東洋の覇者 そして永遠の彼方へ
[ホーム]京城
4辻
8朴慎一
7高添
5羅久聖
3バンカー
Dコリス
6羅慧聖
2山根
9赤沼
[ビジター]大連
8星渡(3-0)
7水内(4-1)
6棚橋(4-2)
9林(3-1)
Dアンジェロ(4-1)
4近堂(3-0)-ドラグノフ-5
3柳中平(4-1)
2清水(3-0)
5大上(2-0)-宮畑(1-0)-ノーリー-4
大 200 012 000 5 ○瑞穂(6-1)-平野(1/3)-黄直哉(1/3)-野藤(1/3)-小松原(1)-比山(1)
京 000 001 000 1 ●ロビンソン-ディアス-松尾-西坂
今季最終戦。大連の先発は今シリーズにおいてリリーフで活躍を見せた瑞穂。思えば4月1日の開幕戦、今シーズンのスタートとなった試合の先発にも瑞穂が抜擢された。今季の大連は先発瑞穂で幕を開け、先発瑞穂で幕を下ろす事となる。また、瑞穂にとっても古巣となる京城との対戦は特別な感慨があるだろう。三本柱、特に高橋から可愛がられながらもついに京城にいる間は大成できなかったが、大連移籍で生まれ変わった姿を見せるには絶好の機会である。京城は予想通りロビンソンが先発。
初回、二死後から棚橋がサードの横を抜くヒットで出塁すると、4番林がロビンソンの内角をえぐるストレートを振りぬいてライトポール直撃の先制2ランホームランを放つ。ロビンソンは半端なパワーだと打球を前に飛ばすのも難しいと言われるほどボールに力があるが、この2人のように振り切ることが出来れば効果的な一打が出やすくなる。初めてロビンソンと対戦した大日本シリーズ3戦目の反省を生かした攻撃である。
主砲の一撃が決まったことでチームに流れが生まれた。先発の瑞穂は巧みなピッチングで京城の強力打線に決定打を与えなかった。3回一死後、赤沼にライト前ヒットを打たれた時も慌てずに牽制で刺すなど常に冷静さを失わなかった。この牽制は孔僚から教わったものだという。この回、辻をセカンドゴロに打ち取ったシンカーは高橋の薫陶によるものである。偉大な先輩たちから離れることにより、遠慮なく実力を発揮できるようになった。今季は運悪く勝ち星が付いてこなかったが来季以降はそういった面も良くなってくるだろうと確信できる内容であった。
大連の追加点は5回であった。一死後、今日7番ファーストに起用された柳中平が外角へ逃げるスライダーをうまく流して2ベース、高添がクッション処理でもたつく間に一気に三塁まで奪ってみせた。清水は2球目にスクイズを仕掛けるもファールに。しかしカウント2-2からの5球目となるストレートをセンターまで運び、犠牲フライで待望の3点目を手にした。
京城はもったいない失点をしたが、まずい守備とは出てほしくないときにこそ出てしまうものである。高添はいわばダイスのようなもの、安定して使える実力者とは異なる。他方、大連にとっては千載一遇のチャンスをしっかりと得点に結びつけることが出来たのは選手たちの成長ゆえである。
さらに6回、この回より登板のディアスから星渡が四球、水内がレフト前ヒット、棚橋はレフトフライも林が四球で満塁のチャンスを作る。そしてアンジェロがディアスのカットボールをパワーでセンター前まで運び、星渡と水内が相次いでホームイン、5対0と大きく突き放す一撃となった。このアンジェロ、シーズン途中の獲得ながらチーム4位となる50打点を記録した。パワーのみならずスピードにも優れ、チームの起爆剤として大いに活躍してくれた。来季はアメリカに戻ることが決定しているが、最後の試合で最高の仕事を見せてくれた。
その裏、辻はレフトフライ、朴慎一はサードゴロでツーアウトまで取ったものの高添がスライダーを振りぬいてレフトスタンドへソロホームランを放った。さらに羅久聖もシンカーをうまく捕らえてセンター返しの痛烈なライナーを飛ばしたが星渡がランニングキャッチで防いだ。このプレーなどは、もはや個人では抗えない流れに試合が支配されているようであった。瑞穂はこの回限りで降板した。古巣への強烈な恩返しを果たした上で。
7回は強力な外国人バッターを迎える。よって左打者のバンカーには平野を、右打者のコリスには黄直哉をぶつけるという一人一殺の投手起用を見せた。いつになく慎重だが、4点差は引っくり返らない数字ではないので確実に勝利を手にするためには必要な措置であった。
結果はバンカーをライトフライ、コリスをサードライナーに打ち取った。続く羅慧聖には野藤が当たり、フローデセンから教えてもらったというチェンジアップでセンターフライに抑えた。この野藤も開幕前の予想からすると想像以上と言える活躍を見せた。ただタフなだけではないと30を過ぎてから証明して見せた遅咲きの花である。
8回と9回は昨日と同じ小松原と比山のリレーで逃げ切りを図る。小松原は山根の代打砂子を三振、赤沼をショートゴロ、辻をセンターライナーに抑える。そして9回、満を持してストッパー比山仁がマウンドに登る。本日の9回表、京城のマウンドには西坂が登っていた。この西坂が昨年まで大連のストッパーであったことは何度も述べてきたことであるが、もし西坂が今季も大連にいたら比山はどうなっていたであろうか。おそらく、今のような姿ではなく、昨年までのように弱々しい部分を大いに併せ持ったままだったのではないか。
力はありながら精神面の弱さを指摘されてきた比山を、劉監督は西坂を移籍させて空いたストッパーの地位に据えた。今や比山の精神面を不安視するものはいない。試合の最後に立つ投手はたった1人である。そのように重要な地位に比山を据えた事で、比山仁という野球人が大きく育ったと言えるだろう。潜在能力に関しては疑うものはいなかっただけに、劉監督は腹をくくって起用し続けるという賭けを選択できたのだろう。そして、その賭けに見事勝利して見せた。
そして今日、比山は先頭打者の代打杉田、高添を連続三振、そして最後のバッターとなる羅久聖をライトライナーに打ち取った。ライトは林葉輔。大連バトルシップス一筋21年。常にチームを支え続け、今季はキャリアの集大成と言えるような大活躍を見せて首位打者、打点王を獲得した。チームの象徴といえるこの男が、東洋一のウイニングボールをその右手に掴んだ。
