第十四話 魔王
今回は少なめです。
「まずはひとつ質問じゃ。魔王とはなんじゃ?」
突然の質問。
そこまで詳しくはないので知っているだけの事を答える。
「えっと七つの悪魔と契約を結んだ者だっけ?」
「半分正解じゃ。ならば契約する前は?」
「えっと……ふつうの人々?」
「そうじゃ。二十年前、魔王ももともとは人間だったわけじゃ。」
魔王についてそこまで深く考えた事はなかったのでこの事実は知らなかった。
「そしてもう一つ間違いがあるのじゃ。」
「ん?なんだ?」
「契約したからすぐに魔王になるわけではない。」
契約したら魔王になる。
そういうものじゃないのか。
「なんでだ?悪魔に乗っ取られたらとかいうのか?」
「まぁ間違ってはいない。悪魔との契約が発動する条件。知っておるか?」
「いや、知らないに決まってるでしょ。」
そんなの知っているほうがおかしいと思う。
契約しないとそんなのは分からない。
「強い感情だそうじゃ。怒り、嫉妬などが多いじゃろう。」
ふと思った。
なぜここまで魔王について詳しいのだろう。
普通の人が持っている知識にしては詳しすぎる。
ここは正直に聞くしかないだろう。
「お前なんでそんなに魔王に詳しいんだ?」
シュナは少し迷ったような顔をしたが決意したようだ。
「わらわは……魔王の娘なのじゃ。」
「えっ?」
顎が外れてしまった。
自分の腕で無理やり押し上げる。
嘘だと思いたい。
だが、これまでの言動から本当という事をしっかりと証明している。
魔物と会話ができる事。
使い魔がいること。
そして、勇者が魔王を倒す物語を見て顔をしかめたこと。
これがすべて一気に証明できる。
「一応聞いておく。これは冗談ではないんだよな。」
「あぁそうじゃ。」
少し胸のしこりがとれたような顔で宣言してきた。
「もうひとつだ。もしその話が本当だったとしてお前は人間を殺すためにここへ来たのか?」
これは賭けだ。
本当だった場合僕が殺される可能性が出てくる。
だが、このリスクを消さないとあとあと町の人に迷惑をかけてしまう。
答えは……
「大丈夫だ。わらわがころすのはただ一人の人間だ。」
なんとか大丈夫のようだ。
「その一人の人間とはだれだ?」
「わらわのもっとも忌むべき敵だ。」
すごい簡潔に言われた。
しかも体からこれ以上聞くなというオーラを出しながら。
「まぁいい。信じよう。だが、ひとついいか?」
「なんじゃ?」
「ここまでお前が本当に魔王だったという前提で話したが、それを証明できるのか?」
「一応可能じゃ。」
「それなら見せてもらってもいいか?」
「いいぞい。なら魔力回復剤をもらえぬか?」
何に使うのか分からないがとりあえず近くにある棚から取り出す。
最近なんとなく制作した市場では少しだけ高級品の分類に入るものである。
これ一つで自然治癒で一時間分の魔力が一気に回復する事が出来る。
「ふむ、これでいいじゃろう。」
少し深呼吸をして呼吸を整えているようだ。
「よし、準備万端じゃ。よく見ておれ。」
少し間をおいてスキルを発動させている。
妙にじかんが掛かっている。
「『魔力注入』」
呪文を唱えスキルを完全に発動させた。
シュナの周りが光り輝き、ついには見えなくなるぐらいまぶしくなってきた。
数十秒たっただろうか。
光が急速に収まっていく。
そこに残っていたのは、光り輝く魔力回復剤と・・・
六歳ぐらいの小さな女の子だった。
少女と遭遇した!
少女は逃げだした!
幼女が現れた!←今ココ!




