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最弱異端児は夢を見る  作者: 時雨
第二章 駆け出し旅人は……
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第四十九話 跳翔

とりあえず、気絶させた(漢女)を一か所に集めて縛りあげた。



「この後どうする?」

「何か……忘れている事がある気がするのじゃ……」



シュナが頭を抱えて、何かを考え始める。

まだ、何かあるのか……と思った時。



「ムゥー!ムー!」

「……え!?」



どこからかくぐもった叫び声が聞こえてくる。

えっと……何だ?

壁の向こうから聞こえてきたんだけど……



「思い出したのじゃ!もう一人さらわれた人がいたのじゃ!」

「なんでそれを忘れた!?」



一大事だ。

早急に救助しなければならない。

とりあえず、声が聞こえてきた方向にある壁に近づいて全力で殴りつける。

力任せに殴ったからか、それとも壁が脆かったのか、人がちょうど通れるぐらいの穴がぽっかりと開く。

扉を開けて通ってもよかったが、鍵が掛かっていたら面倒だから壁をぶち破った。



「ムームー!」



そこに手足を縛られた状態で誰かが横たわっている。

丁寧にさるぐつわまでされていた。



「……誰?」

「確か……宿屋の娘さんじゃった。」

「ムームームー!」



首をコクコクと動かして認めているように見える。

あぁ……あの、何かを想像して頬を赤らめていたあの娘の顔に似ている……というか全くいっしょだ。



とりあえず、刀を使って慎重に縄を切断して開放する。



「ふへぇぇぇ……助かりました……」

「よかった……被害者は少ないようで。」



とりあえず、これからの行動について話し合う。



「う~ん……一旦、外に出て警備隊を呼んだ方がよくない?」

「それもそうじゃが、宿屋も大変な事になってそうじゃのう……」

「確かに……看板娘がさらわれたとなれば大騒ぎにもなるだろうな。」

「ふぇぇぇ、何が起きているんですかぁ?」

「まぁ、とりあえずここから出た方がよくないか?」

「そうじゃな。」



腰を上げて、倉庫の扉から出ようとする。

宿屋の娘もぎこちなく立ちあがり、歩き始める。

縛られていたからか体の節々が痛むのだろうか。



鉄の大きな扉を腕の力で押しあける。

その瞬間、目の前に広がる異常な光景。



「警備隊だ。中を見せてもらおうか。」

「えっと……どうぞ。」



何人もの人が出口を囲むように立っている。

全員、きている服が一緒……制服だろうか。

警備隊という事はだれかがよんだのだろう。



「これは……どういう状況だ?」



少しだけ装備のいい人が中に入り、男たちが縛られている状況が目に入る。

それを見てものすごい混乱しているようだ。



「えっとこれは……」



簡単にこれまでのいきさつを説明する。

盗賊がどうたらこうたらという事だ。



「確かに、こいつらは指名手配されている盗賊だな……協力に感謝する。」



警備隊の人々が縛りあげた人をむりやり引きずって帰っていく。

痛そうだけど、まぁこれまでの行動からの自業自得ってことかなw



「とりあえず……宿屋に戻るか。」

「そうじゃな。」

「そうですね……冒険者の皆さんが荒れてそうですしね……」



扉からもう一度外にでる。

だが今度は……



「ほ!本物だ!」

「町中を飛びまわった人ですって!」

「お兄ちゃんかっこいいー!」



野次馬によって壁ができていた。



「跳ーべ!跳ーべ!」

「「「跳ーべ!跳ーべ!」」」

「この状況……面倒くさいな……」

「そうじゃな……どうするのじゃ?」

「とりあえずっと。」



シュナと宿屋の娘を肩に担ぎあげる。



「ひきゃぁ!何をするんですかぁ!?」

「ちょっと、我慢してくださぃ!シュナ!上に風魔法!」

「了解じゃ!」



足元に緑の魔法陣が展開され、直後、上向きの強い風が吹き始める。

それに乗るように、全力でジャンプして倉庫の屋根に着地する。



「跳んだぞ!」

「すっげぇ!かっけぇ!」



歓声を無視して、宿屋の方向へ走り始める。



「シュナ!タイミング良く風魔法使えるか?」

「もちろんじゃ!」



さすがに、一人でも飛び越えるのがきついのに二人をかついでいくのは、援護がないと無理だ。



「せーの!」



屋根の端に出現した魔法陣から出た風に乗って思いっきり跳ぶ。

そのまま、風を切って空を飛び屋根に旨く着地する。



「風を切るのも楽しいのう!」

「私も楽しいです!」



肩に担いでいる二人が歓声を上げる。

控え目ながら主張しているものが右肩に、凶器の様に跳ね続けるものが左肩に柔らかな感触を与えている。

これが……驚異(胸囲)の格差社会!

膨れ上がる煩悩を無視して、精神を走るのに集中させる。



下で歓声が響き渡る中、それを宿屋に着くまで繰り返した。

着いたころには、足腰がぼろぼろになってしまった。



「楽しかったですぅ。」

「わらわも良かったのじゃ!」



担いでいた二人を降ろして、宿の扉を押しあけて……そのまま、閉じる。

何だ……あれは……



「どうしたんですか?まさか……中が荒らされているんですか……?」

「いや……そういうわけじゃ……」



娘さんも扉をゆっくりと押しあけ……そのまま、閉じる。



「はい……大変そうですね……」



中で見えたのは……何人もの冒険者が、杖や、護身用の剣などを磨いて出撃態勢を整えている様子。

これは……面倒だ……



「まぁ……入るしかないよね……」

「そうじゃな。」

「そうですね……」



扉を押しあけて三人で入る。

中にいた全ての冒険者はこちらを一瞬だけチラリとみて、再び手元に目線を戻し……目を見開いた状態でこちらを凝視してくる。

その直後、武器をこちらに向けて……



「盗賊だ!やれぇ!」

「おぉ!」

「なぜだ!?」

「みなさん待って下さい!誤解です!」



必死の宿屋の娘さんの声で、攻撃の手は止まる。

だが、武器を持った手はこちらに向いたままだ。



「えっと……この人が……」



娘さんがここまでのいきさつを簡単に説明していく。

だが、最後の担ぎあげて連れて帰ったところまで説明する必要はあったのだろうか。

しかも、頬を赤くするのは逆効果だと思う。



「む……助けたのは分かったけど……死ねばいいのに。」

「担ぎあげるとは……うらやま死ねばいいのに。」



こちらに向く武器は無くなった。こちらに向く殺気の籠った視線は増幅した。



「とりあえず、本当にありがとうございました。」

「いやいや、どういたしまして。」



無事、一件落着……



「お前、後で表に出ろ。」

「俺らから大事な話がある。」



しないようだ。

次回、第二章最終話です。

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