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スキル【万能温泉】で、もふもふ聖獣達と始める異世界辺境村おこし。  作者: タジリユウ@6作品書籍化


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第30話 人影


「ふ~む、どうしたものかのう」


 村長さんとアリオさんがちらりと僕たちのほうを見る。クロウとシロガネは僕の方を見て頷いてくれたので、僕は村長さんとアリオさんに向かって頷いた。


 この辺りでは育てることができなくても、万能温泉のお湯があれば成長してくれるかもしれない。少し高いかもしれないけれど、お砂糖を手に入れることができる可能性があるなら、試してみてもいいと思う。やっぱり甘い物があると嬉しいよね。


「村長、試してみるのもありかもしれないぜ。可能性がゼロというわけじゃないんだろう?」


「ええ、その通りです! うまくいけば大儲けですよ!」


「そうならなかったから今まで売れ残っていたんじゃろうて」


「まったくだぜ。他にもたくさん購入するわけだし、多少は値引きしてくれよな」


「あっ、はい……もちろんです」


 テンションが上がったり下がったり激しい人みたいだ。


 いっぱい購入することもあって、少し値引きしてくれるらしい。ミアさんのお店も残っていた在庫が少し売れてよかったかな。




 作物の種や苗を購入して、もう一店お店に寄ってから街を出た。


 初めて訪れた街はとても楽しかった。村にはなかった物がいっぱいあって、いろんな種族の人が大勢いて見ていて飽きない。


 市場で食べたお昼ご飯もとてもおいしかった。お肉はクロウが狩ってくれたクリムゾンベアの方がおいしかったけれど、村にはなかった特製のタレをつけて食べると、とっても不思議な味がした。


「すっごくいっぱい買えたね!」


「ああ。これもソラたちのおかげだぜ!」


「作物の種や苗だけでなく、農具や他の物をいろいろと買えたわい。これも皆様のおかげです」


 種や苗の他にも釘や金属の材料なんかも山ほど買ってきた。村に戻ったら、グラルドさんが喜んでくれるといいな。


『……あら、喜んでいるところを悪いけれど、後ろから誰かがついてきているわね』


「なっ!?」


「ええっ!?」


 いきなりシロガネがとんでもないことを言うから、思いっきり驚いてしまった。


「後ろには何かいるようには見えませぬが……」


『むっ、うまく姿を隠しているようだな。街の中では人が多かったゆえに気付かなかったが、確かに我らの跡をつけている者がいる』


 後ろを振り向いてみても誰もいないけれど、クロウとシロガネには誰かがついてきていることがわかるみたいだ。


 今2人は小さな姿のままでいる。街から出てすぐの場所には人がいるかもしれないから、もう少し街から離れたところで元の姿に戻ってもらって、村まで帰るつもりだった。


「やはりお金が目的でしょうか?」


 今回買い取ってもらった金貨100枚のうち半分くらいは使ってしまったけれど、残りの金貨50枚くらいを狙った盗賊かもしれない。


『その可能性もあるけれど相手は一人のようね。お金が目的だったら、もっと大勢で来る気もするけれど』


『確かに一人であるな。我らがいれば問題ないと思うが、街の近くで騒ぎを起こすのは少しまずい。我らを襲うつもりであるならば、もう少し街から離れたところで始末するとしよう』


「あ、あんまり無茶はしないでね!」


 一人だけならクロウとシロガネがいれば大丈夫だと思うけれど、万一の場合がある。改めて朝に汲んだ万能温泉のお湯を入れた水筒を確認した。あとは何か起こってもすぐに万能温泉を出せるように準備をしておかないと。




『……よし、ここらへんまでくればいいだろう。やはり間違いなく我らをつけているな』


 あれから10分くらい歩いてきたけれど、まだ僕たちのあとをつけている人は何もしてこない。


 この道はほとんど人が通らないらしいから、僕たちのあとをつけていることは間違いないみたいだ。


「クロウ様、相手の目的がわからない以上、まずは俺が行って様子を見てきます。もしも盗賊でしたら、助力を頼みます!」


『ふむ、その覚悟は見事だが、無理をする必要はない。ソラの温泉の治癒力はすさまじいものであるが、さすがに即死してしまえば治らないであろうからな。ここは我らに任せておくがよい』


『そうね、あなたは何かあった時にソラと村長さんをお願いね。まずは私がこの姿のまま様子を見てくるわ』


「あ、ありがとうございます!」


 アリオさんが様子を見にいこうとしていたところで、クロウとシロガネがそれを止める。


「シロガネ、気を付けてね!」


『ええ、何かあったらすぐに戻ってくるわ』


 シロガネは空高くを飛んで、僕たちが来た道をゆっくりと戻っていく。いったい、誰が僕たちをつけてきているのだろう……




「あっ、誰か出てきた!」


 シロガネがゆっくりと空から周囲を回っていると、ある場所でシロガネが止まる。そしてその下から人影が現れた。


 シロガネは空を飛びながら、その人と何か話をしているみたいだ。


『むっ、どうやらその者と一緒にこちらへ戻ってくるようであるな』


「盗賊ではなかったのですかな?」


「いや、まだ油断は禁物だぜ!」


 空を飛んでいるシロガネとその人影がゆっくりとこっちに近付いてくる。


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