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大日本リーグ-大連戦記-  作者: 沼田政信
プレーオフ
185/188

3勝3敗 乾坤一擲の勝負は明日

[ホーム]京城

4辻

8朴慎一

7高添

5羅久聖

3バンカー

Dコリス

6羅慧聖

2山根

9赤沼


[ビジター]大連

8星渡(5-2)

7水内(5-2)

6棚橋(4-1)

9林(3-0)

3古池(4-1)-柳中平(1-0)

4近堂(4-1)

Dアンジェロ(3-1)

2清水(3-0)-立石(1-1)-森茂-5

5大上(3-1)-李健太郎(0-0)-2金重男


大 001 100 010 3 松浦(6 2/3-2)-○平野(1/3)-小松原(1)-S比山(1)

京 000 200 000 2 勝間田-土門-●西坂-菊藤-孔僚


 京城に移っての第6戦、事前の予想通り大連は松浦、京城は勝間田が先発。また、前の試合で違和感を訴えて途中交代したパウロは右脚の疲労骨折が判明したのでスタメンから外れている。代わりの5番打者はストレートに強い古池が抜擢された。指名打者にはアンジェロというのも珍しいが、パウロが消えた今、長打のあるアンジェロは貴重な得点源である。このシリーズで打撃好調の水内との共存を図ったようだ。その水内は2番、それまで2番だった大上は9番に置いて上位打線との連動性を円滑にした。こういったスタメンは指名打者制だから組めるものである。


 試合は2回までどちらも無安打に抑えるという立ち上がり。これはまたも投手戦かと思われたが3回、この回先頭打者となるDHのアンジェロが勝間田の初球ストレートを完璧に捕らえた。一見しただけでそれとわかる打球は猛烈なスピードでレフトスタンドを貫いた。実はこのアンジェロ、大日本シリーズではここまで無安打と絶不調だった。前の試合では出番すらなしという苦難に耐え、9打席目にしてようやく出た初ヒットが貴重な先制ホームランとなった。


さらに4回、この回の先頭は打撃好調の水内だったが、この打席でも勝間田のスライダーにバットを合わせてレフト前ヒットとさすがの好調ぶりを見せた。続く棚橋は三振に倒れたが林が四球で一二塁。古池はファーストゴロで二塁封殺となったが林の上手い走塁で一塁には投げさせずツーアウト一三塁に。ここで近堂がストレートに詰まりながらもレフト前に落ちるタイムリーヒットで2点差とする。近堂はこういった場面で泥臭くも確実に仕事ができる選手である。


 しかしこの直後から京城の反撃がスタートする。この回先頭の辻は9球粘った末に四球で出塁。朴慎一は送りバントと思いきやヒッティングに切り替えて三遊間を破るヒットで一二塁とする。このあたりはさすがの技術である。高添はレフトフライに打ち取るも、羅久聖のサードゴロを大上がエラーで満塁としてしまう。そして続くバンカーはセカンドゴロ。近堂はダブルプレーを狙いまず二塁を封殺、ボールを受けた棚橋がすかさず一塁に送球したがバンカーが一瞬早くセーフ。この間に辻が生還して1点差とした。


 巨体を必死で前進させて最後は顔面から一塁に飛び込んだバンカーの激走は京城ナインの想いを形にしたものだった。そしてそのバンカーを引き継ぐようにコリスが松浦のカーブにタイミングを狂わせられながらも腕力だけでレフト前まで持っていった。これで朴が生還して一気に同点まで追いついた。さらに続けば逆転という場面だったがここは松浦が奮闘。羅慧聖をカーブでタイミングを狂わせてレフトフライに打ち取りピンチを脱出した。


 それからは、ともにランナーは出すものの得点には至らずという展開が続いた。勝間田は6回までで降板。7回表は土門を繰り出したがこれは最善手とはならなかった。一死後、星渡がライト前ヒットで出塁。水内はレフトフライでツーアウトも、棚橋がセンター前ヒット、林が四球で満塁のチャンスを作る。ここで道原監督は土門を諦めて西坂を前倒しして投入。古池を三振に切って取った。


 松浦は7回裏の二死後、赤沼にヒットを打たれ、続く辻に四球を与えたところで交代となった。松浦はエラー絡みで失点したものの、しっかりと試合を作ってくれた。劉監督が繰り出したのは平野。この2人、松浦と平野は緑ヶ原高校から一緒にプロ入りしてわずか2年で大連を支える立派な戦力に成長してくれた。特に育成枠から強力な左殺しの地位を得るまでに登りつめた平野は賞賛に値する。そしてその平野が朴慎一を平凡なセカンドゴロに抑え、同級生リレーは成功した。


 そして8回表、京城は回またぎの西坂を続投させた。西坂は自慢のストレートを武器に押しまくり、近堂をファーストフライ、アンジェロをサードゴロに抑えた。この流れを変えるべく、劉監督はキャッチャー清水の所で代打に立石を送った。


 ベテラン立石は自分には打てそうもないストレートをうまくカットして6球目、甘く入ったストレートをレフト前に転がした。これで西坂のコントロールが乱れ、続く代打李健太郎は四球。そしてトップに戻って星渡がほとんど曲がらず真ん中に入ってきたスライダーを綺麗にセンター前に弾き返した。立石の代走森茂が生還して3対2と京城を突き放した。今季京城のセットアッパーとして活躍した西坂に「俺たちだって成長したんだ」と伝えるような攻撃だった。


 8回は小松原、9回は比山の必勝継投策で京城の反撃を抑えた。これで3勝3敗とまったくのイーブンとなった。劉監督は「ほしい時に点を取ってくれた。最後となる明日の試合につなげられて良かった」と控えめな口調で語った。劉監督の言葉通り、泣いても笑っても明日が最後の一戦となる。4月1日の開幕からついにここまで来た。227日目の扉を開け放ったときに待つのは歓喜かそれとも別の何かか、すべては明日判明する。

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