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第26話 野営


「それでは行ってくる。村を頼んだぞ」


「ああ、村長も気を付けて!」


「あなた、気を付けてね!」


 クロウがクリムゾンベアを倒してくれてから1日が過ぎた。昨日は残っていた解体が終わって、今日からみんなでアゲク村に一番近い大きな街を目指す。


 もちろん僕だけじゃなくてクロウとシロガネも一緒だ。それに村長さんとアリオさんが一緒についてきてくれる。昨日クロウが森の様子を見てきてくれたけれど、クリムゾンベアがいなくなって、森が落ち着いたから、僕たちも安心して村を離れることができる。


「ああ、行ってくる。ローナも大人しく待っているんだぞ」


「うん! ソラお兄ちゃん、シロガネちゃん、クロウくん、行ってらっしゃい!」


「もうちょっとお父さんとの別れを寂しがってもいいんだぞ……」


 エマさんとローナちゃんも手を振って見送ってくれる。アリオさんは2人と離れるのが少し寂しそうだ。


「みんなが戻ってくるまでには村の壁も出来上がっていると思うぞ、気をつけてな」


 昨日シロガネがいっぱい村の壁に必要な木材を運んできてくれたから、あとは僕たちが街へ行っている間に村のみんなが組み立ててくれる。グラルドさんがとても張り切っていた。


 クリムゾンベアの爪からは性能がいい農具や武器が作れるようで、昨日はとても嬉しそうにしていた。


「行ってきます!」


 いよいよみんなで街へ出発だ。すごく楽しみだなあ!




『よし、今日はここまでにしておくか』


『そうね。もうそろそろ日が暮れるからね』


 途中でお昼ご飯を食べてから休憩を何度か挟んで進み続け、今日はここまでみたいだ。


「ま、まさかたった1日でここまで進めるとは……。ここまで来れば、もう明日の朝には街へ到着できそうです」


「どんでもないスピードだったな……。振り落とされないようにしがみついているのがやっとだったぜ……」


 村長さんとアリオさんはぐったりとしている。


 村から街まで普通に歩くとすごく時間がかかっちゃうから、ここまで来るのに2人はクロウの背中に乗って、僕はシロガネに乗せてもらった。クロウとシロガネは本当に速かった。


 何度か魔物に遭遇したけれど、戦わずにそのまま走り去った。魔物も驚いていたね。


『本当ならばもっと速く走れるのだが、あれ以上スピードを出すと振り落としてしまうかもしれないからな』


『そうね、別に焦る必要はないわ』


「た、助かります」


 あれでもすっごく速かったのに、まだ上のスピードがあるみたいだ。


 僕はシロガネの背に乗せてもらって、とても綺麗な景色を見ることができてすごく楽しかった。空を飛べるって本当にすごいよね。村でローナちゃんもシロガネに乗せてもらった時はものすごくはしゃいでいた。


 今日はここで野営をするみたいだ。




「ああ~気持ちいいぜ。まさか野営をしながら湯に浸かれるとは思ってもいなかったぜ」


「今日はいつもより疲れていたから、本当に気持ちがいいのう」


 満天の星空の下で僕たちは温泉に入っている。


 僕たちはクロウとシロガネの背に乗っていただけだけれど、しがみつくのに結構力をいれなくちゃいけない。特に村長さんはだいぶ疲れているみたいだ。


『本当に気持ちが良いわね。疲れが溶けていくみたい』


『うむ。これならまた同じくらいの距離は走れそうであるな』


 もちろん小さくなったシロガネとクロウも温泉へ一緒に入っている。村の外だと魔物だけじゃなくて盗賊なんかもいるみたいだけれど、何かが近付いたらシロガネとクロウが気付いてくれるらしいから、僕たちは安心して温泉に入ることができた。


 元の世界ではあんまり見えなかったけれど、この世界の星空はとても綺麗だ。きっと空気が綺麗だからかな。でもその分焚き火がないと本当に真っ暗になってしまうから、みんながいてくれなかったら怖かっただろうなあ。


『ふむ、ソラの温泉には距離の制限などがあるのだな』


「うん。村からある程度離れると消えちゃうみたいだね」


 万能温泉をアゲク村に設置したまま街へ行っても温泉はそのままなのか確認してみたんだけれど、村からある程度離れたところで、設置していた温泉が解除されたことが感覚で伝わってきた。


 どうやらこの万能温泉は僕からある程度近くにないといけないらしい。とはいえ、結構な距離はあったから、村からちょっとだけ離れてなにかする分には大丈夫みたいだ。


 設置が解除されたあとは今みたいに前と変わらずに自由に設置ができる。


『どちらにしろ、今日の夜には野営地で設置できるか確認するつもりだったからちょうどよかったかもね』


「うん」


 もしも温泉を村へ設置したままにできていたとしても、どちらにせよ今日の夜には野営地に設置できるかを確認するつもりだった。


 もちろん僕たちが野営地で温泉に入りたかったという気持ちもあったけれど、明日には街へ行くから念のため万能温泉のお湯を携帯しておきたかった。初めての街では何が起こるか分からないからね。


 明日はいよいよ異世界の街へ入る。どんな街なのかとっても楽しみだ!


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