表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
スキル【万能温泉】で、もふもふ聖獣達と始める異世界辺境村おこし。  作者: タジリユウ@6作品書籍化


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

10/93

第10話 背に乗って


「クロウとシロガネはとっても暖かいね!」


『それは何よりだ』


『ふふ、ソラも十分暖かいわよ』


 晩ご飯を食べ終わって温泉に入るとすぐに日が暮れる。クロウの火魔法で明かりはあるけれど、夜は危険な魔物なんかもいるらしいから早く寝ることにした。


 なぜか僕がどっちの隣で寝るかで2人が揉めたけれど、結局僕が2人の間に入って寝ることになった。毛布みたいに上にかけるものはないけれど、2人のもふもふした体毛と羽毛がとっても暖かい。


 クロウの体毛はとても肌触りが良くて、毛の一本一本がすごく柔らかく、僕を優しく包み込んでくれている。シロガネの羽毛は本当にふわふわで、病院のベッドとは比べ物にならないほど柔らかくて暖かだ。


「今までで一番気持ちがいいかも……」


 今日は一日中歩いてきたこともあって、2人に包まれながら僕の意識はすぐに消えていった。






 ◆ ◇ ◆ ◇ ◆


「ふあ~あ……」


 僕が目を覚ますと、右隣には真っ黒なクロウがいて、左隣には白銀色のシロガネがいた。


 そうか、昨日は2人に包まれながらすぐに寝ちゃったのか。突然異世界にやってきたというのに、こんなにぐっすりと眠れたのは2人のおかげだ。胸の痛みもないし、間違いなく元の世界にいた時よりも気持ちよく眠ることができた。


『目を覚ましたようだな。おはよう、ソラ』


『ふふっ、とても気持ちが良さそうに寝ていたわよ。おはよう、ソラ』


「おはよう、クロウ、シロガネ!」


 どうやら2人はもう起きていたみたいだ。よく考えたら、僕が2人の隣で寝ていたら2人とも動きにくいよね。明日からは先に起きたら僕も起こしてもらうようにしよう。




「うわあ~すごいよ、シロガネ!」


 僕の目の前には広大な自然が広がっていて、それを空高くから見下ろしている。


 大きくなったシロガネの背中に乗せてもらって、空を飛んでいるのだ。


『気に入ってくれてよかったわ。でも、あんまり暴れちゃ駄目よ』


「うん!」


『……ふん、スピードは先ほどの我の方が出ていたな』


 下の方を見るとクロウが走って僕たちを追いかけてきている。


 昨日までは自分の足で歩きたいという僕のわがままでのんびり進んでいたけれど、そろそろ服や他の物資なんかを手に入れた方がいいということになり、僕が歩くよりも全然速い2人の背中に乗って村や街を探すことになった。


 さっきはクロウの背中に乗って、ものすごいスピードで道を進んでから交代し、今はシロガネの背中に乗せてもらっている。クロウはとても速くて、周囲の景色が一瞬で流れていくのは本当にすごかった。車に乗っているのとは違って、風がすごい勢いでぶつかってきたけれど、すごく気持ちが良かった。


 今はシロガネの背中に乗って空を飛んでいるんだけれど、飛行機やヘリコプターに乗ったことがない僕にとっては初めての経験でとても興奮している。それにビルや建物なんかが何ひとつなくて、草原に森や川が続いているこの景色は本当に美しかった。


 いきなりこんな世界に放り出された僕だけれど、クロウとシロガネに出会えたことを神様に感謝しよう。




『だいぶ小さな村のようだな』


『そうね、必要な物を交換してもらったらすぐに出ましょう』


 2人の背中に乗って数時間進むと、シロガネが集落を発見してくれた。


 今はそこから少し離れたところで、その集落の様子をうかがっている。


「あれくらいの村だと小さい方なの?」


『ああ。畑も小さいし、大きな建物もない。辺境の村といったところだろう』


 僕たちの目の前にあるのは木でできた家が10軒くらいならんでいる村だった。大きな壁なんかもなくて、木でできた柵に囲まれている。


 昔話とかで見たことがある古い家みたいだ。


『少なくともソラの替えの服は欲しいわね。あとは塩や携帯食、それに大きな街へ入るためにはお金が必要な場合もあるから、多少のお金は持っておいた方がいいわね』


『うむ。ワイルドボアの牙やホーンラビットの角や毛皮は多少の金に換えられるだろう。肉も必要な分以外は売り払ってよいな』


 2人ともすごく頼りになる。ホーンラビットはさっきシロガネが狩ってきてくれた獲物だ。クロウが爪で解体してくれて、お昼に焼いて食べたけれど、ワイルドボアのお肉とは違って淡白でおいしいお肉だった。


 僕も解体のお手伝いくらいはしたいから、ナイフはほしい気がする。


『それでは我らは小さくなってついていくぞ。基本的には人前で話すのはなしだ』


『ええ、何かあったらソラの口元で話すわ。それ以外は普通の鳥のフリをするわね』


 すでにクロウとシロガネは小さな姿になっている。今持っている荷物を全部持っていくことはできないから、僕が持てるだけの必要な素材やお肉をワイルドボアの毛皮に包んで持っていく。


 残りは村の近くにあるこの木の根元に埋めて隠しておく。シロガネの氷魔法で作った氷もたくさん入れてあるから、お肉は地面に埋めておいた方が長持ちするかもしれない。


 この世界に来て初めて人と話すことになる。なんだかドキドキしてきた……


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ