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スキル【万能温泉】で、もふもふ聖獣達と始める異世界辺境村おこし。  作者: タジリユウ@6作品書籍化


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第53話 旅の話


 晩ご飯を食べながら、行商人のヘーリさんからいろんなお話を聞いた。


 魔物や盗賊に襲われて荷物を全部捨てて命からがら逃げられた話や、商売をしている時騙されそうになった話を聞いて、やっぱりこの世界は危険がいっぱいで悪い人もいるんだなあと思った。


 もちろんそれだけでなく、いろいろな場所を旅して大きな湖や火が噴き出る火山みたいなすごい景色を見てきたことも教えてもらった。アゲク村で生活するのは毎日がとても楽しいけれど、今回みたいにいろいろな場所へ行ってみるのも楽しいかもしれない。


「晩ご飯の魚をありがとうございました。それでは私はこちらで寝ますね、おやすみなさい」


「ええ、おやすみなさい」


「おやすみなさい」


 まだまだヘーリさんのお話を聞きたかったけれど、僕が眠くなってきたのとヘーリさんは明日の早朝から移動することもあって今日はここまでになった。


 ヘーリさんはお馬さんの近くでテントを立てて寝るみたいだ。


 僕たちはというと、クロウとシロガネが聖獣であることを秘密にするため、小さな姿のままで寝ることになった。セリシアさんが持っていたテントの中でみんなと一緒に入る。




『どうやら悪い者ではなさそうであるな』


『ええ、人の良い行商人さんみたいね。でも完全に油断したら駄目よ』


 テントの中でみんなと小声で話す。


 さっきヘーリさんも話していたけれど、やっぱり旅で会った人にも多少は気を付けないといけないらしい。


「ヘーリさんのお話はとっても面白かったなあ。この世界にはいろんな場所があるんだね!」


「旅をしていると、とても美しく不思議な場所とたくさん出会うことができます。私たちエルフの里もすごく綺麗な場所なので楽しみにしていてくださいね」


「うん!」


 ここにある大きなイグドルの大河やこの大きな川を渡す橋を見た時もすごく驚いた。セリシアさんが暮らしていたエルフの里もすごく楽しみだ。


『それにしても身体が汚れていてベタついたまま寝るのは少し気になるな』


『そうね、まだ今日の疲れも残っているわ。最近は毎日ソラの温泉に入っていたから良かったけれど、温泉に入らないとこんな感じなのよね……』


 今日はヘーリさんが一緒にいたから、万能温泉を出して温泉に入らなかった。


 僕もシロガネの背中に乗っていただけだけれど、まだ少し疲れが残っている。明日の朝移動する前に温泉へ入った方がいいかも。


「それでは我々も寝ましょうか。ソラくん、ちゃんと毛布は届いていますか?」


「うん、大丈夫だよ」


 セリシアさんが持っていたテントはそこまで大きくなかったけれど、子供の僕と小さくなったクロウとシロガネなら何とか入った。セリシアさんが持っている毛布は一枚しかなかったから、それを横にして4人でかけている。


 セリシアさんと僕の間にシロガネとクロウが入る並びになったけれど、毛布はちゃんと僕の方まで届いている。でも正直に言うと、いつものように大きくなったシロガネとクロウに挟まれて寝る方がすごく快適だ。


『あの行商人や他の魔物が近付けば我が気付くゆえ、セリシアも安心して寝るといい』


『そうね、私も気付くから大丈夫よ。クロウにずっとしがみついているのは疲れたでしょう?』


「ご配慮ありがとうございます。とはいえ、私も旅は慣れておりますので、人や魔物の気配に多少は気付けるかと思います」


 みんな寝ていても誰かが近付いてきたらわかるらしい。本当にすごい。


 ああ、僕も眠気が限界みたいだ……






 ◆ ◇ ◆ ◇ ◆


「ふあ~あ」


「ソラくん、おはようございます」


「お、おはよう!」


 そうだ、昨日はセリシアさんのテントでみんな一緒に寝ていたんだっけ。


 すでにクロウとシロガネも起きているみたいだ。




「セリシアさん、ソラくん、おはようございます」


「おはようございます、ヘーリ殿」


「おはよう、ヘーリさん」


 僕たちがテントの外に出ると、そこにはすでに出発の準備をしているヘーリさんがいた。荷物もほとんど馬車に積んでいて、お馬さんもすでに馬車の前にいる。ちょうど出発するところだったらしい。


「今日はかなり先まで進む予定なので、お先に失礼しますね。昨日の魚は本当においしかったです。また機会がありましたらお会いしましょう。それでは皆様の旅の安全を祈っております」


「こちらこそ一晩だけですが、旅のお話を聞けて本当に楽しかったです。またどこかでお会いしましょう」


「ヘーリさんも気を付けて。またね!」


「ワォン」


「ピィ」


 別れ挨拶を告げて、ヘーリさんとお馬さんは先へ進んで行く。


 ヘーリさんは馬車で去りながらこちらに手を振っている。僕もヘーリさんたちが見えなくなるまで手を振った。


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