第二十七話 聖水
「その二つってなに?」
「この、聖水ってやつと炎結晶ってやつ。めったに使わないし、値段も高いから持っていなかったようだ。力になれなくてすまない。」
「いや、これでも十分です。えっと、お代は……」
「あぁ、それは別にいいぞ。どうせ、これから使う予定も無かった物たちだからな。」
「ありがとうございます!」
偶然ながら、今日お父さんが家にいて良かった……
半分ぐらいの確率で出かけているからね……
お礼を言って、部屋から出て行こうとする。
あ、一個言い忘れていた。
「お父さん。母さんがご飯できているから早めに下りてきてだって。」
「分かった。早めに行くと伝えておいてくれ。」
そう言って、お父さんは最期の仕事を終わらせるかのように高速で机の上の書類を整理し始める。
こうなったらこのままここにいても邪魔になるだけ。
そそくさと退散して、二人で私の部屋に入る。
「えっと、足りない材料はどうしようか……」
「こまったわね……とりあえず、今ある材料で作れるところまで作るのはどう?」
「それが一番だね。必要な道具も借りたから今すぐできるし。」
本に合わせて丁寧に一つ一つの作業をこなしていく。
時には魔法で粉々に砕き、時には丁寧に混ぜ合わせ、時には液体に丁寧に溶かす。
火魔法の魔法道具を使って一定の温度になるように調節し、加熱をし、氷魔法の魔法道具を使って凍らせる。
最後に丁寧に瓶の中に注ぎ、今できる事はすべてやった。
あとは……残った材料を適量入れるだけだわね。
「う~ん、片方の材料、炎結晶は何とか手に入れる事ができると思う。」
「本当!それならまた一歩近づく!」
マサトがとてつもなく大きな助け舟を出してくる。
あとは……そこに乗り込むための橋……聖水が必要だわね。




