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スキル【万能温泉】で、もふもふ聖獣達と始める異世界辺境村おこし。  作者: タジリユウ@6作品書籍化


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第32話 条件


『……以上が我らからの条件である。この条件が吞めるのであれば、我らと同行することを許そう』


「はい、承知しました!」


 セリシアさんにみんなで決めた条件を伝える。


 村の人に危害を加えないこと、村の仕事を手伝うこと、しばらくは村の外で生活をすること、クロウやシロガネや村のことは他の人には絶対に話さないという条件をセリシアさんは了承してくれた。


「俺はアリオだ。よろしくな」


「儂はエルダじゃ。よろしくお願いする」


「セリシアです。こちらこそいきなりお邪魔することになってしまい、お世話をおかけします。私にできる限りのことであれば手伝いますので、どうぞよろしくお願いします」


 アリオさんと村長さんが順番にセリシアさんと握手をする。


「初めまして、ソラです。よろしくお願いします」


「セリシアです。まだ幼いのにとても礼儀正しいのですね。ソラくん、こちらこそよろしくお願いします」


 セリシアさんは少ししゃがんで僕と目線を合わせて握手をしてくれた。まだ出会ったばかりだけれど、子供である僕にも丁寧に接してくれる優しいお姉さんという印象だ。


『我の名はクロウだ』


『私の名前はシロガネよ』


「クロウ師匠、シロガネ師匠、どうぞよろしくお願いします! おふたりに相応しく、とても素晴らしいお名前ですね!」


『ふっ、そうであろう!』


『あらっ、ありがとうね!』


 クロウとシロガネはセリシアさんに名前を褒められて嬉しそうだ。僕もなんだか嬉しくなってくる。


『それじゃあ村へ戻りましょうか』


『うむ。今日中に帰るのは難しいが、明日の日が暮れる前には戻れるであろう』


「……っ!? なんという神々しいお姿! これが聖獣様の真のお姿!」


 シロガネとクロウが元の大きな姿へ戻ると、セリシアさんが驚きの声を上げる。やっぱり最初に2人が大きな姿になるのはびっくりするよね。


『あまり遅いようであるならば、そのまま置いて我らは先に行くぞ』


「はい、師匠に遅れないように精一杯頑張ります! 私は風魔法に加えて身体能力強化の魔法も使えますので、足の速さには多少自信があります!」


 セリシアさんは魔法が使えるみたいだ。


 いいなあ……。もちろん万能温泉もすごい能力だから贅沢は言えないけれど、僕も魔法を使ってみたかった。


『それじゃあ行きましょう』






『……よし、今日はここまでであるな』


『まさか本当についてこられるとは思っていなかったわ』


「はあ……はあ……。いえ、身体能力強化の魔法を使ってもかなりギリギリでした。クロウ師匠とシロガネ師匠は背中に人を載せ、たくさんの荷物を運んでいるにもかかわらずこの速さとはさすがです!」


 帰りは街で購入したたくさんの荷物があったけれど、クロウとシロガネはそれをまったく感じさせないくらい速かった。


 そしてセリシアさんの荷物はリュックひとつだけれど、2人のあとを走ってついてこれたのにはとても驚いた。きっと元の世界の陸上選手よりも全然速いんだろうなあ。細い女性のセリシアさんがこんなに速く走れるなんて、この異世界の魔法は本当にすごい。


「ふう~相変わらずとんでもない速さだったぜ……。それじゃあ飯を作るからみんなはしばらく待っていてくれ」


「僕も手伝う」


 クロウの背に乗るよりも地面を走る振動がない分、空を飛ぶシロガネに乗る方が疲れないから、僕もまだ元気がある。


 それに最初にクロウやシロガネの背に乗った時よりも少しだけ慣れてきたみたいだ。アリオさんも今日はまだすぐに動ける元気があるらしい。


「わ、私もお手伝いを……」


「だいぶ疲れているようだし、そのまま休んでおけって。心配しなくても、セリシアさんの分も作っておくぜ」


「ご配慮ありがとうございます。くっ、師匠の食事を作るのは弟子である私の役目なのに……やはり私はまだまだ修行が足りないようですね」


「いや、あの速度についてこれるだけで、十分にとんでもないことなんだがな……」


 アリオさんの言う通り、僕もセリシアさんが2人の速さについてこられるとは思っていなかった。とってもすごいことなんだよね。


 あと本当ならこういう時にこそ、僕の万能温泉の力は役に立つはずなんだけれど、まだセリシアさんには秘密にしておかないといけないみたいだ。とっても疲れているセリシアさんに温泉のことを黙っているのは少しだけ罪悪感があるかもしれない……




「なるほど、セリシア殿はいろんな国を巡ってきたのですな」


「はい。基本的にエルフは生まれ育った森の里にずっと暮らしているのですが、稀に私のように外の世界へ憧れる変わり者のエルフがいます。私も里を出る時は両親にだいぶ反対をされましたね」


 晩ご飯を食べながら、セリシアさんの話を聞いている。


 この異世界では種族によって暮らし方や考え方がだいぶ違うみたいだ。


「エルフ族を見たのは初めてだぜ。街でもほとんど見かけたことがねえもんな」


「エルフの集落はそこまでありませんからね。付近には私のような旅をしているエルフくらいしかいないのでしょう」


 セリシアさんのエルフという種族は珍しい種族みたいだ。本当にこの異世界にはいろんな種族がいるよね。


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