表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

13/35

第13話 村の畑


「へえ~干し肉ってこうやって作るんだ!」


「見るのは初めてか。まあ、作り方も何もほとんどねえがな。塩と時間さえありゃあ簡単にできるぞ」


 アゲク村でお世話になった翌日。


 昨日初めて来たこの村だったけれど、夜はぐっすりと眠ることができた。クロウとシロガネは小さい姿だったけれど、隣にいると凄く安心するし、抱き心地もすごくいいから寝ている間につい抱き着いてしまったみたいだ。


 簡単な朝食をとって、今はアリオさんとクロウと一緒に村を見て回っている。シロガネはローナちゃんと一緒にお留守番をしている。


 ローナちゃんがシロガネと一緒にいたいと駄々をこねた時、エマさんはわがままを言わないように叱って、アリオさんはデレデレとしながら僕とシロガネにお願いをしてきて思わず笑ってしまった。やっぱり家族はいいなあと思いつつ、シロガネに聞いたら大丈夫そうだったから、今は家でローナちゃんの相手をしてくれている。


「肉を薄く切って、塩を均等にまぶしてよくもみこんでやる。しばらくすると塩のおかげで肉から水分が出てくるから、それを拭いてやってあとは2~3日乾燥させるだけだ。簡単にできる割にちゃんと水分を抜けばしばらくもつから覚えておくといいぞ」


「うん!」


「ワォン!」


 干し肉と燻製肉を作るにはしばらく時間がかかるため、数日間はこの村に滞在させてもらうことにした。


 思ったよりも干し肉の作り方は簡単だった。僕もこの世界で生きていくわけだし、こういった知識はしっかりと学んでいこう。




「ほら、そんなへっぴり腰じゃあ、いつまでも終わらねえぞ」


「う、うん。頑張る!」


 村を案内してもらった後、この村の畑に案内してもらって、畑を耕す手伝いをさせてもらっている。


 子供は遊ぶのが仕事で手伝いなんてする必要はないと言われたけれど、僕は畑を耕したことなんてなかったから、僕の方からお願いした。


 鍬みたいに先が3つに分かれた金属が木の棒の先についていて、それを使って畑を耕しているけれど、1回それを振るだけですっごく力がいる。僕がまだ子供で力がないことを考えなくても結構な労力だ。


「畑を耕すのって本当に大変なんだね……」


「ワォン」


 元の世界だと野菜はスーパーにたくさん並んでいるけれど、実際にはこうやって畑を耕すことから始まって、ひとつずつ大切に育てられているんだなあ。


「はは、結構大変だろ。まあ、この辺りは土質が良くなくて硬いってのもあるがな」


「そうなんだ」


「それに作物の成長も遅いし、実が少なかったり、味もちょっと悪いんだよ。いろいろと工夫をしてみたんだが、こればっかりはあまり向上しなかったな」


 ここへ来る前に作物が実っていた畑も見せてもらったけれど、他の村で育った作物よりも実りが悪かったり、味が悪かったりするようだ。昨日の夜や今日の朝に食べた野菜はとってもおいしかったけれどなあ。


「この村では野菜と小麦を育てて、それと森で狩りをして生活をしている。まあ、あんまり豊かとはいえねえが、それでもなんとかやってきているぞ」


 朝食にはパンが出てきた。どうやら小麦はこっちの世界でもあるみたいだ。といっても、元の世界にあった真っ白で柔らかいパンじゃなくて、少し黒くて硬いパンだった。


 こっちの世界の野菜やお肉はとってもおいしかったけれど、パンの味だけはもっとおいしいといいなあ。




「う~ん、僕はこの村でずっとお世話になってもいいと思うけれどなあ」


『確かにこの村には心優しき者が多いが、いろいろと不便な面が多いぞ』


『そうね。もっと大きな街もあるし、そこへ行けばもっとおいしいご飯が食べられて、綺麗な服も着られるわよ』


 夜ご飯をいただいて、寝る前にちょっとだけ誰もいない村の外れの方へ行って、クロウとシロガネと一緒に今後のことを相談している。


「ここの村のご飯も十分においしかったし、僕はあんまり服とかは気にしないよ」


 僕はこのままこのアゲク村でお世話になってもいいかなと思っているんだけれど、クロウとシロガネは別の大きな街に行く方がいいみたいだ。


『ふむ、ソラがあまり気にならないのであれば、我はどこでも構わぬ。大きな街は便利であるが、良からぬことを企む敵も多いからな』


『そうね。私もソラがいいのなら大丈夫よ』


 2人は僕のことを思ってくれているみたいだけれど、僕も2人が街の方がいいと言うのなら2人の意見も大事にしたい。


「それじゃあ、村のみんなにはもしかしたらまたお世話になるかもって伝えて、一度街の方にも行ってみようか。僕もこの村以外の場所を見てみたいかも」


『うむ、それがいいだろう』


『そうね、私も賛成よ』


 間をとって、一度街の方を見てからこれからどうするかを決めることにした。僕もこの世界の街がどんな感じなのかはすごく気になる。クロウとシロガネの言う通り、この村でお世話になるのは他の場所を見て回ってから決めても遅くはないもんね。


 もちろんアゲク村のみんなが僕たちを受け入れてくれるかは別問題だけれど。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ