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大日本リーグ-大連戦記-  作者: 沼田政信
シーズン150試合
167/188

リーサルウエポンの一撃 大一番を制す

[ホーム]大連

8星渡(4-1)

4大上(3-1)

6棚橋(4-1)

9林(4-1)

3パウロ(4-1)

7宮畑(3-1)-水内(0-0)

5ノーリー(2-0)-古池(1-0)

2清水(3-0)-ドラグノフ(1-1)

1フローデセン(2-1)-黄直哉-小松原-立石(1-0)-野藤-比山-李健太郎(1-1)


[ビジター]奉天

5横山

4佐藤

2漢

8長谷川

7間口

9浜口

3蔡均森

6田辺

1星村


奉 000 000 100 1 星村-松本-丸茂-●ファン 78勝54敗12分

大 000 001 003 4 フローデセン(6 1/3-1)-黄直哉(1/3)-小松原(1/3)-野藤(1)-○比山(1) 78勝54敗12分


 時間は9時12分、9回ツーアウト一二塁、マウンドには奉天の信頼できる抑え投手であるケリー・ファンが立つ。この豪腕ストッパーがこの回5人目の打者に対して2球目に投じた外角へのストレートが捕らえられる。打球は勢いよく伸びていき、レフトスタンド下段に突き刺さった瞬間、球場に大勢詰め掛けたホームの大連ファンによる狂喜の叫びに包まれながら試合は幕を閉じた。全てを決めた男はこれがプロ初ヒットであった。


 今日の試合は重要重要と言われ続けてきた4連戦の中で最も重要と目される試合であった。ここまで2試合で1勝1敗と星を分け合った大連と奉天。まだどちらの流れとも決められない中でどちらが主導権を握るか、それは今日の試合にかかっている。そしてその大一番の先発は大連が今季入団ながらも安定したピッチングを見せているフローデセン、そして奉天は切り札であるエース星村を繰り出してきた。


 星村は今季ここまでの防御率は1点台で16勝とまさに磐石そのもの。この絶対的エースを前に大連は待球作戦を敢行した。アンジェロではなく宮畑やノーリーをスタメン起用したのもこの作戦を徹底させるためである。結果的に凡退となっても可能な限り早打ちをせず、球数を重ねるように務めた。初回の大上は星村に12球、3回のノーリーは21球投げさせるなどジリジリとスタミナを消耗させた。


 先制点を奪ったのは6回だった。一死後、星渡がショート内野安打で出塁、大上は四球を選び一二塁とする。そして棚橋が外角に逃げるスライダーをうまく流し打ちしてライト線に落ちるタイムリーヒットを放った。今季3番ショートに抜擢されて1年間ポジションを守り通してきた棚橋が最重要場面で大きな仕事を果たした。


 しかしその直後の7回表の一死後、漢と長谷川に連打を浴びる。ここでピッチャーを黄直哉に交代。間口をサードフライに打ち取ってワンポイントリリーフとしての役割を全うする。しかし続いて登板した小松原が浜口にタイムリーヒットを浴びてしまい振り出しに戻る。


 以降は大連と奉天のリリーフ陣が奮闘して9回裏まで1対1で来た。勝利のなくなった奉天は試合を締めるために抑えのファンを投入。しかしこのファンに大連打線が食って掛かる。まず先頭のパウロがストレートをセンター前に弾き返すヒット。続く宮畑に代わって8回からレフトの守備に入った水内が堅実に送りバントを決める。


 大連の代打攻勢は続き、ノーリーに代えて古池を送ったが、切れ味の鋭いフォークボールの前に三振。ツーアウトとなってドラグノフは何と初球打ち。詰まった打球だったがそれが幸いしてサード内野安打。そして9番ピッチャー比山の代打として、李健太郎が登場した。この李健太郎こそ冒頭で述べた「全てを決めた男」である。


 殊勲打の李健太郎はドラフトでは1位棚橋、2位星渡、6位大上と今季の躍進に貢献した選手と同期のドラフト7位で入団したが、わずか2年で素行不良を理由に退団となった。やることがなくなったのでとりあえず故郷に戻ったが、そこで高校時代の恩師である具淳烈監督に大喝を食らってようやく一念発起。2年間独立リーグでみっちり鍛えて、一昨年の大連秋季キャンプに参加し、就任したばかりだった劉瑞生監督に潜在能力の高さを見込まれて採用された。元々はキャッチャーだったが身体能力を生かすため外野にコンバートされたのもこの時である。


 このような経歴や、抜群のパワーから「大連のリーサルウエポン」などと呼ばれている。去年は怪我もあり出遅れたが、今年ようやく念願の一軍昇格を果たした。そして一軍3試合目、一振りでチームの歴史にその名前を刻んでみせた。遠回りしたが23歳とまだまだ若く、これからの成長が大いに期待できる男だ。とにかくこの勝利の意義は大きい。劇的な勝利によって完全に流れは大連のものとなった。


 一方奉天にとっては単なる1敗以上のダメージを受けた。絶対的エース星村を立てながら伏兵の一発に沈み、大連と並ばれた。明日、大連は間違いなくエース吉野を先発に起用する。勢いで言うと明らかに上の大連を止める術はあるのか。


その他の試合結果

70勝62敗12分 新京 14-5 開城 67勝69敗8分

76勝60敗8分 チチハル 3-9 ハルビン 63勝71敗10分

58勝76敗10分 平壌 2-1 光州 47勝87敗10分

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