第十四話 乱舞
「とりゃぁぁぁ!」
刀を抜いて木に斬りかかる。
軽く力を入れると木はあっさりと切れて倒れて行った。
「……やっぱり切り株が残るか……もう少し下から切らないとだめだな……でも大変そう。」
「一撃とはすごいのう……」
倒れた木をどかして、こんどは切り株に向かって刀を振るう。
だが……あまりにも姿勢が低すぎて旨く切れない。
「だめか……」
自分で空き地を作るのは難しいという事だろう。
おとなしく探した方がいいのかな……
「ちょっと、わらわにやらせて貰ってもよいじゃろうか。」
「別にいいけど、できる?」
刀を抜いて、差し出す。
だが、シュナは受け取らない。
「わらわは魔法でやるのじゃ、ちょっと離れてもらえるかのう。」
「分かったけど……何するの?」
「この近くには人が少ないのじゃし、思う存分できるのじゃ。」
「なんか分からないけど、怖いから離れておくね。」
シュナが見える範囲で、できるところまで下がる。
なんだか本当に嫌な予感がする……何が始まるんだろう。
地面すれすれのところに少しずつ魔法陣が描かれていく。
シュナを中心にして構成されていく魔法陣。
構成速度は速いものの、遠くから見るとゆっくり描かれているように感じる。
大きさはどんどん大きくなり、心配になってさらに後ろに下がる。
前の『氷雨』の時は辛そうだったが、今回はピンと立って微塵も疲れを感じさせない。
あの時は何か無茶をしたのだろうか。
約一分ぐらいかけて魔法陣が完成される。
足のぎりぎりまで魔法陣がきていて、相当な大きさを感じる。
「行くのじゃ!」
相変わらずの掛け声と共に、魔法陣が起動する。
見た事のない構成……本当に何が始まるのだろう。
シュウィンという音と共に、小さなかけらがこちらに飛んでくる。
この匂いは……木?
ふと、音のした方向を見ると木が少しずつずれていく。
……何が起きているんだ?
シュウィン、シュウィンという音がどんどん響き、辺りの木がすこしずつずれていく。
そして、ついに一つの木がドシンと大きな音を立てて落ちる。
音はどんどん増えていき、シュウィシュウィシュシュシュと重なって聞こえてくる。
木はドシンドシンと倒れていき、倒れたきもどんどん切り刻まれていく。
小さな木のかけらがあちらこちらに飛び散り、顔にもあたってくる。
魔法陣の範囲に立っている木はなくなり、倒れ伏している木も細かく切り刻まれていく。
飛び散る木の粉もさらに空中で切り刻まれ、シュナの周りで茶色の物質が飛びまわる。
シュナの姿も木の粉に囲まれてほとんど見えない。
……本当に何が起きているんだ?
「……『起動』」
気まぐれに魔境眼を起動させてみる。
視界に光が灯り、周りの光景が変わる。
「……は!?」
シュナの周りで起きている現象はとんでもないものだった。
緑色の刃魔法と同じ形をした物が縦横無尽に駆け回っている。
しかも、無数に。
緑色の刃が通った後には切断された木が残る。
速度も相当で、残像が見えるぐらいだ。
刃の量と速度のせいで、緑のドームみたいに見えてくる。
……中に入ったら対処できる自信がない。
木はもはや、微塵も残って無く、茶色の粉と変身している。
ふと、思い当り魔法の核を探す。
ウソだろ……
飛び交う全て刃の中心に、小さく緑に輝く点を見つける。
これ、敵が使ったらすべてを撃ち落とさなければならないのか……
シュナの足元にもう少しだけ明るい点があるものが、あそこに攻撃する前に他の刃にやられるだろう。
たぶん、あの点を攻撃すれば魔法が止まるのだろう。
小さな木の破片も砂の様に変貌し、完全にぼろぼろだ。
少しずつ、飛びまわっていた刃が消えていき全て消える。
「そして、これで終わりじゃ!」
速攻で構成された風を出すだけの魔法陣が起動される。
発生した風で、木の砂が周りに思いっきり飛んでいく。
やば……!目に入った……
ぱちぱちと瞬きを繰り返し、目を元に戻す。
周りは土の床しか残って無く、切り株の跡かたも無い。
土もキレイに均されていて、ところどころに木の根が顔を出している。
「……本当に空き地を作ったのか。」
「もちろんじゃ!」
「なんの魔法を使ったんだ?」
「『風刃乱舞』じゃ。わらわのオリジナル魔法ってところじゃ。」
「オリジナル魔法!?どうりで見覚えがないと思った。」
自分自身で開発する魔法。
それが、オリジナル魔法なわけだがひとつ作るのにとてつもない労力が必要になる。
どんな現象を作るか決め、魔法陣をどんなふうに構築するか決めるだけだが、意外と難しいらしい。
魔法をいくつか組み合わせて作ったりするのがメインだが、それも魔法どうしが反発してしまったら使いこなせない。
これは、相当の慣れが必要だ。
一から作る事もできなくはないが、ほとんど開発されていない。
……シュナのチートっぷりがさらに露わになったな。
みなさん、ブックマーク、評価、感想など宜しくお願いします。
下の文字クリックも宜しくです!




