第四十八話 漢女
「シュナ!大丈夫か!」
支配の解けた体を動かして、シュナの元へむかう。
服が破られてあられもない姿になってしまっているシュナ。
「だ、大丈夫か?」
「う……う……」
シュナはずくまって、体を震わせている。
本当に大丈夫だろうか……
「う……うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!」
何かが決壊したような音が響いた後、急にシュナが大粒の涙を流しながら泣きだす。
えっと……こんな時はどうすればいいんだ……
「ごわがったのじゃぁぁぁ!」
女の子が泣いているシーンはほとんど遭遇したことがないから、どう対応すればいいのか分からずに混乱する。
えっと……どうやって慰めれば……
と、とりあえず敗れた代わりの服を着せてあげないと……
自分の服を脱いで着せようとしたが、そこで大事な事に気が付く。
今……僕は謎の黒衣と下着しか着ていない……
謎の黒衣をシュナに着せると……自分は下着しかなくなる!
「シュナ!ちょっと待ってて!」
蹴り飛ばした男が確か魔法袋を持っていたはずだ。
ふと、壁に開いた穴の方を見ると、ぽつんと僕の魔法袋と刀が落ちている。
衝撃で吹き飛ばされているときに落としたのであろう。
それを急いで回収して、シュナの元へ戻る。
そこから、服屋で買った服を一つ取り出して渡す。
「あっぢを……向いていてぼしいのじゃ……」
シュナに言われるがまま、後ろを向く。
衣擦れの音が響き始める。
「もう、いいのじゃ……」
「分かった。」
後ろを振り向くと、服屋で買った魔王のような服を着たシュナが佇んでいる。
とりあえず……今するべき事は……
「本当にすまなかった!」
「な、なんなのじゃ!?」
とりあえず、土下座。
疑ってしまった事を謝らないといけない。
「いろいろな理由が原因でシュナが泥棒かと思って、追ってきたらシュナが捕まっていて……とりあえず、疑ってごめん!」
「いいのじゃ……まだ信用が完全には出来てないようじゃしな。」
魔法袋に手を出さずに耐え続けた事は本当にすごかったと思う。
まぁ、出しても何かされて奴隷にされたのは変わらないと思うが。
「じゃが……わらわがお主の事を信用しているという事だけは忘れないでほしいのじゃ。」
シュナの言葉に心が打たれる。
普通だったら、聞き流していたかもしれないが、今言われると心が痛む。
「まだまだわらわ達には時間があるのじゃし、これから信用を積み重ねていくのがいいじゃろう。」
「本当に……ごめん……」
ただただ頭を下げるしかない。
本当に……すまない。
「もう……謝らなくて良いのじゃ。まずは、やらなくてはならない事があるじゃろう。」
シュナの凛とした声が耳に入り、頭をゆっくりとあげる。
する事……って謝罪?
「あの男たちの処理じゃ。」
そういえば忘れていた。
僕の体が勝手に吹き飛ばした後、放置している。
まだ……のびているようだ。
「えっと……シュナは乱暴されそうになったんだよね……どうされそうになったのかは分からないけど。」
「まぁ、そうじゃ。」
「こんな時には……警備隊を呼んだ方がいいよね。」
「それもそうじゃが……何か忘れているような気がするのじゃが……」
シュナが頭を抱えて何かを考え始める。
何を思い出そうとしているのだろうか……
「あ!あれじゃ!父さんから教えてもらった事があったのじゃ!」
「なんなんだ?それは。」
「確か、男の人に服を破られたりして何かされそうになった時にやるべきことじゃったのじゃが……」
「……シュナのお父さんからお前は何を教えてもらったんだ?」
「それは……護身術などぐらいじゃが。」
「……まぁ魔王の娘だからそれぐらい当たり前なのか……」
魔王の娘という事にも信憑性が増してきたと思う。
まぁ、これまでも信じていたが少しだけ疑っている部分もあった気がする。
「で?どうするんだ?」
「まず、男たちの腕と体を縛りあげて並べるのじゃ。」
言われた通りに男を近くまで力任せに運び、一か所に集める。
だが、そこで大事な事に気が付く。
「……縛るものがない……」
「それならここにあるのじゃ。この男たちがいっぱい持っておったのじゃ。」
シュナが大量の縄を持って来る。
それを旨く使って男たちの腕などを縛って動けなくする。
「これでいいのか?」
「もちろんじゃ、この後は……」
「む……いてて……」
「何が……起きてたんだ」
シュナがこの後の作業を教えようとした瞬間、男たちが起き始める。
ほとんどの人が目を開けた瞬間、ここはどこだ?と言いたそうな顔をした後、状況を把握し叫び始める。
「てめぇら!何してくれとんだ!」
「俺らに手を出して無事で済むと思うなよ!」
男たちの威勢のいい声が耳障りだ。
気が付いたら全ての男が目を覚まして喚いている。
「シュナ?どうすればいいんだ?」
「えっと……この後はおもいっきり股間をけり上げてしまえばいいと言っていたのじゃ。女をいじめるやつには良い末路だとか言っておったのう。」
その言葉に男たちが一気に黙り込む。
マジで!?という表情があらわになり、目に涙がたまっていく。
「……えげつないね。でも……酷い事をしようとしていたのは確かだし、相応の罰って事かな?」
「まぁそうじゃろうな。どうする?お主がやるのじゃろうか。」
「う~ん……シュナがやりたいなら止めないけど。僕がやった方がこういうのはよくない?」
「そうじゃな。じゃぁ頼んだぞい。」
自分は男だから股間をけられた時の痛みはよくわかる。
でも……こいつらにはちょうど良いだろう。
「じゃぁ……ちょっと痛いかもしれないけど我慢してね。」
冷酷にいい、一人の男に近づいて……股間を思いっきりけり上げる。
「うがっ!」
男は一回転しながら飛んでいき、そのまま泡を吹いて気絶する。
これは……玉が潰れたかもしれないな。
まぁ、いっか。
「ちょ……やめてくれ……」
急に男たちが冷や汗を流しながらよわよわしげになる。
だが……止める気はない。
「うぎゃぁ!」
「うがぁぁぁ!」
何人もの漢女の阿鼻叫喚の声と産声が倉庫に響き渡った。
次回、未定。
活動報告にて、連絡があります。
一応目を通して下さるとありがたいです。
みなさん、ブックマーク、評価、感想など宜しくお願いします。
下の文字クリックも宜しくです!




