第十四話 奴隷
とりあえず、男をゆっくりと観察する。
黒い服を全身にまとい、顔も完全に隠されていて誰だかわからない。
「嫌な空気が感じられたから、あらかじめ警戒していたし、攻撃までのためらいみたいな物があったから、何とか対策が間に合ったようだからね。もし、出会いがしらに突然打たれていたら間に合わなかっただろうし。」
「う~ん……ためらいって場所が不思議だわね……普通に依頼されただけなら、魔法を速攻で起動させるだけで終わるはずだわよね……でも、ためらいがあったという事は……」
「とりあえず、あの黒い服をはぎ取れば分かるんじゃない?」
「それもそうわね。よいしょっと!」
男をひっくり返し、まとっている服をはぎ取ろうとする。
お腹の当たりに素肌が見えないという事は、マントの下は裸ではないという事だろう。
なら、遠慮なくっと!
「え――っ!」
「まさかと思ったけど……」
はぎ取ったマントの下の顔には……獣耳がぴょこりと飛び出していた。
しかも……奴隷紋が、腕の部分に刻みつけられている。
これは……奴隷という事……
「と、とりあえず。起こしてあげないと……」
「とりあえず、どうやって気絶させたのか教えて!私はできないわよ!」
「人の魔力の溜まりどころに物理的に刺激を与えて、魔力の波を起こして体全体に衝撃を与えて一時的に気絶させただけだから、治すには……魔力の波を沈めればいいだけだし……とりあえず揺らしつづけよう!」
体を無理やり揺さぶり続ける。
がくがくという音と共に、男の人が目を開ける。
黒い服を着ていたから大きく見えていただけだったのか、私達よりも幼い男の子という感じだ。
「う――ここはどこ……?お母さんは……?」
「大丈夫?起きた?」




