表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
未必の恋、認識ある果実(かじつ)  作者: 転生新語


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

1/2

未必の恋、認識ある果実(かじつ)・前編

「せんぱーい、(はや)(はや)くー」


 (いま)一月(いちがつ)で、高校(こうこう)三年生(さんねんせい)の私は自由(じゆう)登校(とうこう)時期(じき)である。世間(せけん)では大学(だいがく)入学(にゅうがく)共通(きょうつう)テストがあるけれど、私は推薦(すいせん)入学(にゅうがく)()まっていた。(はる)からは大学生(だいがくせい)で、(いと)しの先輩(せんぱい)がいる学園(がくえん)(かよ)うこととなる。その先輩(せんぱい)旅行(りょこう)をしているのだから、私の()かれっぷりも無理(むり)はないのであった。


「そんなに(いそ)がなくても、沖縄(おきなわ)()げたりしないよ。ゆっくり()こうじゃないか」


 (ふた)年上(としうえ)先輩(せんぱい)が、慈愛(じあい)()()けてくれる。彼女(かのじょ)(ひとみ)(むかし)から、私は大好(だいす)きだった。()(りょ)(ぶか)くて、私のすべてを見通(みとお)してくれる眼差(まなざ)しである。この(ひとみ)(まえ)でなら、私はなんでも()()せる。先輩(せんぱい)(のぞ)姿(すがた)となって、永遠(えいえん)(ひとみ)のなかへ()()められたいと(おも)った。


 私たちは飛行機(ひこうき)沖縄(おきなわ)空港(くうこう)(とう)(ちゃく)していた。時刻(じこく)昼過(ひるす)ぎで、まっすぐ私は先輩(せんぱい)とバス()()()かう。(はや)一緒(いっしょ)にホテルで()ごしたくて、子犬(こいぬ)のように(さき)(いそ)ぐのが私で。その私を見守(みまも)るように、(あと)(ある)いてくるのが先輩(せんぱい)だ。(むかし)から、こういう関係(かんけい)だった。先輩(せんぱい)見守(みまも)(つづ)けてくれて、(いま)の私がある。


 天候(てんこう)はよく()れていて、やっぱり東京(とうきょう)よりも(あたた)かい。もうチケットは()っていて、私たちは(そら)(うみ)をイメージした、(あお)っぽい塗装(とそう)のバスに()った。リムジンバスというらしくて、そんなに特別(とくべつ)仕様(しよう)だとは(おも)わないけど、先輩(せんぱい)との二人(ふたり)(たび)ならすべてがスペシャルだ。女子(じょし)同士(どうし)三泊(さんぱく)四日(よっか)旅行(りょこう)予定(よてい)している。


一緒(いっしょ)()てくれてありがとうございます、先輩(せんぱい)


 バスの座席(ざせき)(とな)()って、私は先輩(せんぱい)へと(かる)(あたま)()げる。私と(ちが)って、大学生(だいがくせい)先輩(せんぱい)はいろいろと(いそが)しかったはずだ。旅行(りょこう)(さそ)いに(おう)じてくれて、あらためて私は感謝(かんしゃ)()(あらわ)した。


()にしなくていいよ。(きみ)(おも)うより、大学生(だいがくせい)なんてのは適当(てきとう)なものさ。むしろ(れい)をいうべきなのはこっちじゃないかな。旅行(りょこう)費用(ひよう)を出してもらってるんだから」


当然(とうぜん)ですよぉ、私のわがままに()()ってもらうんですから。なんでも(おご)っちゃいますから、遠慮(えんりょ)しないでくださいよね」


 ちょっとした入金(にゅうきん)が私にはあって、おかげで旅行(りょこう)ができるというわけだった。家族(かぞく)旅行(りょこう)には()(おも)()がなくて、学校(がっこう)修学(しゅうがく)旅行(りょこう)()()てて(たの)しい記憶(きおく)はない。それなのに(いま)、こんなに(こころ)()()つのは、(となり)先輩(せんぱい)によるものだろう。この(ひと)存在(そんざい)は、いつも私の人生(じんせい)(いろど)ってくれるのだ。


 一月(いちがつ)はいわゆる閑散期(かんさんき)で、(ふゆ)沖縄(おきなわ)(おとず)れる観光客(かんこうきゃく)(すく)ないらしいけど、それでもバスの座席(ざせき)はそこそこ()まっていた。極端(きょくたん)(あつ)さや(さむ)さが苦手(にがて)な私は、むしろ(いま)時期(じき)沖縄(おきなわ)にいられるのがありがたい。バスは(はし)()して、窓際(まどぎわ)(すわ)らせてもらった私は景色(けしき)(たの)しむ。先輩(せんぱい)保護者(ほごしゃ)のように、私を見続(みつづ)けている視線(しせん)(かん)じて、(むね)(うち)(あたた)かくなる()がした。




 (いち)時間(じかん)ちょっと、バスの移動(いどう)があって、私たちはホテルに到着(とうちゃく)した。()てもの自体(じたい)は、(むかし)のビルを改修(かいしゅう)したらしくて(すこ)(ふる)印象(いんしょう)だけど、先輩(せんぱい)()にしていない様子(ようす)だった。ここは最上階(さいじょうかい)からの(なが)めが()いそうで、(ちか)くにある(みさき)観光(かんこう)名所(めいしょ)となっている。ロマンチックな光景(こうけい)先輩(せんぱい)共有(きょうゆう)したくて、ワクワクが()まらない私であった。


 チェックインを()ませて、私たちは部屋(へや)荷物(にもつ)()く。普通(ふつう)なら、ここで先輩(せんぱい)高層(こうそう)(なが)めを(たの)しむところだけど、その(まえ)に私は昼食(ちゅうしょく)()りたかった。「お(なか)()いたんですぅ」と(つた)えて、先輩(せんぱい)笑顔(えがお)()()ってくれる。ロマンチックは、まだまだ私には(はや)いのかもしれない。


 残念(ざんねん)ながらホテルのランチタイムは()ぎていて、ランチビュッフェを体験(たいけん)できるのは明日(あした)からだ。それは予約(よやく)()みだから(たの)しみは()っておくとして、私と先輩(せんぱい)一階(いっかい)(もど)ってフロントでタクシーを手配(てはい)してもらった。(ちか)くにコンビニなどはなくて、せっかく先輩(せんぱい)旅行(りょこう)しているのだから(やす)食事(しょくじ)なんか()りたくない。


 (ひと)がいい運転手(うんてんしゅ)さんの案内(あんない)で、()いていそうなレストランまでタクシー移動(いどう)をする。予約(よやく)はしてなかったので不安(ふあん)だったけど、そこは閑散期(かんさんき)だからか、(おとず)れた中国(ちゅうごく)料理(りょうり)(てん)(せき)()れてホッとした。点心(てんしん)というのか、()したお饅頭(まんじゅう)やケーキがいっぱい()べられて大満足(だいまんぞく)だ。


「おいしーい。先輩(せんぱい)()べて()べてー、私を()べてー」


 はいはい、と(かる)く、あしらわれる。そういった態度(たいど)にも(やさ)しさが(あふ)れていて、すっかり私は夢見(ゆめみ)心地(ごこち)だ。この旅行(りょこう)費用(ひよう)はすべて、私もちである。(いま)の私は、ホストや地下(ちか)アイドルに(みつ)大人(おとな)女性(じょせい)気持(きも)ちが、わかりすぎるほどにわかってしまう。()(まえ)先輩(せんぱい)は、軽々(かるがる)しく『()し』などと()べるような存在(そんざい)ではないのだ。私にとっては(かみ)さまにも(ひと)しい女性(じょせい)であって、私の(いのち)先輩(せんぱい)(ささ)げるためにあるのだと()えた。


中国(ちゅうごく)(ちゃ)って、種類(しゅるい)(おお)いんですねー。(いえ)では紅茶(こうちゃ)ばかりだったから新鮮(しんせん)ですー」


(はる)からは大学生(だいがくせい)だね。(あたら)しい世界(せかい)に、(むね)をときめかせてるんじゃないかな」


「ときめかせてますよぉ、とっても。私に(あたら)しい世界(せかい)()せてください、せんぱぁい」


 私の(した)視界(しかい)は、(あま)いもので()たされている。先輩(せんぱい)(あや)ういものを(やさ)しく見守(みまも)るような表情(ひょうじょう)で、私に視線(しせん)()けてくれる。この旅行(りょこう)で、私は先輩(せんぱい)との関係(かんけい)決定的(けっていてき)(ふか)めるのだと、そう(こころ)()めていた。




 宿泊(しゅくはく)(さき)のホテルは沖縄(おきなわ)らしく、(なつ)なら(おお)いに(たの)しめるだろうプール関連(かんれん)施設(しせつ)充実(じゅうじつ)していたけれど、一月(いちがつ)である(いま)時期(じき)には利用(りよう)できないから関係(かんけい)ない。元々(もともと)、プールや(うみ)()きじゃなかった。(およ)げないわけじゃないけれど。


 それよりも私は、(さむ)(ふゆ)(だい)苦手(にがて)なのだ。極端(きょくたん)(あつ)さも(いや)だけど。運動(うんどう)苦手(にがて)で、どちらかといえば虚弱(きょじゃく)体質(たいしつ)である。()(ひく)いほうで、だから()()()とした長身(ちょうしん)先輩(せんぱい)には(あこが)れている。もっとも、背丈(せたけ)だけで(あこが)れているわけではない。先輩(せんぱい)素晴(すば)らしさは、その眼差(まなざ)しにある。内面(ないめん)(うつく)しさが(ひとみ)(あらわ)れてくるのだ。その(うつく)しさを(むかし)から、私は()っている。


 (なん)(はなし)だっただろうか。とにかく私は、(さむ)(ふゆ)苦手(にがて)なのだった。だから(はじ)めて()たけど、(あたた)かい一月(いちがつ)沖縄(おきなわ)はとっても心地(ここち)よい。先輩(せんぱい)沖縄(おきなわ)旅行(りょこう)(はじ)めてだそうで、これなら毎年(まいとし)(ふゆ)先輩(せんぱい)沖縄(おきなわ)()ようかと(おも)った。まずは先輩(せんぱい)意思(いし)確認(かくにん)しなければ。


「すっかり()っぱらっちゃった。(きみ)二十歳(はたち)になっても、だらしなくなっちゃダメだよ」


 その先輩(せんぱい)現在(げんざい)部屋(へや)のソファーでリラックスしている。ちなみに時刻(じこく)午後(ごご)十一(じゅういち)()()ぎで、私と先輩(せんぱい)夕食(ゆうしょく)()ませているし、昼夜(ちゅうや)高層(こうそう)からの(なが)めも(たん)(のう)ずみであった。部屋(へや)のバルコニーから下界(げかい)(なが)めると、(かなら)先輩(せんぱい)()()って、私を(まも)ってくれるのだ。もう(なが)めよりも、先輩(せんぱい)行動(こうどう)素敵(すてき)すぎて、私の(しあわ)せは右肩(みぎかた)()がりである。


「お(さけ)って、そんなに美味(おい)しいんですか。私も(はや)()みたいですー」


 ホテルにはラウンジがあって、午後(ごご)九時(くじ)以降(いこう)になると私は出入(でい)りできないけど、様々(さまざま)なお(さけ)()めるサービスがある。興味(きょうみ)もあって、お(さけ)について私は(たず)ねてみた。


美味(おい)しいというよりは、(つみ)(あじ)だね。()まずに()むなら、それが一番(いちばん)じゃないかな。だけれども、なかなか、そうはいかないものさ。(つみ)もなしに(ひと)()きられない。そういうことじゃないかな」


 普段(ふだん)はガードが(かた)先輩(せんぱい)も、(いま)なら()(たお)せるんじゃないかと(おも)わされるくらいの、しどけなさだった。しかし私は実行(じっこう)(うつ)さない。腕力(わんりょく)体格(たいかく)(ちが)()ぎるので。(けっ)して、(あせ)ってはいけない。まだ旅行(りょこう)一泊(いっぱく)()なのだ、先輩(せんぱい)とのプラトニックな関係(かんけい)(かなら)発展(はってん)させてみせよう。


「もー、せんぱぁい。メイクも()とさずに(ねむ)っちゃダメですよぉ。ほら、一緒(いっしょ)にシャワーを()びましょー」


 この程度(ていど)()()いなら(まえ)からあった。私は大浴場(だいよくじょう)(きら)いで、他人(たにん)(にゅう)(よく)することはない。だけど先輩(せんぱい)だけは(べつ)である。(ちい)さい(ころ)から先輩(せんぱい)は、(あね)のように私の身体(からだ)(あら)ってくれたものだ。


 先輩(せんぱい)二十歳(はたち)で、私は十八歳(じゅうはちさい)である。発育(はついく)()はあれど、現在(げんざい)(ほう)制度(せいど)では私も成人(せいじん)という(あつか)いだ。だからシャワーで身体(からだ)(あら)()うとき、先輩(せんぱい)肢体(したい)をじっくり()たり、身体(からだ)のあちこちに(ゆび)()れたりしても(なん)問題(もんだい)もない。大人(おとな)って(たの)しいなぁと(おも)いながら、私たちの沖縄(おきなわ)旅行(りょこう)一泊(いっぱく)()()けていった。




 旅行(りょこう)二日目(ふつかめ)はホテルで朝食(ちょうしょく)昼食(ちゅうしょく)()った。私の(いえ)は、(なが)いこと食事(しょくじ)美味(おい)しくなかったので(イギリス(しき)だか(なん)だか()らないが、ひたすら質素(しっそ)だった)、こういったホテルや食堂(しょくどう)料理(りょうり)にはいつも満足(まんぞく)させられる。ビュッフェとバイキングの(ちが)いが私には()くわからないが、とにかくあっちこっちから料理(りょうり)(えら)んで、お(さら)()って()べていくスタイルだ。


 (あさ)はパンや(さかな)料理(りょうり)、パスタやケーキを()べて。お(ひる)はピザや手巻(てま)寿司(ずし)、そして(にく)()べた。(なべ)みたいな容器(ようき)でじっくり、(にく)()(とお)して()いて((とう)(ばん)()き、というらしい)。()(なか)には私が()らない料理(りょうり)がいっぱいあるんだなぁと感心(かんしん)させられたものだ。それにしても長身(ちょうしん)先輩(せんぱい)が、私よりも(しょく)(ほそ)いのはどういうことなのだろうか。


「せんぱぁい。私のこと、()意地(いじ)()ってるって(あき)れてませんかぁ?」


全然(ぜんぜん)。いっぱい()べるといいよ、私より(わか)いんだから」


 (ふた)(ちが)いとは(おも)えないくらい、先輩(せんぱい)は私よりも大人(おとな)びている。この()永遠(えいえん)()まらない()がした。さて、お(ひる)()べて、これからどうするかである。私は高級(こうきゅう)家具(かぐ)見慣(みな)れているので、ホテルの内装(ないそう)には(とく)感慨(かんがい)もないが、それでもサービスには満足(まんぞく)していた。観光(かんこう)にもあまり興味(きょうみ)はなかったから、このままホテルに(こも)ってもいいんだけど、(いっ)(しょ)だけ(おとず)れてみたいところはあるのだ。


先輩(せんぱい)。ちょっとタクシーで、移動(いどう)しません? ()かったら()()ってほしいんですけど」


「ああ、いいとも。何処(どこ)へでも、(きみ)(のぞ)むところへ()くよ」


 (しん)じがたいほどの(やさ)しさである。この旅行(りょこう)で、先輩(せんぱい)はずっと私の要望(ようぼう)優先(ゆうせん)してくれている。そりゃあ旅行(りょこう)費用(ひよう)は私が()しているけど、それでも、こんなに(あま)えさせてもらっていいのだろうか。


「ありがとうございます。ちょっと(かぜ)(つよ)くなるかもしれない場所(ばしょ)なんで、(さむ)くないようにしてくださいね」




 ドラマの再放送(さいほうそう)で、よくある場面(ばめん)がある。ミステリーで終盤(しゅうばん)刑事(けいじ)探偵(たんてい)が、容疑者(ようぎしゃ)(がけ)(うえ)対峙(たいじ)するのだ。一対(いったい)(いち)で、やがて容疑者(ようぎしゃ)犯行(はんこう)自白(じはく)する。そして(がけ)から(うみ)()()げようとするのだが、阻止(そし)されて逮捕(たいほ)連行(れんこう)される。あの場所(ばしょ)へ、私は()ってみたかった。


 好都合(こうつごう)にも沖縄(おきなわ)には、そういうドラマに()てきそうな(がけ)があるのだ。灯台(とうだい)がある(みさき)で、以前(いぜん)米軍(べいぐん)によって()()禁止(きんし)区域(くいき)とされていたけど、現在(げんざい)観光(かんこう)()となっている。私はここで、先輩(せんぱい)との(なか)(ふか)めたいのだ。


 (ぞく)に『()(ばし)効果(こうか)』とかいうし、(うみ)()ながら(がけ)先輩(せんぱい)()()()えば、私と先輩(せんぱい)(あい)(たし)かなものになるはずなのである。(じつ)()えば私が(えら)んだホテルも、この(みさき)(ちか)かったから(えら)んだのであった。そのホテルから現在(げんざい)、すでに私たちはタクシーで移動(いどう)()ませている。


「なるほど。本当(ほんとう)にドラマで()てきそうな場所(ばしょ)だね」


 (いま)午後(ごご)三時(さんじ)()ぎで、よく()れている。空港(くうこう)のバスに()かれていた、(あお)(そら)(うみ)がそのまま私と先輩(せんぱい)(むか)えてくれていた。先輩(せんぱい)長袖(ながそで)のシャツに(くろ)のパンツ姿(すがた)で、私は(しろ)のワンピースだ。(かぜ)(すこ)しあって、沖縄(おきなわ)といえど一月(いちがつ)(がけ)(うえ)はちょっと肌寒(はだざむ)い。私たちは(うえ)からカーディガンを羽織(はお)っていた。(いま)AI(エーアイ)旅行(りょこう)(さき)服装(ふくそう)まで指示(しじ)してくれるから(じつ)便利(べんり)だ。


 一月(いちがつ)だからなのか、(がけ)(うえ)である周囲(しゅうい)には(だれ)もいなかった。(がけ)(さき)には(さく)もなくて、数十(すうじゅう)メートル(した)(うみ)()ちたら(たす)からないだろうなぁと(おも)う。私がドラマの犯人(はんにん)だったら、刑事(けいじ)(やく)先輩(せんぱい)(さつ)(がい)しようとする場面(ばめん)かもしれない。もちろん私は、そんなことはしない。


先輩(せんぱい)、もう(すこ)(さき)まで()きましょー」


「ほどほどにね。(あし)(すべ)らせないように、()をつけて」


 私も先輩(せんぱい)危険(きけん)()()わせたくはないので、()メートルくらいの余裕(よゆう)をもって(がけ)(さき)から(はな)れる。旅行(りょこう)(まえ)から、(ある)きやすい(くつ)()いてくるように(たの)んでいたので、私も先輩(せんぱい)(いわ)(うえ)移動(いどう)でつまずいたりはしなかった。


 ()()まり、先輩(せんぱい)(とな)()って、(うみ)()つめる。(なみ)(おと)()こえてきて、自然(しぜん)雄大(ゆうだい)さが(かん)じられた。(うみ)(おな)じく(そら)(ひろ)くて、この()こうに私の両親(りょうしん)もいるのだと素直(すなお)に私は(しん)じられる。


去年(きょねん)大変(たいへん)だったね。(きみ)の、お(ばあ)さんが()くなって」


 先輩(せんぱい)(こえ)をかけてくる。私たちは(ささ)()うように密着(みっちゃく)していた。身長(しんちょう)(ちが)いすぎて、私が先輩(せんぱい)にまとわりつくような(かたち)だけど。このまま()ねたら(しあわ)せだなぁなどと(おも)った。


「そうですねー、唯一(ゆいいつ)身内(みうち)だったんで。でも、すっきりしましたよ。(なか)()くなかったんで」


(きみ)が、(ころ)したんだよね」


 先輩(せんぱい)疑問形(ぎもんけい)ではなく、事実(じじつ)確認(かくにん)するような口調(くちょう)で、そう()った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ