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スキル【万能温泉】で、もふもふ聖獣達と始める異世界辺境村おこし。  作者: タジリユウ@6作品書籍化


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第22話 壁


「やっぱり万能温泉の効果は1日だけみたいだね」


「ああ。ここまではっきりと成長がわかれるってのもおもしれえな」


『うむ。どうやら浄化や治癒の効果と同様に温泉から外に出すと1日で効果はなくなるようだ』


 シロガネが村の外に出ている間、僕はみんなと一緒に畑を手伝っている。


 昨日万能温泉をかけた作物はそのまま成長を続けて、一昨日お湯をかけて昨日かけなかった作物の成長は普段の成長速度に戻っていた。クロウの言う通り、効果は1日限りらしい。


「逆を言えば、毎日温泉のお湯をかければ普通よりも遥かに早い速度で成長するんだからとんでもないぜ……」


『うむ。そして味もおいしくなるのだから、実に素晴らしい』


 ちょっと面倒だけれど、毎日温泉のお湯をかければ問題ないみたいだ。どちらにしても毎日作物に水をあげているらしいから、そこまで手間が増えるわけじゃないらしい。


「ソラくんのおかげで大忙しね!」


「ああ。俺も痛かった腰痛がなくなっていろいろと手伝えるようになったよ」


「ええ、今のうちに畑を広げておきたいわね」


 今日は村にいる女性も畑を手伝ってくれている。洗濯物なんかが万能温泉のお湯ですぐに綺麗になるから、そのぶんこっちの作業を手伝ってくれる余裕があるみたいだ。


 それに年配で足や腰が痛くてあまり働くことができなかった人も体調が良くなって、畑を手伝ってくれている。


 万能温泉のおかげで収穫が早くなり、いろいろな作物を育てることができるようになったこともあって、村の畑を少し広げるみたいだ。みんな毎日ご飯をお腹いっぱい食べることができてやる気もいっぱいある。僕も頑張ってお手伝いをしよう!




「うわあ~立派な壁だね!」


「シロガネ様のおかげで、大きな木材を使えるようになりました。これなら多少大きな魔物が突進してきても安心できますな」


 畑の作業を終えて、シロガネが作業を手伝っている村の入り口のほうへ行ってみると、すでに入り口の周りは丸太を使用した大きな門と壁ができていた。まだまだ村を囲うには全然足りないけれど、とっても頑丈そうだ。


 丸太を縦に組み合わせて高さもアリオさんの倍くらいあるから、前の木の柵みたいに魔物に飛び越えられる心配はないかもしれない。


『そうね、これくらい頑丈な壁があれば安心できるわ。それにしっかりと組み立てられているわね。私やクロウではこうは作れないからすごいわよ』


『ふむ、確かに我ではここまで細かく整った形にするのは難しいであろうな』


「シロガネ様とクロウ様にそういっていただけて光栄です。儂もソラくんの温泉とやらのおかげで昔のように歩き回れるようになって、とても感謝しております!」


 2人が褒めているのはドワーフという種族のグラルドさんだ。ドワーフという種族は僕たち人族にとっても似ているけれど、手先が器用らしい。僕と同じくらいの背の高さで、顎からは長くて真っ白な髭が生えている。


 これまでアゲク村に必要な物をいろいろと作ってくれていたみたいだけれど、最近は腰を悪くしてしまっていたらしい。毎日万能温泉のお湯に浸かったことで、今は昔のように動けるようになって、この壁を作る指揮を執ってくれている。


「これほどの大きな木ですと、ここまで運搬して切るだけでもかなり時間が掛かるのですが、シロガネ様のおかげでもうこんなに進みました」


『あら、それくらい簡単よ』


 さっきシロガネの作業を見ていたけれど、大きくなったシロガネはすごく力持ちで、大きな木を簡単に持って組み立てるお手伝いをしていた。それに加えて、水の魔法を使って太い木を簡単に切っていた。


 森から木を持ってくるのも早いし、シロガネが手伝ってくれると作業がすっごく早くなるみたいだ。


『……ふん、我が運んだ方が早かったであろうな』


 クロウはたまにシロガネに対してライバル心を燃やしているんだよね。クロウかシロガネのどちらかが僕と一緒にいてくれるという謎のルールがいつの間にかできていたみたいで、2人一緒に手伝うことはないみたいだ。


『あとは見張り台などもほしいところだな。それと壁の周り以外には罠などあっても良いかもしれない』


『そうね。壁だけじゃなくてそういった工夫もあってもいいかもしれないわ』


「なるほど、参考になります!」


「………………」


 クロウとシロガネもグラルドさんもなんだかすごく乗り気だ。僕としてはここまでする必要はあるのかなあとちょっとだけ思ってしまう。


 でも、みんなでこうやってひとつの物を作りあげることはすごく楽しい。畑をみんなで耕したり、作物を収穫したりすることは僕がこれまでに体験することができなかったことだから、より一層そう思うのかもしれない。


 少しずつだけれど、この村の役に立つことが実感できて僕も嬉しくなってくる。


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