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大日本リーグ-大連戦記-  作者: 沼田政信
プレーオフ
187/188

戦い終えて

 戦いは終わった。林がウィニングボールを掴んだ瞬間、京城まで大挙押し寄せた大連ファンが爆発的な歓声を上げた。マウンド上ではすぐに選手たちによる歓喜の輪が作られ、劉監督を今か今かと待ち構えていた。そして劉監督がゆっくりとマウンドに近づいていく。間もなく、その痩身は10回宙に舞った。笑う選手もいる。泣く選手もいる。そかし一様に、その身体は輝きに満ちていた。


 試合後、劉監督は「ただただ嬉しい。選手たちが今年1年でグングンと力を伸ばしてくれたのでここまで来ることが出来た」と感無量だった。先発の瑞穂に関して「(瑞穂は)ブルペンで一番状態が良かったので。(メンバー表に)名前を書くまでは迷ったが、最後はほとんど直感で決めた」と意図を語った。「今季は辛い事も多かったけど、ファンの皆様の歓声のお陰で最後まで諦めず戦い抜くことが出来た。来季もよろしくお願いします」と締めくくった。


 一方、敗れた道原監督は「大連の勢いに飲まれた感じだ。特に(3連敗した)最後の3試合は浮き足立っていたというか、変なミスが出たりして、うちらしい野球が最後の最後にできなかったのが悔しいね」と語った。その上で「いい勉強をさせてもらいました。また来年ですよ」と未来に目線を向けた。


 試合後、今シリーズにおける表彰選手が発表された。大日本シリーズMVPに輝いたのは林葉輔。第5戦において唯一の得点となったタイムリーヒット、第7戦において大連勝利の流れを作った先制2ランホームランなど、チームの勝利に対して決定的な役割を果たした点が評価された。21年目にして初となる栄冠を手にした林は「えっ、俺が本当にMVPなの? シリーズの打率も良くないし(7試合で27打数7安打の.260)縁がないと思っていた」と戸惑っていたものの、しばらくたつと実感がわいてきたか「この年にしてそういったものを手にすることが出来たのが嬉しいね。まずいな、泣きそうだよ。涙は映さないでね」と感慨にふけっていた。


 優秀選手賞には、大連からシリーズ途中からスタメンに抜擢されてチームを活性化させた水内とリリーフとして好投して第7戦においては先発で勝利を挙げた瑞穂が、京城からは第2戦のホームランや第4戦のタイムリーが評価されたコリスと、延長戦となった第4戦においてロングリリーフをこなして勝利を呼び込んだ孔僚が選出された。




大連V戦士たちのコメント


吉野投手 今季の数字は自分でも驚いている。(大日本シリーズで2試合ぶつかった)高橋さんは自分の上を行く投手。投げながら学ぶことは多かった。自分ももっと成長できるはず。


瑞穂投手 (第7戦の先発を任されて)大事な試合だったので抑えられて良かった。今年は大変な事も多かったけど最後にいい所を見せられたかな。


松浦投手 まだ未成年なのでジュースですよ(松浦は3月生まれ)。(大日本シリーズの好投について)負けても死ぬわけじゃないし普通に投げようと意識して、うまく力を出せたと思う。


張尊投手 (涙を流している事を聞かれ)すみません、弱いんです。劉監督の胴上げを見るために今までやってきたので、実際に見るとつい……(目に光るものがこみ上げる)


池田投手 (途中移籍から先発に定着し)一軍で貢献できたので嬉しい。しかもいきなりこれ(東洋一)ですからね。こんな嬉しいことってありませんよ。


趙雅憲投手 今季はタフなシーズンだったけど終わってみるといい記憶しか残っていない。今夜はいつもより酒がうまい。


黄直哉投手 劉監督と(フォーム改造を指導した)天沼コーチのお陰で自分はここまで来られた。それにしても東洋一っていいもんだなあ。なあ、(平野)錦よ。


平野投手 (黄投手に突然話を振られてしどろもどろになりながら)ええ、まあ、そう。(今季の成績について)素直に嬉しいし、良かったです。


野藤投手 優勝ってええもんやね。今年は正直出来すぎくんやし、来季はどうやろね。まあ今は余韻に浸りたい。


伊東投手 来季からは追われる身になるので今季以上に頑張らないとね。でも今は本当に最高の気分です。もう色々考えるのは明日からでいいや。


小松原投手 今季も怪我してしまいましたが、それ以外では良くやれたと思う。緊張から開放されてジワジワと嬉しさが広がっている最中です。


比山投手 今年は野球人として大いに成長できた1年でした。最後はマウンドに立ちながらもちょっとうるっと来ちゃいました。


清水捕手 東洋一のチームのキャッチャーですよ。東洋一のキャッチャーじゃなくて。いやあ、嬉しい。力のある投手が多かったのでリードは楽でした。


金重男捕手 今年は自分もよく貢献できたし嬉しさが違うね。(古巣京城との決戦について)去年まではあっちだったんだなと、感慨深いものはありましたよ。でも今は大連の金重男ですから。


柳中平内野手 本当に嬉しい。来季はもっと打撃でも貢献したい。


近堂内野手 今季は怪我もあって個人としてはもう一歩だったけどチームの結果が良かったので。


大上内野手 嬉しい。とても嬉しい。僕はついてる人間ですよ。(個人成績について)今季は最後のほうでちょろっと頑張っただけだし、大事なのはこれから。


棚橋内野手 1年間レギュラーで戦うだけでも初めてだったのにいきなり優勝に東洋一で、どう表現したらいいのか分かりません。自分個人もチームも来季以降が勝負だと思っています。フロックではないと証明したい。


立石内野手 多少は優勝にも貢献できたし、それは良かった。来季は膝の調子を戻して守備でも頑張りたいね。


李健太郎外野手 最高でーす。うおー、大連最高じゃー。(その後もハイテンションで叫び続ける)


水内外野手 (優秀選手賞受賞について)ありがとうございます。一番(調子の)いい時期が偶然この時期だった。まあ来季のシーズンも続いたらそれが一番ですけどね。レギュラー、狙いますよ。


星渡外野手 最高のシーズンでした。こうなったら来年もそれ以降も優勝したくなりますよ。


アンジェロ外野手 今年は大連というチームで多くを学んだ。さらに頂点に立てるなんてこんないい事はない。来季はアメリカでこの経験を生かしたいね。


ノーリー外野手 とてもハッピーだ。現役の最後にこんな素晴らしい場面に立ち会えたのは光栄で選手冥利に尽きる。

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