第五話 再会
「これも美味しいのう!」
「手に肉の串を8本持って楽しそうなのはいいけど、転んでダメにするなよ。」
「そんな事はしないのじゃ!」
シュナが上機嫌でスキップしながら歩いていく。
いやいや、スキップなんてしてたら危ない気が……
「フギャ!」
「……言わんこっちゃない……」
シュナが顔から前のめりに盛大に転ぶ。
うん……お肉は……買い直してやろうかな……
「い、痛いのじゃ……でも!大丈夫じゃ!」
「いや、どこも大丈夫じゃないと思うよ。」
「肉だけは……肉だけは……助けたのじゃ!」
近づいて良く見ると手が少し上を向いていて肉が無傷だ。
とりあえず、シュナの手を取って起き上がらせようとする。
あ、肉を持っていて手がつかめない。
手首を掴めばいいかな……
掴んで体を持ち上げ、立たせる。
意外と軽くて力を使わなかった。
「ありがとうなのじゃ。」
「どういたしまして。」
シュナが二本の串をこちらに向けて渡そうとしてくる。
シュナが……シュナが……食べ物を渡した!?
「お主、わらわを何か誤解しているのではないのじゃろうか?」
「……いやいや、そんなことは……」
とりあえず、片方だけ受け取っておく。
そのまま、口に少しずつ放りこんでいく。
うん、これはうまいな。
「で、今はどこへむかっているのじゃ?」
「商店街にいないって事は……大きな広場にいるという事かな。」
人通りの多い道をあと少しまっすぐ行けば、大きな広場に出るはずだ。
ちなみに、周りの視線を避けるために旅人の服をきて顔を隠している。
だって、顔を出したらみんなから注目されるからな……
「おぉ!人が多いのう!」
「まぁ、大広場っていうぐらいだから町の中心だしね。真ん中の噴水がきれいだな。」
女神の様な像が壺を持っている。
その壺から水が大量にあふれ出してこぼれおちている。
「端っこのお店もいっぱいあるのう。」
「そりゃぁ中心だから、人が集まるし露店もいっぱい開かれると思うよ。」
たぶん、クルレスさんたちがここに着いているならこういう場所でお店を既に開いているだろう。
商店街か町の中心の露店で店を開く所しか見た事がないからな……
大広場の端を回るようにして歩いていく。
気になる店などがあったが、今は出来る限り早くクルレスさんに会い、崩壊草を取りに行かないといけない。
早めに治さないといけないし……とりあえず、クルレスさんには恨みもあるから……叩く。
「あの店じゃないのじゃろうか。」
「あれは……派手すぎるから違うし、どっちかといえばその横の地味めながら嫌な雰囲気を出す大きなテントの方がそっくりというか全く一緒というか……てあれじゃないかな?」
見覚えのあるテント。
前にいた町で使っていた物と全く一緒だ。
「とりあえず、見てみるか。」
「そうじゃな。」
テントに近づいて、眺めてみる。
この入るところについている傷……僕が昔つけてしまったものと全く一緒だ。
って事は……クルレスさんのテントだ。
「どうやって入るべきか……」
「なんでじゃ?普通に入ればいいのではないのじゃろうか。」
「ちょっと……ね。」
「あれ?お客さんですか?」
後ろの方からこちらに向かって声が飛んでくる。
これは 僕に向かって話しかけているのだろうか。
とりあえず、確認のために後ろを向く。
「クルレスさん?」
「おぉ!イツキか!大丈夫だったか?」
クルレスさんが、片手に食べ物を持った状態でこちらに向かってきている。
やっぱりここにいたのか……
「久しぶりですね!」
「おぉ!久しぶりだな!」
クルレスさんとの感動の抱き合いをするためにかけ込み……首に向かって手を突き出す!
「ゲホッ!首がぁ!」
「シュナに何を教えてるんですか!?変な事を始め出して大変だったんですよ!」
クルレスさんの手からこぼれた串肉をシュナが上手にキャッチする。
心配だったけど、シュナだから大丈夫なようだ。
今は……クルレスさんを絞める!
「ギブ!ギブ!放してくれ!悪かった!悪かったから!」
とりあえず、手を放してクルレスさんを解放する。
まぁ、これぐらいでいいだろう。
「ゲホッ!いきなり酷いな……シュナちゃんは進展あったかい?」
「少しだけ進展したのじゃ!」
「それなら俺が教えたかいがあったってもんだ!」
「……これ以上、変な事を教えないで下さいよ……」
「分かった!分かったから、その獲物を見るような目をやめてくれ!」
まぁ、気が晴れたので良しとしよう。
「で?ここまでどうしたんだ?」
「まぁいろいろあってね……」
ここに来るまでにあった事を簡単に説明していく。
ダンジョンに落っこちた事、賭博場でいろいろやらかした事、そしてシュナがさらわれたこともだ。
「お前もいろいろあったんだなぁ……まぁ俺らもいろいろあったがな。」
「別のルートからいったんじゃないんですか?」
「まぁそうなんだがな、そっちも盗賊がいてもうめんどくさかったから跳ね飛ばしてきたけど。」
「む、むごい……」
「風魔法で強化したとはいえ、血が飛び散ったから拭くのが大変だったな……」




