドシンと大きな音をたて地面が揺れる。



「……でかすぎない?」

「ハルト鉱石のようじゃな。危なかったのじゃ。」

「まさか、さっきの場所を叩いていたら……」

「あのでっかいのが頭の上に落ちていたのじゃ。」



考えると恐ろしい。

意外とハルト鉱石は重いので、この大きさの物が落ちてきてつぶされたら、ほぼ助からないだろう。



「それにしても大きいものじゃのう。」

「シュナの体よりも大きいな。」



こんな大きい鉱石は見た事がない。

これだけあれば、乗り物一つは余裕で作れるだろう。

円盤はもうあるから……機動性のある物が作りたいなぁ。

夢がどんどん広がっていく。

まぁ、作っても僕は使えないんだけどね。



「で、どうしよう……これ……」

「これを持ち上げるのは無理そうじゃのう。」



試しに近づいて持ち上げようとするものの、少しだけ浮かす事ができただけで数秒で地面に落してしまう。

これは、持ち運べないな……



「もう少し力があればなぁ……」

「これを少しでも持ち上げる事ができる時点で十分だと思うのじゃが……せめて、重い荷物を持てぐらいに力強くなりたいのじゃ……」

「魔法があるからいいじゃないか……でも、おかしいね。シュナの様に魔法が上手な人は体力もある人が多いのに。」



魔法を使って戦い続けた者などは、大抵体のつくりも強くなっていると聞く。

魔力を通す道が強化され、それと同時に身体の性能も上昇するというのが有名な理論だ。

簡単に言うと、ムキムキになるという事だ。

体を動かさなくても体の性能が上がるというのもうらやましいもんだ。

知っている限りの有名な冒険者の中にもムキムキの人は何人かいる。

体を専門的に強化してきた人よりは弱いかもしれないけど、本当にうらやましい。

レベルの上昇分なども含まれると思うと相当の者だろう。



それにしても、魔法を使いまくってそうなシュナがこんなにも弱い体なんだろう。

何か特殊な力がまた、働いているのかな……

もし、シュナが急に体のつくりが頑丈になったらどうなるんだろう。

……だめだ、シュナのムキムキな体などあまり見たくない……

今のままの少女の姿がいいよ……



「シュナ、これからもそのままでいてくれよ。」

「よくわからないけど了解じゃ。」



素直なシュナを見ていると、いざムキムキになった時にどう対応すればいいか迷ってくる。

……永遠に来ない事を願おう。



「そういえば、あのツルハシの木箱はどうやって魔法袋に入れておったのじゃ?」

「あ、言ってなかったね。この魔法袋には一つの特殊効果があって、中から出すもの、入れるものによって袋の入り口の大きさが変わるようなんだ。」

「いろいろと便利なものじゃのう。なら、鉱石の上からかぶせる様に魔法袋を使うのはどうじゃ?」

「おぉ、やってみよう。」



鉱石の頂上に魔法袋の口をひっかけて、そのまま魔法袋としたまで引っ張っていく。

すると、鉱石に合わせて魔法袋の口のサイズが代わり、するすると飲み込んでいく。

そして、鉱石は魔法袋のお腹の中にすっぽりと入って行った。



「これでよいじゃろう。」

「やっぱり、シュナは頭がいいんだな。」



そう言って、シュナの髪の毛を手でかき混ぜる。

シュナが言う直前に思いついていたのは内緒だ。

いつものようにうっとりとした顔のシュナを眺めながら、終わりの見つからないダンジョン攻略の事を考える。

できる限り早めに見つけたいな……

新作を土曜日に出します。

お楽しみに!

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