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スキル【万能温泉】で、もふもふ聖獣達と始める異世界辺境村おこし。  作者: タジリユウ@6作品書籍化


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第89話 長老さんのおかげ


「あの温泉の湯だが、確かにこの村を離れても治癒効果が確認された。治癒効果があの温泉に直接浸かるよりも少ないということもセリシア殿やエルダ殿の言う通りであった」


 領主様たちがこの村にいた時も万能温泉のお湯のことを調べていた。


 僕としては調べるためとはいえ、自分で大きな傷を付けるのはちょっとやめて欲しかったなあ。そうしないとどれくらいの治癒効果があるのかわからないから仕方がないのはわかるんだけれどね。


「だが、その効果は思ったよりも早く喪失されてしまった。この村を出てから翌日の夜に確認をしたところ、すでにその治癒効果が失われてしまったのだ。あの温泉の湯の効果が失われる時間はそれほど短いのだろうか? あるいは汲んだ時期や時間によって変わったりするのであろうか?」


 やっぱり領主様たちは万能温泉のお湯の効果が1日しかもたかないことに気付いたみたいだ。


「それについては儂らの方が詳しいゆえ、こちらから説明させてもらおうかのう」


「ヴァ、ヴァリン様!?」


 長老さんが前に出てくる。


「儂らがアゲク村の者に助けられたあと、この温泉のお湯についていろいろと調べさせてもらってのう。今ではこの村の者よりも詳しくなってしまったくらいじゃ」


 これは本当で、エルフの里のみんなは万能温泉のお湯のことをすごく調べていた。やっぱり不思議な力の魔法を使うこともあって、万能温泉の様々な効果が気になったみたいだ。


 特に呪いや瘴気なんかを解く力についてを調べているらしい。今度聖天の樹が瘴気にのみ込まれたとしたら、自分たちで解決できるようになりたいみたいだ。


 僕たちも最初は万能温泉の効果を試すためにいろいろと調べたけれど、効果時間や影響力なんかを僕以上に詳しく知っているんだよね。僕は感覚としてこの万能温泉にどういう力があるかは分かるけれど、そういった詳しいことまではわからない。


「この温泉の湯の効果は温泉から離れていてもしばらく続くが、だいたい1日ほどで効果が切れてしまう。儂らはその効果を延ばす実験をしており、他にもこの温泉から離れても効果があるのかを試すため、セリシアに実験用の温泉を持たせておったのだ」


「……なるほど。この村にどうしてエルフのセリシア殿がいるのか気になっていたのですが、ヴァリン様と同郷の方でしたか」


「はい。先日はそのことを話してよいのかわからず、エルフの里のことは言えませんでした。まさが長老と領主様がお知り合いだとは本当に驚きました」


「ふむ、どこで人の縁が繋がっているのかはわからぬものだ。セリシア殿が自分の里のことを軽率に言えないことも当然である。エルフの者を狙う不届き者も多い世の中であるからな。道理で先日この村に来ていた際は動揺していたわけだ」


「お、お気づきでしたか……」


 確かにあの時のセリシアさんは少しテンパっていたかな。僕のことを黙ってくれていたのといっぱいお金をもらったことが理由だと思うけれど。


「うむ、儂も話を聞いた時は驚いたものじゃ。セリシアにはエルダ殿の移動と護衛を任せておったのだが、そんな時に襲撃に遭ったとは、ある意味運が良かったようであるな」


「ええ、本当に仰る通りです。特にあの毒は私たちの力だでは間違いなく間に合わなかったでしょう」


「はい……」


 フィオナちゃんが暗い顔をしている。やっぱりあの時のことは本当に怖かったんだろうなあ……。


 怖い人たちに襲われたのはよくなかったけれど、あそこにセリシアさんがいてくれたのはすごく運がよかったと思う。僕たちが最初に街へ行った時だったら、間違いなく避難していたと思うからね。


「私らがあの温泉の湯について調べたことに関しては秘密にさせてもらう。以前の魔物の群れのことについて恩義を感じているというのであれば、この村とあの温泉のことはそのままにしておいてもらいたい。もしも無理やりにでもセリシアやこの村の者に手を出そうとするのであれば、たとえ領主であろうと儂らを敵に回すと考えてもらってもよいぞ」


「と、とんでもございません! 私も部下や娘の命の恩人であるセリシア殿やこの村の者にそのようなことをするつもりはございません! むしろこの村が困っていた時には可能な限り手を貸そうと思っていた次第です!」


 領主様が手を振って慌てて否定する。


 さすが長老さん、全部作戦通りにいったみたいだ。僕には領主様の言葉が嘘かはわからないけれど、きっと本当かなと思う。


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