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最弱異端児は夢を見る  作者: 時雨
第二章 駆け出し旅人は……
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第五十話 月夜

両腕を冒険者達に掴まれて、宿の裏口から外に連れ出される。

シュナは、呆然として動けていない。

シュナの唖然とした顔を見ながら、外に出て開放される。



「えっと……何のご用でしょうか。」

「頼みごとがあります!」



さっきまでの険悪な雰囲気がうそみたいに消え去る。

その代わりに出現したのは全員一斉の土下座。



「え!?ちょっと!?」

「どうやったらあの娘さんをデレさせる事ができるんですか!?教えてください!」



全力の土下座での全力の懇願。

どうすればいいんだろう……



「そう言われても……ただ、助け出しただけです……」

「聞いたか!助けるだけでいいって!」

「おう!これからは俺らが警護をするぞ!」

「娘さんに気付かれないように追跡して、警護するのは俺に任せろ!」

「いや……それはストーカーじゃ……」



急にお祭り騒ぎみたいになった路地裏。

えっと……本当にどうすれば……



「……シュナが待っているので戻っていいですか?」

「おう!本当にありがとうな!」

「これで!娘さんを!」

「リア充爆発しろ!」



感謝が半分、ねたみや恨みが半分の視線を受けながら宿屋に入る。

とりあえず……疲れたから昼寝でもしようかな……


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


シュナと共に昼寝をした後いつものようにいろいろあった。

最初にあったのは宿屋の主からの御礼。

土下座からの土下座。

涙を流しながらの大感謝祭。



大事な娘を助けてくれたお礼として、全財産あげるとまで言われたぐらいだ。

さすがにそんなお礼を受け取るわけにはいかないので断り続けたが、むこうも譲らず、結果的にはこの宿に泊まっている間は宿泊費を永久にタダにするという事で収まった。

まぁ、泊まっている間だけタダというわけだしクルレスさんが来るまでの間の宿泊費用がなくなるのは少し助かる。

シュナの食費の方が心配だったからな……



そのあとは宿で昼ごはんを食べた。

腕前は良く……いやとてもよく、おばあちゃんと並ぶくらいかなと思った。

シュナ曰く、ここの料理がおいしそうな雰囲気があったからここを選んだそうだ。

という事は……最初に選ぼうとしていたあの高そうな宿は料理がそこまで美味しくないのかな……

ちなみに、クリームシチューは絶品だった。

シュナはトラウマがよみがえるとか言って食べなかったが。



食事を堪能して、町を歩き始めるとすぐさま人に囲まれた。

町中を跳び回っていたからか、一躍有名人になってしまったようだ。



跳べ跳べコールが響き渡り、とりあえず屋根を使って逃げたら歓声が巻き起こった。

これから町を歩くのは大変そうだ……

そのまま、ある程度離れた屋根の上で、服の上から旅人の服をかぶって顔を覆う。

そして、個人的に行きたかった町の本屋へむかった。



あれもこれも興味深い本がいっぱいあったため、少々買いすぎてしまった。

本は魔法で生成されるものと手書きのものの二種があるが、どちらも値段が高い。

魔法を使った機械で基本は作られるが、それでも一冊つくるのに相当費用がかかるからか、ほとんどのお店が受注してから町へ連絡して取り寄せる。

届くまで時間がかかるという事と、だいたい値段が一冊2万カルから3万カルぐらいで、そこまでいっぱいは買えない。

そのため、持っている本はクルレスさんからお願いしてもらったものか、特定の作者さんの物だけだ。



だが……この店には最初から在庫が……あった!

しかも……大量に……



そのまま本屋で夕方まで時間をつぶして夜ごはんを食べた。

もちろんシュナは大量に食べた。

もちろん僕はいつも通りの量を食べた。



そして僕らは今、宿屋の屋根の上にいる。

ちょうど雲もなく、キレイな夜空だったので外で寝ようというわけだ。

ちょうど僕たちが泊っている部屋が屋上の真下だったため、窓から屋根によじ登ったというわけだ。

仰向けになると視界に入る小さな粒と大きな円。

満月はやっぱりきれいだな……



「きれいじゃのう……」

「そうだな……」



感傷に浸りながらゆったりと呟く。

眠気は不思議ときていない。



「朝は本当にごめんな。」

「いいのじゃ。まだまだ足りなかったというだけじゃ。」



シュナのゆったりとした声が響く。



「そうじゃ。誓いを交わすのはどうじゃ?」

「誓い?」

「血の誓いじゃ。」

「危なそうだな……」

「大丈夫じゃ、簡単な事じゃ。刃物を貸してほしいのじゃ。」



言われるがまま、魔法袋から透過の剣を取り出して渡す。



「あとは指を少しだけ切って血を出して、できた傷口を合わせるだけじゃ。」

「なんだ、びっくりした……」



なんか、闇魔法とか使うのかと思った。

まぁ、何もしなくてもシュナは信頼しているがそういうのも面白そうだ。



透過の剣で指先を軽く傷つける。

痛みと同時に血があふれ出てくる。

ちょっと傷つけすぎたかな……



そのまま、シュナと無言で指を合わせる。

体にシュナの血が流れ込んでくる感覚がする。

ほのかに……暖かい。

体がぽかぽかとしてくる。

不思議と力がみなぎるような気がして、シュナの事が深く感じられるようになる。



月に照らされてできた影は日が出るまでいつまでも繋がっていた。


最終話です!

次回は、第0話と番外編を繋ぎに更新します。

すべてはOVA文庫の結果に……

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