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旅先で死ぬとは何事だ! 2

 「この一口のために生きている!!」

 「なんだそれ」

 「それくらいうまいってことだよ」

 「でも、お弁当一つだと足りないよね」

 三人で弁当を分け合うとすぐに空になってしまった。

 元々この弁当は葵が俺のために作ってくれたものなんだ、それで文句を言うとは勇樹は図々しいにも程があるぞ。

 「まぁ焦るな……、ほら!」

 蒼司は小さなバスケットを取りだした。

 開けると中にはサンドウィッチが入っていた。

 これも葵が作ったもので、『足りなかったら食べて』と持たされたのだ。

 多分、葵はこうなることを予想していたのだろう。何故なら、サンドウィッチは九つ入っている、一人三つずつに分けることができる。

 本当になんて良く出来た妹なんだろう、自分と血がつながっていることが不思議なくらいだ。



 「ほんと、葵ちゃんは気が聞くよなぁ……」

 「将来は良いお嫁さんになるだろうね」

 「テルには絶対にやらんぞ!!」

 「何故に名指し!?」

 まぁ、輝亮に限らず、半端な男には葵をやるつもりは無い。

 最近は葵に下心があって近付いてくる奴が増えた気がするから気をつけないとな……。

 そんな俺の心配を他所(よそ)にこんな言葉が聞こえてきた。

 「前に葵ちゃんの部屋を覗こうとしてたからじゃないかな?」

 「お前も覗こうとしてただろ!!」

 「な、何のことかなぁ……」

 「お前ら、それはどういうことだ?」

 俺が威圧感たっぷりに言うと、輝亮が瞬時に土下座の姿勢をとった。

 「ごめん蒼司!悪気は無かったんだ!!」

 「僕もそうだよ!だからこれは聞かなかったことに……」

 「できるかぁっ!それに悪気は無くても下心は大いにあるだろうが!!二人とも鉄拳制裁フィジカル粛清タイムだっ!!」

 


 そして数分後。

 「ずみまぜんでした……」

 「もう二度としまぜぇん……」

 ボロボロになった輝亮と勇樹が土下座で謝っている。

 「今回は葵に直接手は出してないから多目に見てやる……、でもな、次は殺すからな………冗談だけど」

 「冗談に聞こえないよ……」

 「………」

 輝亮は知っている、それが冗談で済まないかもしれないことを。

 蒼司は葵のことになると、良くも悪くも恐ろしいほどの力を発揮する。恐らく、輝亮の知っている中で蒼司は最強のシスコンだ。

 そして蒼司は知らない、葵がブラコンであることを。

 まぁ、これについて輝亮は言わない方が二人のためだろうと黙っている。

 何故なら、蒼司のシスコンが尊敬できるものなのに対して、葵のブラコンは病院に行けレベルと次元が違うからである。



 ◆◆◆



 一方、津叢家では……。

 「葵、行ってきます」

 「あ、おじさん!今日も遅くなるの?」

 「そうだね……、蒼司は旅行に行っていないし、一人で大丈夫かい?」

 「大丈夫だよ、いってらっしゃーい」

 出社する叔父を葵が見送っていた。いつもの日常だ。

 葵は食器を片付け、リビングの掃除を始める。

 今日は特に予定が無いので、家を隅々まで掃除するつもりだ。

 


 一階の部屋の掃除を終えると、二階の部屋の掃除に取りかかった。

 自室と今は使われていない両親の部屋は掃除をする必要が無く、叔父の部屋はカギがかかっているので入れない。

 つまり、向かう先は一つ、兄の部屋だ。

 「おじゃましまーす……って、お兄ちゃんは旅行に行ってていないんだよね」

 久しぶりに入った兄の部屋は思ったより整頓(せいとん)されていた。

 「さすがお兄ちゃん、思ったより綺麗にしてるじゃないですか」

 とりあえず、コードレスクリーナーで床のホコリやクズを吸い取る。

 このコードレスクリーナーに使用されているサイクロン技術は発売から40年以上経つ年代物なのだが、吸引力が変わらないという絶対的信頼性があるため、今でもトップのシェアを誇っている。

 重量は女子中学生が片手で楽々に扱えるほどである。

 


 「さてと……、本題に入るか」

 葵はベッドのシーツを勢い良く引き剥がし、その下のマットレスも取った。

 「うーん、ここには無いかぁ……」

 葵はベッドの下を覗く。雑誌を一つ見つけたが、ただの少年漫画だったの問題は無い。

 「ベッドに隠されてないとすると……、次はクローゼットか」

 クローゼットを開け、上から下まで隅々を確認する。タンスの裏も確認する。

 だが、クローゼットからは“そういう(たぐい)”のものは出てこなかった。

 


 一時間ほど、蒼司の部屋を物色していると、あることに気付いた。

 「もしかして、あの中なら!」

 「あの中」とは、本棚の中のことである。

 本棚には蒼司が集めたペーパーメディアのコミックやライトノベル、レトロゲームのパッケージが収まっている。

 この中に“そういう類”のものが隠されている可能性が高いと考えたのだ。

 「とりあえず全部出そうか……、あ!」

 適当に一冊だけ出すと、空いた一冊分のスペースの奥にそれが見えた。

 一昔前の健全な男子の部屋にはそれがあってもおかしくは無いだろうが、今の時代では規制が強まり普通では手に入らない。

 恐らく、輝亮からもらったものだろう。

 「お兄ちゃんもそういう年頃なのはわかるけど、こういうのは良くないと思うな、焼却処分だね」

 ―――まったく、こんなモノに手を出すくらいなら、わたしに手を出せばいいのに……。

 兄には本当に好きな人が出来るまでは純粋な精神と肉体のままでいてほしい。

 だから、こういったモノは見つけ次第処分しなければならない。

 「お兄ちゃんには一度キツく言う必要がありそうだね……」

 ついでに諸悪の根源である輝亮も処分しないと……。



 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  

 

あー……、輝亮の身の危険が……

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