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スキル【万能温泉】で、もふもふ聖獣達と始める異世界辺境村おこし。  作者: タジリユウ@6作品書籍化


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第83話 両者様の帰還


「娘を助けてもらい、本当に感謝する」


「皆様、本当にありがとうございました」


 領主様とフィオナちゃんがみんなに頭を下げる。朝食を食べたあと、村の外にはってあったテントを撤収して、これから街に向かって帰るみたいだ。


「とんでもございません。またお越しくださいませ」


「いろいろとご配慮をありがとうございます」


 村長さんとセリシアさんも頭を下げる。


「ソラ様、クロウちゃん、シロガネちゃん、またお会いできることを楽しみにしております」


「は、はい!」


「ワオン」


「ピィ」


 フィオナちゃんがスカートの端をつまみ、礼儀正しく頭を下げる。改めてフィオナちゃんは貴族の人なんだなと思ってしまう。


「こちらの温泉のお湯もすまぬ。こちらで確認させていただこう。もちろん、娘や護衛の恩人であるそなたらに悪いようにはしないつもりだ」


「はい、よろしくお願いします」


「それではこれで失礼する」




『行ったようであるな』


「はあ~武装したやつらが来た時はどうなることかと思ったぜ……」


 領主様たちが見えなくなって、アリオさんもほっとしている。


「本当にエルダ殿のおかげで助かりました」


「うむ、領主殿が話の分かるお方でよかったわい。じゃが、ソラくんの温泉を詳しく調べられてしまうと面倒じゃのう。このままなにも気付かれぬと良いのじゃが、それも難しいじゃろうな」


『そうね、今回は大丈夫だったけれど、また来る時にはバレてしまうでしょうね』


 領主様の護衛の人たちは万能温泉のお湯を持ち帰り、アゲク村にいる時もフィオナちゃんのお医者さんの人や他の人も万能温泉のお湯を調べていた。


 幸いここにいる間は万能温泉のお湯の効果が1日しかもたないと気付かれなかったけれど、街に戻って効果がなくなってしまうと効果が思っていたよりもたないことはすぐに気付かれる。そうするとどうやってセリシアさんが街で護衛の人やフィオナちゃんを助けられたのかという話になってしまう。


『温泉を汲んだ時間や時期によって有効期限が異なるなどと言えば次回はどうにかなるかもしれぬが、いずれにせよ時間の問題かもしれぬ』


「ええ。いっそのこと次に領主様が来た時には温泉は突然枯れてしまったと伝え、ソラくんに温泉を消してもらうほうが良いかもしれませぬな」


『そうなるとあまりにもこちらに都合が良すぎて、村の人が関わっていることが気付かれるかもしれないわね』


「……私のせいですみません」


「ううん、セリシアさんのせいじゃないよ」


 またセリシアさんが落ち込んでしまうけれど、前にも言ったようにセリシアさんは人を助けただけで悪いことなんて少しもしてないから、落ち込む必要なんてない。


「うむ、セリシア殿が気にすることではない。どちらにせよ、領主様たちがこの村を訪れるにしてもしばらく猶予はあるじゃろう。この間にみなで考えるとしよう」


「ああ。とりあえず一段落ついて良かったぜ」


 本当にいきなり戦闘が起こるみたいなことはなくてよかった。領主様やフィオナちゃんはいい人だったけれど、やっぱり貴族の人と話すのはとっても緊張するから、僕もほっとした。


 村長さんの言う通り、みんなで考えればきっといい考えも浮かぶはずだ。






 ◆ ◇ ◆ ◇ ◆


「……ふ~む、どうしたものかのう」


 領主様たちが帰ってから3日が経った。


 その間特に大きな問題は起こっていないけれど、次に領主様たちが来た時の解決策は見つからないままだった。


「おお~い、エルフの里の人が来てくれたぞ」


 村長さんの家にみんなで集まってどうしようか相談していると、見張りをしていた人の大きな声が聞こえてきた。


「みんな元気かな?」


『ええ、きっと元気よ』


 アゲク村からエルフの里まで離れていることもあって、みんなが来るのは久しぶりだ。長老さんやミリアルさんは元気かなあ。


「物知りな長老でしたら、なにかいい方法を考えてくれるかもしれません!」


 そうだ、長老さんはすごく長生きしているおじいちゃんだし、もしかしたらいい方法を考えてくれるかもしれない。


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