究極のめにぅ
美食を求めてやまない男がとても珍しい料理を出すと評判のレストランを訪れた。
「店主、この店で一番珍しい料理を出してくれ」
その注文を受け、店主は自慢の一品を男の前に出した。
「なんだこれは!」
「こちらは人魚の煮付けでございまず。人魚とは大変珍しい生き物で――」
「そんなことは知っておる! 人魚など今まで何十回も食ったことがあるわ! この店はその程度なのか!?」
怒鳴られて慌てた店長は今度こそとっておきの一品を出した。
「こちらは世界樹の種の砂糖がけでございます。こちらは何百年に一度取れるか取れないかという――」
「まあ確かに珍しい部類だが何度か食べたことがある。やはりこの程度とはあてが外れたな」
「今しばらくお待ちください!」
とは言ったものの、これ以上に珍しい料理など残っていない。
困った店長は苦し紛れに思いついた策を実行した。
「大変お待たせいたしました」
「なんだこれは? この私に皿を食えとでも言うつもりか?」
店主が差し出した皿には、男の目には何も載っていないように見えた。
「こちらは"霞"でございます。はるか東方の国の賢者が食べているというもので、希少すぎてその詳細は謎に包まれております」
「ほぅ、これはカスミというのか。この私ですら見たことも聞いたこともないぞ。見えないとはなんとも不思議な料理よ。して店主よ、これはどのようにして食べるものなのだ?」
「ええ、ナイフとフォークでも良いですが、そのまま手づかみでかぶりついていただくのが一番かと」
「手でつかんで、か……」
すぐにでも怒り出すかと内心びくびくしていた店主だったが、男の思いのほか穏やかな様子にほっと胸をなでおろした。
しかし次の瞬間、富豪は首にかけていたナプキンをしゅるりと解くと、それを店主に差し出して言った。
「こんな珍しいものはぜひ家族にも食べさせてやりたい。持って帰るからこれに包んでくれないか?」




