第二十一話 名前
おまけでもう一話
「うわぁぁぁぁぁぁん!」
「えっと……どうすれば……」
イツキとかをなぐめたりした事はあるけど、小さい子に対するスキルは何も持っていない。
できるのは、ただうろうろするだけ……
とりあえず、近づき頭を撫でる。
「大丈夫、大丈夫。ここは安全だよ。」
昔に少しだけ聞いたことがある、小さい子には簡単な言葉を連続で話しかければ心が休まるという事を実行してみる。
効果があるかは分からないけど……やるしかないわ。
「えぐっ、えぐっ……」
「よしよし……」
少しずつ泣きも収まってきたので、涙を拭くためのハンカチを渡す。
おとなしく男の子は受け取り、目の端から垂れ流していた涙を拭き始める。
「ふぅ……ごめんなさい……」
「別にいいわよ、怒っていないから。」
しょんぼりとする男の子の頭を撫でつづける。
「とりあえず、名前はなんていうの?」
「……名前……なんですか?それは。」
「え……」
頭の中で嫌な予感が渦巻く。
まさか……この子は生まれた時からずっと……奴隷……
ただ、戦う事だけを教え込まれたとか……
「えっと、これまでなんて呼ばれてきたか分かる?」
「ガキとか……クソガキとか呼ばれていました……」
「ひ、ひどい……」
たぶん……名前さえも付けられていないという事だろう。
「名前はね、自分しか持たない大切なものなの。お姉ちゃんが付けてあげようか?」
「お姉ちゃん……が?」
「うん。君の名前は……」
この子に合う名前は何があるかな……
男の子だから、男の子らしい名前の方がいいだろうし……
この子の特徴は、すこしばかりきりっとした笑顔……
痛い目にあいながらまだ、純粋そうな所。
なら……




