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スキル【万能温泉】で、もふもふ聖獣達と始める異世界辺境村おこし。  作者: タジリユウ@6作品書籍化


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第49話 1日目

「エルフの里かあ~こんな時だけれど、ちょっとだけ楽しみだね!」


「自然が溢れているとても綺麗な里ですよ。私もずっと里の外にいると、たまに里帰りしたくなるほどです」


『ふむ、そのような場所があると聞いたことはあるが、実際に訪れるのは初めてであるな』


『ええ。私もちょっとだけ楽しみね』


 村を出てから数時間が経過して、今はお昼の休憩をしつつ、少し休憩をしている。お昼ご飯は今日焼いてもらったパンと干し肉だ。


 パンの方はルナベリーの実を入れて焼いたものと、あえて入れないで焼いたパンがある。ルナベリーを入れるとふわふわのパンになるけれど、そのぶん食べられる期間は短くなるらしい。


 午前中はクロウとシロガネがすごい速さで飛んだり走ったりしてくれたおかげで、街へ行った時よりも速く進んでいる。やっぱり村へ行く時は僕や村長さんたちに気を遣って少しゆっくり進んでくれたみたいだ。今は僕とセリシアさんの2人ともクロウとシロガネに乗せてもらっているから、もっとスピードが出せている。


「ソラくん、改めましてエルフの里まで一緒に来てくれて、本当にありがとうございます」


「ううん、僕たちもセリシアさんにはいっぱいお世話になったからね。それにさっきも言ったけれど、初めての場所へ行くのは楽しみだよ」


 セリシアさんには村のことでたくさんお世話になったし、ちょっとエルフの里に行って帰ってくるくらいお安いご用だ。さすがに帰してくれなくなったらちょっと困るけれどね。


「感謝します。……ソラくん、このご恩はきっとお返しします!」


「あんまり気にしなくて大丈夫だよ、セリシアさん。僕が何かするってわけでもないからね。それよりもこんなに速く僕たちを運んでくれるクロウとシロガネのおかげだよ」


「ええ、もちろんクロウ師匠とシロガネ師匠にはとても感謝しておりますが、あの万能温泉というスキルは間違いなくソラくんの力です。村から時間を掛けてエルフの里まで一緒に来てくれると言ってくれて、本当に嬉しかったです」


『ソラらしいわよね。私とクロウはソラに命を助けてもらったし、もっと誇っていいのよ』


『うむ。あの温泉の力はソラの力だ。本当に我らも感謝しているぞ』


「うん!」


 僕自身そこまで大きなことをしたつもりはないけれど、僕でもみんなの役に立つことができるのは嬉しい。




『よし、今日はここまでだな』


『さすがに疲れたわね』


「お疲れさま」


「お疲れさまです、クロウ師匠、シロガネ師匠。2人とも本当に速かったです。これなら予定していたよりもずっと早く到着できると思います」


 午後もいっぱい進んだおかげで、予定よりも早いみたいだ。


 途中で何度か魔物ともすれ違ったけれど、クロウとシロガネがあまりにも速すぎて一度も戦闘にならなかった。きっと通り過ぎた魔物も誰が通ったのかわからなかっただろうな。


 まだ日は暮れていないけれど、日が暮れると当たりは真っ暗になるから、早めに野営する場所を確保する。


「食事の用意は私がしますので、おふたりはどうかゆっくりと休んでいてください」


「僕も手伝う」


『うむ。すまないがよろしく頼むぞ』


『ちょっと休憩させてもらうわね』


 クロウとシロガネには休憩してもらいながら、先に晩ご飯の準備をする。先に万能温泉へ入って身体を休めるのもいいけれど、一度温泉に入ってしまうとすぐに眠たくなってしまうから、村でも晩ご飯を食べてから温泉へ入るようにしている。


 僕も多少は疲れているけれど、お手伝いをするくらいの元気はまだ残っている。火を起こしたり、水を出したりするのはクロウとシロガネが魔法で出してくれたおかげで、すぐに料理は完成した。




「うん、おいしい!」


『ふむ、なかなかいけるな』


『ええ、おいしいわね』


 晩ご飯はお肉と野菜たっぷりのスープだった。柔らかく煮込まれたお芋や葉物の野菜と干し肉が入っていて、塩とコショウで味付けされている。


 小麦粉で少しトロミもついていて、疲れた身体でも食べやすくて身体がとっても温まった。


「セリシアさんは料理も上手なんだね!」


「料理というほどのものでもないですよ。旅をしているので、こういったどこでも簡単にできるものは作り慣れているだけね。でも、塩とコショウがあるだけで、味がこれほど豊かになるわ」


 すっごくおいしいのになあ。でも確かに村で食べる料理よりも旅をしながら食べる料理みたいな感じでなんだかいいな。


 焚き火をしてその周りに座ってみんなでご飯を食べるのはなんだか新鮮だ。日も暮れてきて、周りには一面の星空が見えるなかで食べるご飯はいつも以上においしく感じた。




『ソラ、それでは頼むぞ』


「うん。えいっ!」


 晩ご飯の片付けをして、セリシアさんが寝るためのテントなんかの準備もできたから、万能温泉を設置する。


 いつも通り、何もない地面に白い湯気の立つ温泉が突然現れた。


「……それにしても本当に不思議ですね。魔法の力はまったく感じられません」


『迷い人が使うスキルとはそういったものなのであろうな』


『まあ理屈はわからないけれど、どこででもこの気持ちが良い温泉に入れるのはとても素敵なことね』


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