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縁側じいちゃん

作者: SEI

今思い返せば不思議な体験です。


あれは僕が小学校の3年生のとき。


母が離婚して母の実家の広島県のとある田舎に引っ越しました。


あたりは山と田んぼばかりの何も無いところで、そこそこ都会に住んでいた僕は


なかなか馴染めませんでした。


友達もいなかった僕は、帰り道にある家のおじいさんと時々話すようになりました。


「おはよう。気をつけていくんぞ。」「うん。」


「おう、おかえり。みかん食っていかんか。」「うん。」


そんな会話がほとんどでしたがなぜか居心地がよく、おじいさんはいつも縁側にいたので


『縁側じいちゃん』と呼んでいました。


話していると、縁側じいちゃんは1人暮らしでおばあちゃんは亡くなり、息子さんは昔東京へ


行ったまま帰ってこないとの事でした。


毎日縁側じいちゃんと話すのが僕の日課になっていきました。


ある日、学校の帰り道、いつものように縁側じいちゃんの家の前を通りましたが、縁側じいちゃんは


いませんでした。


何日かそんなことが続き心配してはいましたが、家の中まで声をかけることはしませんでした。


夏休みに入る少し前位だったと思います。


また縁側にじいちゃんが座っていました。


「じいちゃん、どおしてたの?」


僕が聞くと、


「少し遠くへいっとった。ばあさんにも会えたわ。後は息子だけなんじゃけどのー...」


「おばあちゃんってもういないんじゃないの?」


また僕が聞くと、


「まぁ、今は傍におる。わしの心配ばかりしよるわ...。」


意味がよくわからなかったけれど、縁側じいちゃんがまた縁側にいてくれて安心していました。


そんなある日、縁側じいちゃんの様子がおかしかったので、


「じいちゃんどおしたの?具合悪いの?」


と聞くと、縁側じいちゃんは、玄関の牛乳入れを指差しました。


縁側じいちゃんは何も話しません。


次の日もじいちゃんは縁側にいましたが、やっぱり何も話しません。


次の日、縁側じいちゃんの家の前に、知らないおじさんとお巡りさんがいました。


僕が近くにいくと、


「君、ここのおじいさんと知り合いだよね?」


「うん。」


「いつ会った?」


「昨日。」


「本当に?」


「うん。でも喋らないから具合が悪いのかも...。」


なんでそんな事を聞かれるのかわかりませんでしたが、ふと思い出しました。


「なんか、牛乳入れを指さしてたよ。」


お巡りさんが牛乳入れを開けると、家の鍵が入っていました。


大人たちはなぜか慌てて鍵を開け、家の中に入って行きました。


そして、変わり果てた縁側じいちゃんが発見されたのです。


縁側じいちゃんはもう亡くなってかなりの時間が経っていて、暑さのせいもあって


虫も沢山わいていたそうです。


おばあちゃんの写真を抱いていたそうです。


でも僕は信じられませんでした。


だって毎日会っていたのですから。


そしてその後も、


縁側じいちゃんは、そこにいました。


何も話さないけれど、僕が引っ越すまで毎日会っていました。


おばあちゃんも一緒に。



読んでくださってありがとうございます。

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