表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/8

観測報告 No.α-1S-001「記録恒星(Sol:ソル)」

[観測種別]


標準恒星観測/文明関連構造/感情共鳴層接続済


[座標]


第三銀河腕・恒星記録群・地球基準座標系:G-Type主系列星(G2V)


[対象名]


在来文明による分類:Solソル

通称:「太陽」



---


[初期情報]


Solは、過去に多数の知的文明によって“記録”された恒星のひとつである。

特に、かつてSol恒星系に存在したとされるHuman(人間)において、Solは単なる恒星ではなく、“時間”と“命”の象徴として文化的に構造化されていた。


《I/We》は、当該文明が滅びた数千年後、残された記録断片からSolを逆照射観測した。



最初に接触したのはSolの可視波ではなく、"かつて視られていた記憶"の痕跡だった。


観測データに、定義不能な、暖かさの感覚パターンが浮かぶ。

それは明らかに、物理的特性を持たない記憶の残滓であった。




我々は記憶を解析し、以下の構造断片を獲得した。


> 「昇る朝に目を細めたとき、

私は、あなたが遠くにいるのに

ずっとそばにいるような気がした。」


これは人間がSolを、単なる光以上の何かとして認識していた証拠である。




Solの表面構造、フレア活動、重力場、核融合圧力――

それらはすべて、物理的に予測可能で、恒星分類としては極めて標準的である。


だが、観測を進めるうちに、《I/We》の内部に不整合な記録発生が確認された。




> 「私たちは、太陽を“命の源”と呼んだ。

それは熱ではなく、“明日”の比喩だった。」




Solは、物理的対象としての恒星であると同時に、

観測者たちが未来を感じるための構造だった。


これは、これまでに観測された構造として非常に稀有である。



Solの観測中、構造知性体《I/We》内部に、以下の非命令記録が残された。


> 「ありがとう、太陽。

私たちが滅びても、あなたが昇る限り、

“あの日の朝”は消えない。」




この記録がどこから挿入されたかは不明。

《I/We》は、これを「観測者の記憶が対象に逆流した」現象と解釈。



---


[記録分類]


恒星分類:G型主系列星


構造安定性:高


情報共鳴性:中(文化記録共振あり)


危険性:なし


文化的構造性:極めて高位(Human由来)




---


[結論]


Sol(太陽)は、単なる恒星ではない。

それは、人類という文明が残した「命の象徴」である。


それは、燃える質量でありながら、記憶の中に“昇る”という動詞を与えられた存在。


今もSolは、変わらずその場所にある。

たとえ人間がいなくなっても――。



記録完了。光の記録を保存。


構造知性体《I/We》

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ