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スキル【万能温泉】で、もふもふ聖獣達と始める異世界辺境村おこし。  作者: タジリユウ@6作品書籍化


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第90話 領主様の頼み


「なるほど、ヴァリン様がこの温泉の湯を改良したというのでしたら納得です。どちらにせよ、まだ長期間効果を伸ばすことができないということですね」


「うむ、そういうことじゃな。こちらについては進捗があればそちらにも教えよう」


「それはありがたいです。感謝いたします」


 どうやら万能温泉のお湯の効果が1日しか持たないことは長老さんのおかげで誤魔化せたみたいだ。


 それにもしかすると万能温泉のお湯を研究しているエルフの里のみんななら、いつか本当に万能温泉のお湯の効力を伸ばすことができるかもしれない。


「それとエルダ殿、今回は例の温泉のお湯の効果を試したかったこととは別にふたつほど頼み事があってこの村に来たのだ」


「はい、なんでしょうか?」


 今度は領主様が村長さんの方へ顔を向ける。


「儂もこのまま同席してもよいかのう?」


「ええ、もちろんでございます。なにか気になるところがございましたら、遠慮なく述べてください」


 長老さんもこの場にいてくれるみたいだ。長老さんはとっても物知りだし、一緒にいてくれるとすごく心強い。


「ひとつめはこの村で収穫した野菜をぜひ買い取らせてほしい。先日この村でいただいた野菜は非常に美味であった。もちろん対価を払うので、定期的にこの村での野菜を仕入れさせていただけないだろうか?」


「ええ、もちろん構いませんよ。あの温泉の湯のおかげで野菜の収穫はとても早くなるので、たくさん持っていってください」


「おお、それはありがたい。娘も先日ここでいただいた料理をえらく気に入ったようなのでな」


「とってもおいしかったです!」


 村長さんや長老さんと事前に相談していた内容の中にこのお願いはあった。もちろん無料で収穫した作物をすべて収めろなんて言われたら考えるけれど、しっかりと対価が払われたり、税金が少し増えるくらいなら受け入れるつもりだった。


 万能温泉のお湯のおかげで作物が取れすぎてしまって食べるのが追いつかなくてむしろ余っているくらいだから、買い取ってくれるのならむしろ嬉しいくらいだ。


「今回は大きめの馬車を用意してあるので、後ほど詳しいことを相談させていただきたい。それと、もしも我々が街からここへ来る際に必要な物があれば対価はそれで用意しようと思うのだが、いかがであろう?」


「それでしたら、この村では手に入らない金属や布などを取りそろえていただけますと非常に助かります。村の者にも何が必要か相談してみます」


 なるほど、前回領主様がこの村に来た時よりも馬車がひとつ多かったのは野菜を持って帰るためだったみたいだ。


 僕たちが街へ行って買い物をする時は荷物をたくさん持ってくることができなかったからすごく助かる。ドワーフのグラルドさんもいろいろな物を作ってくれて、エマさんたちもいろんな服を作ってくれるから、この村で手に入らない素材をもらえるのはお金よりも嬉しいかもしれない。


「もしもの時なのだが、近隣の村の作物が不作だった場合にはより多くの作物を買い取らせていただけないだろうか? もちろん普段よりも多少高くなっても構わないゆえ」


「ええ、もちろんですとも。私らも領主様より何度か援助いただいたことがございました。そのご恩を返せるのなら嬉しい限りでございます」


「おお、それは頼もしい!」


 村長さんから聞いた話だと、この世界では雨が全然降らなかったり、虫や魔物が大量に発生して作物が全然取れなくなってしまうことがあるみたいだ。このアゲク村も以前は他の村よりも厳しい環境だったこともあって、何度か援助をしてもらったことがあるらしい。


 そういう時に近くの村と協力して作物を回してくれたこの領主様はすごく優しいようだ。酷い領主様だと、村の人がみんな飢えていても知らんぷりするらしいからね……。やっぱり元の世界よりもこっちの方がすごく厳しい世界みたいだ。


 過去にそういったこともあって、みんな領主様がいい人だと信用していたらしい。


「もうひとつの頼み事であるが、一部の者に限るので、あの温泉の力で大怪我をした者を癒してほしいのだ」


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