戦力分析 新京
新京 前年2位
[先発]
久慈
張良吉
応周剛
際田
カウリ
金城
[リリーフ]
阿野
今井
水岡
朴圭大
鈴木芳
畑
[スタメン]
3矢野元
8武沼
2英
9劉照凱
7七沢
6バジーノ
4呉高波
5ボンズ
満洲国の首都新京を本拠地とする都会派のチーム。昨年二軍監督から一軍に昇格した若き指揮官安部智彦(44)の的確な指導のもとで洗練した野球を見せる。今年の目標は言うまでもなく優勝だ。投手も野手も駒が揃っており、昨年優勝の奉天と並んで優勝候補の筆頭である。
昨年の最多勝投手久慈一正(30)は今季も投手陣の柱としてフル回転することは間違いない。エースの周りにはベテランの張良吉(38)、勢いにあふれた若きエース応周剛(25)、4年目を迎えるメキシカン左腕ナルシソ・カウリ(31)と様々なタイプの先発が揃っている。前任の大貝四郎監督が整備したこれらの投手陣に昨年加わったのが金城僚(23)。完成度の高い投球を見せて新人王を獲得した。また、昨年は怪我で働けなかったからと登録名を本名の義郎から変更した際田恭吾(29)もオープン戦ではなかなかの投球を見せている。ストレートの伸びが戻れば大きな戦力となる。
リリーフは大貝監督時代からチームの屋台骨を支えてきた朴圭大(34)、鈴木芳博(33)、畑陽一(35)は未だに健在なものの、それ以外の層が薄い。阿野恒助(27)のスライダー、今井貴秀(26)のストレートなど立派な武器を持っているが良い時と悪い時の差が大きく信頼性はいまいち。ベテラン頼みからの脱却は安部監督の課題である。水岡純直(20)や宋源良(21)といった期待の若手をリリーフとして起用する案もあるようだがうまくいくか。
野手陣はまさに穴がないという表現がぴったりの布陣。特に内野守備は見ているだけでもその流麗さに息をのむ。助っ人としては打撃力がそれほど高くないハリー・ボンズ(30)、ジョー・バジーノ(33)の2人だが、この二人が組む三遊間はまさしく鉄壁。深いゴロを逆シングルでキャッチし、ジャンピングスローから矢のような送球が放たれて走者を刺すプレーはメジャーリーグ的ダイナミックな魅力がある。
打撃陣は長打力に欠けるのが弱点だが足の速い選手が多く、小技を駆使しながらコツコツと得点を重ねるスタイルが得意。昨年レギュラーに名乗りを上げた武沼駿(20)、呉高波(21)も俊足と好守に定評がある選手であり、その点は徹底している。武沼はアイドルのようにスマートな体の割にはパンチ力も秘めており、長打を磨く道もありそう。昨年首位打者に輝いた英時之(27)も正捕手に定着した頃は打撃力が弱かったが次第に実力を付けて今やリーグ屈指のバッターに成長した。武沼や呉といった若手が英に続けば打撃の問題も解決できるだけに、確実な成長を期待したい。
最多勝の久慈、首位打者の英を擁しながらも優勝を逃したのはここ一番で勝ちきれない勝負弱さが出てしまったのが大きな原因であった。キャプテンに任命された矢野元道哉(26)は「昨年の悔しさを忘れることはない。これを晴らすには優勝しかない」とチームの気持ちを代弁した。その言葉を裏付けるかのように、今季はキャンプを見てもそれまでとは密度が違った。監督以下チームの全員が優勝に向けて燃えており、洗練を超えた気迫を身につけつつある。今の流れをシーズンに入っても維持し続けることが出来れば間違いなく栄冠は新京の頭上に輝くだろう。




