第二十話 期限
母さんが料理をしている間、とりあえずあの男の子の様子を確認しにいく。
扉を開け、いつもの寝室にいくとベットの上で安らかな顔をしている子供を見つける。
ぼろぼろだった服も着替えさせられて綺麗なパジャマになっている。
何か夢心地の様な顔に自分の心まで休まっていく気がする。
近くにあったイスをベットの前まで持ってきて、ゆったりとした寝顔を眺めつづける。
やっぱり、男の子でも小さい頃はかわいいわね……
「む、むにゃぁ……」
「よしよし。」
髪の毛に手を突っ込んで軽く梳いてみる。
さっきまではぼさぼさだった髪の毛も、すでに手入れされてサラサラとしている。
あの時にいた使用人の人は、たしか美容とかが得意だった気がする……
あまりにも使用人が多すぎて、誰が何が得意でまでしか覚えていない。
名前なんて全く覚えて居ない人が多い。
使用人が多いから必然的に食費も多い。
まぁ、お父さんがものすごい稼いでいるし、使用人の人達も外での働き口がないので、家の中に作業場があり、そこでお父さんの仕事を手伝っている。
お父さんの仕事は新しい魔法道具の開発などだ。
既在の魔法道具を量産して売る事もあるが、開発の方が活発だ。
イツキともけっこうかかわりがあり、開発を手伝ってもらったこともあったのを覚えている。
もちろんそういう専門的な書物もいっぱいあるので、イツキも楽しそうだったわね……
イツキが冒険者になってから、お父さんもだいぶ悲しそうにしていた。
あのイツキのアイデアは、魔法が使えないならではの観点からでとても興味深いとお父さんは言っていた。
「む……ここは……?」
「あら、起きたのね。」
少しずつ目を開けていく男の子の顔を覗き込む。
「え……うわぁぁぁぁ!?」
突然ベットから跳び起き、勢い余ってベットから跳び出そうになる男の子をとっさに腕で抑える。
あぶないあぶない……
「偉大なる風を……」
「やめなさい!」
男の子の頭に軽いチョップを放つ。
それと同時に魔法陣がパリンと音を立てて砕け散る。
獣人は、魔法を構築している間、ずっと集中しないといけないから攻撃などを食らうと簡単に魔法が壊れてしまう。
「う……」
「ここにいる間は安心よ。誰も来ないし、奴隷紋の作動の期限は明日なんだから。」
言い聞かせるように、男の子に語りかける。
男の子はぽかんとした後……突然泣きだした。




