第十五話 圧殺
「とりあえず、ここを拠点にするとしようか。」
「そうじゃな、広さはこれぐらいでよいのじゃろうか。」
「全然大丈夫だよ。というか広すぎるぐらい。」
魔法袋からテントを出し、設置しようとする。
だが、思いとどまる。
もし、中で時間がかかり過ぎて中で眠る事になったらどうするのだろう。
テントは一つしか持っていない。
という事は、ここで設置した状態で放置したら中では何も無しで寝る事しかできない。
しかも、他の人に見つかったら盗まれるという可能性も否定しきれない。
「シュナ、やっぱりテントを設置するのは後にしない?帰ってきてからでもすぐにできると思うし。」
「別に良いのじゃが、かさばらないじゃろうか。」
「魔法袋だから大丈夫だって。」
「そういえばそうじゃったのう。たまに忘れてしまうのじゃ。」
テントを魔法袋に戻して、立ち上がる。
入り口はあっちだったよな。
「よし、行くか。」
「了解じゃ!」
生い茂る木の間を通り抜けて、ここまで来た道へ戻る。
そのまま、道を歩き続けて洞窟の入り口にたどり着く。
「よし!行くか!」
「わらわも準備万端じゃ!」
ダンジョンの中に足を踏み入れる。
硬い土の感触が足の裏に伝わってくる。
罠などがないかしっかりと確認しながら、慎重に進んでいく。
このダンジョンは罠は少ないが、強力な物が多いと書いてあった。
ふと、違和感を感じて周りを見渡す。
「っと!あぶねぇ!」
シュナを掴んで前方に飛び出す。
その直後、さっきまで僕らがいた場所に上から火の玉が数発飛んできた。
「危なかったのじゃ……」
「威力は小さそうだけど、びっくりするな……」
こんどは、さらに慎重な足どりで歩く。
魔境眼も起動して、魔法系の罠は封じてある。
だが、物理系の罠には対応ができないから要注意だ。
「シュナ。ストップだ。」
「どうしたのじゃ?」
足元に向かって刀を振り落とす。
その直後、プチンと小さな音がする。
「ワイヤー系のトラップか……解除は簡単だけど気がつかないと面倒だな……」
「それにしても罠が多すぎる気がするのじゃ。」
「完全ランダム型だから、トラップの多い場所ができたんじゃないか?」
「それでも多い気がするのじゃ……まぁ、考えても仕方ない事じゃがな。」
再びゆっくりと歩み始める。
しばらく歩いているものの、何も起きない。
「そういえば、『氷雨』の時に辛そうにしてたけど何かあったのか?」
「それは、技能『魔力強化』と『魔法調整』じゃ。」
「聞いたことないな……どんな物?」
「魔力を消費して、一時的にいろいろな物の力をあげられるのじゃ。『魔力強化』は体力も、腕力も、スタミナも、技能もさらには魔法もじゃ。それでも、体力などはほとんど上がらないのじゃがな。代償として、魔力が減るのと疲労感があるのじゃ。魔力は全然大丈夫なのじゃが、あの時は無茶しすぎた様じゃ。疲労感で動くのも大変だったのじゃ……『魔法調整』は、名前の通りで魔法の事がいろいろ調整できるのじゃ。魔法陣で設定できない魔法陣構築の速度なども当てはまるのじゃ。もう少し上達すれば、反重力の魔法陣を使わなかったときの落下現象を横向きにする事、曲がる魔法玉もできるようになるのじゃ。あの時は、『魔力強化』を『氷雨』に使って、『魔法調整』で圧縮率も現象量も全て上がるはずだったものをまとめて魔法陣構築速度に当てて限界の速度で構築したのじゃ。」
「よくわからないけど……なんかすごいという事は伝わったよ。」
まくしたてるシュナの言葉は完全には理解できなかったが、使いこなせれば便利そうだ。
やっぱりシュナはすごいな……完全に魔法を使いこなしているように感じる。
歩きながら会話をしていると、少し広い空間が目の前に広がる。
そして、その中心にこれ見よがしに設置されている宝箱。
うん……罠みたい……
魔境眼を通しても、何も見えないから魔法系のトラップではないだろうけど物理系トラップだったら対処のしようがないだろう……
「シュナ、怪しすぎるから無視しよう。」
「そうじゃな……」
その場から離れてもう一つの道へ行こうとする。
だが、思いとどまる。
ここまでのトラップってそこまで強力な物はなかった気がする。
強くても軽く火傷する程度。
魔法に自信がある人なら対処はたやすいだろう。
ここは、懸けに出て中身を持って帰るのが得策ではないかな。
「やっぱり開けないか?」
「別にどっちでも良いのじゃが、何かあったのか?」
「ここまでの罠は弱かったし、作動しても大丈夫だと思うよ。」
「まぁ、面白そうじゃしいいじゃろう。」
「じゃぁ行くよ!せーの!」
宝箱を思い切って開ける。
その瞬間、プチンという音が響く。
「シュナ!周りを警戒して!」
「もう、してるのじゃ!」
辺りにゴゴゴという音が響く。
この音は……上から!?
上を向いたとき、天井の一部が外れて落ちそうになっているのを見つける。
なかなか大きく、ブロックの様になっている。
圧殺しようというのだろうか。
「お主!よけるのじゃ!」
「う~ん……なんかここまでの罠にストレスがたまってるから……ぶっ壊す!」
ついに、ブロックが外れて落下してくる。
人を数人ぐらい簡単につぶすことができるだろう。
右手を握り、腰へ持ってくる。
体に力を込めて、落ちてくるブロックに目標を定める。
動きの無駄を省いて、最高速度で……こぶしを叩きつける!
手に衝撃が走り、体に負荷がかかる。
落ちてきた岩にはヒビが入り、一気にバラバラになる。
……意外と脆かった。
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