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大日本リーグ-大連戦記-  作者: 沼田政信
シーズン前情報
10/188

戦力分析 平壌

平壌 前年6位

[先発]

呉拓哉

松宮

マーフィー

中山

金朋良


[リリーフ]

大河内

西向

サーディー

井垣

近藤


[スタメン]

7小谷

4鳥内

8志田

3趙民陽

5カストロ

6奈良橋

7幕内

2仲里


 レギュラー陣だけ見れば上位チームとも遜色ないメンバーである。しかし一枚皮を剥ぐと脆弱な本性があらわになる。金源直監督(53)は選手層を厚くするために奮闘しているがまだ発展途上。長いシーズン、怪我人や不振に陥る選手は必ず出てくるだけに、選手層の薄さは致命的な結果を招きかねない。ファンは多いがチームはもう一つという悪評をここらで吹き飛ばしたいところだが力不足は否めないのが実情である。


 呉拓哉(26)、松宮春日(25)の若きダブルエースは今季も健在。呉はコントロールにますます磨きがかかり安定した投球を続けている。松宮はストレートを生かすためにカットボールに挑戦。オープン戦では曲がりきらないカットボールを痛打される場面が目立ったが感触は良好だと本人は言う。この二人以外は誰が出ても同じようなものだけに、順位浮上には呉と松宮という両輪がフル回転する必要がある。


 また、ここに来て先発候補の新外国人ケビン・ウィッグス(31)の獲得も決定した。150キロを超えるストレートが武器の右腕ということだ。森敏郎(33)、金朋良(31)といった消去法的に先発として使われている投手にはいい刺激となるだろう。本来なら彼らがしっかりしていないといけないのだが、球威もあまりない軟投派だけに多くを期待するのは酷か。


 リリーフはやや弱い。大河内稔(34)、菅緑郎(38)といった経験豊かな選手が昨年は不調で勝てた試合を何度も落とした。いかにストッパー井垣吉見(26)まで回すかは今季も課題となりそうだ。金監督が期待しているのは昨年途中に入団して力強いピッチングを披露したフランク・サーディー(31)と今季移籍加入でオープン戦では気合のこもった投球を見せている前田道雄(30)、そして若い近藤健輔(21)だ。しかしどの選手も未知数な部分が多いだけに過信は禁物。大河内や菅が調子を取り戻すのに期待するのが常道だが、未だに形が見えてこない。投手陣のやりくりには今季も頭を悩ませそうだ。


 四番として長らく君臨してきたアレックス・カストロ(38)だが、昨年は長打力に衰えが見られた上に怪我で後半戦は欠場と、世代交代の波が押し寄せた。趙民陽(26)は四番として代役を超える働きを見せただけに今季はカストロから趙に四番を禅譲する模様だ。鳥内隆幸(35)、奈良橋純(34)の二遊間コンビも攻守に熟練のプレーを見せ、小谷駿馬(27)、志田憲一(28)はグラウンドを縦横無尽に動き回りとレギュラーは強力だが控えとなるといささか弱々しい。


 カストロ離脱時に三塁手を務めた鈴木勇気(23)の溌剌としたプレーも悪くなかったが穴を埋めるには至らず。代打の切り札として高い打撃力を持つ李偉誌(30)も守備が苦手な上に、スタメンに置くと打撃も悪化する傾向があり使い辛い。年齢を見ると内野手の世代交代は間近。そろそろレギュラーとなりうる若手の台頭が望まれる。


 全体的に悪くない選手が揃っている。しかし悪くないではなく良い選手がいないとシーズンを勝ち抜く事は出来ない。キャンプやオープン戦では鈴木、成田翔吾(20)といった若手が躍動しており、今後に期待できるが現状はまだ足りない。一朝一夕に選手層を厚くできるものではないだけに今季も厳しい戦いか。マスゲームを応用した独自の応援スタイルは他チームと一線を画しており平壌名物となっている。この熱烈なファンに報いるためにもまずはAクラスを目指して戦いたい。

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