第十三話 研究
「もう少し詳しく説明してくれんと分からんじゃろ。」
なんか飽きられた様だ。
少しばかりふざけ過ぎたかもしれない。
「冗談だ。実のところ一つ小さいころから冒険者になりたかったんだ。」
僕がこの職業に就きたいのは世界を旅してみたいからだ。
冒険者の集う施設、冒険者ギルドは各地にありどこにいても依頼を受ける事ができる。
なので、やろうと思えばどこにでも行けるというわけだ。
普通の仕事についてしまった場合はほとんどが同じ場所での仕事となるのでどうしようもないのだ。
「ほう、それでなぜ敵が出てくるのじゃ?魔物と戦うのじゃったら魔法ではなく魔物の研究をするじゃろ。」
「それは、学校で冒険者選定大会があるからなんだ。」
冒険者になるにはいくつか方法がある。
一つはだれかギルドのお偉いさんの紹介だ。
だが、そんな知り合いは一人もいない。
二つ目は誰か師匠を持つこと。
だが、これは師匠を見つけるまで無職になってしまう。
おばあちゃんを悲しませる事だけはしたくない。
三つめ、ギルドの承認試験を受ける事。
これは非常に簡単だ。
だが、僕には出来ない。
なぜならこれは魔法の技術で合否が決まるからだ。
魔法が使えないため門前払いされるのが落ちだろう。
最後にのこった手段。
これが冒険者選定大会というわけだ。
これは筆記テストと実践の二つで構成されている。
最初に筆記テストを行い、順位が付けられる。
例えば50人が参加したとする。
そして順位が付けられたら、冒険者選定大会の本番が始まる。
最初は順位が50位の人との49位の人での戦い。
次はその勝者と48位との戦い。
さらに次はその勝者と47位との戦い。
となんども続いていくというわけだ。
そして、最後に残った者が優勝者というわけだ。
優勝者は冒険者になる事が出来るというわけだ。
これの利点は勝てばいいというわけで魔法が使えないというハンデはあるが勝てないというわけではない。
これで勝利するためにいろいろ考えているわけだ。
「そういうことじゃったか。」
納得したようだ。
「で、なにか策はあるのじゃろうか?」
いつか来ると思っていた質問が来た。
これには胸を張って答える事が出来る。
「何もない!!」
「お主……本当に大丈夫じゃろうか……」
呆れの視線が痛い。
どんどん評価が下がっていく感覚。
もともとが多いからか大丈夫(?)
「今全力で立てているんだけれど……足りないんだよ。」
「なにがじゃ?」
「切り札。」
テストには自信がある。
たぶん一位はとれるだろう。
魔法についての知識は豊富だ。
だが、問題は戦闘の方だ。
何人か優勝候補は絞ってある。
そして一人ひとりの得意魔法やパターンなどはある程度調べてあり、情報面ではばっちりだろう。
だが、相手への決め手がないのだ。
いくら相手を知っていてもその間をつけなければ意味はない。
「そういうことじゃったか。」
「というわけだ。」
いったん間を取って話を切り出す。
「手伝ってくれないか。」
「わらわと伴侶のちぎりを結ぶのじゃったらよいぞ。」
そんな感じの事が来るとは思ったが直球にくるとは思わなかった。
ここで一気に断ったらたぶんだめだろう。
ならばここはお茶を濁すにかぎる。
「条件付きでならいい。」
「なんじゃ?」
「一つ目、それは優勝してからだ。」
「それならよいじゃろう。」
これはすんなりと通った。
次が勝負だ。
「そしてもう一つ。そこで結ぶのは伴侶のちぎりではなく親友としてではだめか?」
「それは……」
これはぎりぎりかもしれない。
だから、たたみかける。
「さすがにいきなり伴侶のちぎりとかは無理だ。そういうのは相手を信頼できるようになってからだ。」
「お主はわらわが信用できぬというのか?」
「そういうわけじゃない。だが、そういうのは段階を踏んでからだろう。」
「それはもっともじゃな。わかったそれで妥協しよう。」
無事終了した。
「では、お主の現在の研究の成果を見せてもらってもよいか?」
「ちょっと待ってくれ。」
少し迷ってしまった。
研究を書きつくしたノートを出すべきか作った魔法道具を見せるべきか。
まぁ、一番分かりやすい魔法道具を見せるべきだろう。
「これが唯一制作に成功した魔法道具だ。」
近くのテーブルに置いておいた風魔法の刀を渡す。
「ほぅこれは……なかなかの上等なものではないか。だが、なぜに中に魔法石が……あぁそうじゃ。魔法石が使えないのじゃった。」
なかなか良い観察眼を持っているようだ。
「7重の魔法陣とは……お主相当出来るやつじゃろう。」
そこまで分かるとは思わなかった。
風の現象を発生させる。
それを二つに分ける。
そして別々に圧縮する。
片方は鋭く刀を補強し、絶えず刀の周囲を高速で移動するようにすることで切れ味を補強させる。
もう片方は刀の進行方向を認識し、圧縮した現象を開放させる。
全七つの行程を刻みこんでいる。
「これと反射神経があれば魔法を防げるはずじゃが。」
「なに!?」
初耳である。
魔法を防ぐには対抗魔法というのを発動させる必要がある。
たとえば土属性の魔法を防ぐには一般的には『反土属性壁』を使う。
これはほとんど魔力を消費せず即座に使う事が出来るため便利である。
『反土属性壁』で他の属性の魔法を防ぐこともできるが多少もろくなってしまう。
だが、少し魔力を多めに込めることで防ぐ事ができる。
だが、その魔法が使えない僕は避けるか盾を使うしかない。
だが盾の場合同時に複数の攻撃が来た場合には防ぎきることができない。
そのため避けることに専念している。
「教えてくれ!その方法を!」
「まぁ後でまとめてこの改良案も含めて説明するとしようかのう。」
早く知りたいのだが今は置いておこう。
「他の研究成果も見せてもらえぬじゃろうか。」
「ぜんぜんいいぞ。」
立ち上がって本棚に近づいていく。
そこに置いてある研究ノートをとるためだ。
「お主の本棚か。本が多いのぉ。」
「これは趣味なんだ。意外と面白いぞ。読んでみるか?」
「ちょっと見てみていいか?」
「ぜんぜん構わないよ。あ、届かないところにあるものは言ってくれればとるから。」
一つ一つ題名をじっくりと見ているようだ。
逆境ものや転生ものがとても多い。
バトル系が多いので少し恥ずかしい。
二段目を見終わって三段目にいったころだろうか。
いきなりシュナが顔をしかめた。
見たくないものを見てしまったような顔だ。
その顔には怒りも含まれている気がする。
「ん?どうしたのか?」
心配になって声をかける。
シュナが見ているのは勇者が魔王を倒すお話。
「お主は……魔王についてどう思うのじゃ……」
怒りの籠った眼差しでこちらを見てきた。
少しビビったが正直に答えた方がいいだろう。
嘘をつくと見破られる可能性が高い。
「魔王って世界のあちこちを破壊した悪者っていわれたやつだろ?」
「やっぱりか……」
視線に含まれる怒りが増えた気がする。
「だが所詮は物語の中だけの話。真実を元にしていても都合良く変えられたり、裏でなにかがあったりするだろ。だから実際に見た事しか完全には信じないようにしているんだ。」
再びあっけに取られたような顔をするシュナ。
「はぁぁはっっはぁっ!やぱりお主は面白いのう。」
笑いだした。
なんか感情が不安定な人に見える。
「で?どうしたんだ?その物語になにかあったのか?」
シュナが落ち着くまで待ってから話しかける。
「お主が秘密を話してくれくれたのならわらわも話すべきだな。」
シュナは少し真面目な顔になって話しだす。
「それは二十年前のことじゃ。」
ちなみにタイトルを少しだけ変えました。
最後に一言増やしただけですけれど。




