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天才美少女三姉妹は居候にだけちょろ可愛い。【書籍発売中】【3巻発売決定】  作者: 秋月月日
第三部

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第73話 ラッキースケベは突然に


 彩三の背中に日焼け止めオイルを塗り終わり、ようやく海で遊ぶターンがやってきた。


「ようやく来たわね理来! 覚悟は出来ているかしら!?」

「海に入るなり求められる覚悟とは……?」


 夏の暑さなど一瞬で吹き飛ばすほどの海水の冷たさに身震いする間もなく、すでに海に入っていた一夜さんからそんなことを叫ばれた。ちなみに、彼女の両手には大きな水鉄砲が抱えられている。

 一夜さんは水鉄砲のレバーをシャコシャコと音を立てながら忙しなく動かす。


「二葉とイチャイチャしたかと思ったら先生ともイチャイチャして、挙句の果てには彩三とイチャイチャして……私だけ! イチャイチャ出来てない!」

「マジで何を言ってるんですか?」

「わ、私だってねぇ、理来とイチャイチャしたいの! そのための旅行なんだから! だからあなたは今から私と一緒に水鉄砲で遊ぶのよ!」

「それってイチャイチャすることになるんですかね……」


 よく分からないけど、どうやら一人だけ放っておかれていたのが寂しかったらしい。そもそも海で遊ぶ予定だったのもあるけど、大切な人から一緒に遊ぼうと誘われてしまっては断る訳にもいかないな。

 俺は海水を自分にかけてその冷たさに体を慣らしながら、


「遊ぶのはいいんですけど、俺水鉄砲持ってきてないですよ」

「大丈夫よ。あなたの分もちゃんと準備してあるからーー二葉!」

「がってんしょーち」

「うおっ」


 ざばん! と音を立てながら二葉が水中から勢いよく飛び出してきた。

 予想外の登場に俺が驚いていると、彼女はハンドガン型の水鉄砲をそっと差し出してきた。


「はい、どうぞ」

「お、おう。ありがとう」

「理来が来る前に水をチャージしておいた。これで今から撃ち合いする」

「撃ち合いをするのは構わないけど、どうやって勝負をつけるんだ? そもそもチーム構成は?」

「チームなんてないわ。3人全員が敵よ」

「彩三は誘わなくていいんですか?」

「あの子はほら、沖の方で勝手に遊んでるから」


 一夜さんが示した方を見ると、そこには水飛沫を上げながら凄まじい速度で泳ぎ回る彩三の姿が。ついさっきまで俺と一緒にビーチにいたくせにいつの間にあんな所まで……相変わらず速さなら誰にも負けないな、彩三は。


「チームについては分かりました。それじゃあ勝敗はどうやってつけます?」

「最後まで立っていた者の勝ち」

「それだとキリがないから、顔に水鉄砲が当たった時点でリタイアってことにしましょ」

「分かりました」


 二人に銃を向けるのは気が引けるけど、手加減するわけにもいかないのでちゃんと本気でやるとするか。

 それにしても、水鉄砲での撃ち合いか……俺も年頃の男だから、銃ってだけでちょっとわくわくしてきちまうな。

 俺は水鉄砲の重さや撃ち心地を確かめた後、一夜さんと二葉に親指を立てた。


「俺はいつでもオッケーです」

「それじゃあ早速始めましょうか!」

「試合――開始」


 二葉の掛け声の直後、俺達は一斉に動き始めた。

 俺はひとまず二葉の攻撃が回避しやすくなるように、彼女から距離を取った。やはりこういうゲーム形式の遊びにおいて、一番の脅威になるのはプロゲーマーの二葉だ。ゲームと現実では運動能力が異なるとはいえ、間合いや戦術などをゲームで培ってきている彼女のことは侮れない。


「っ」

「早速か!」


 二葉から放たれた水弾を必死に避ける俺。しかし、地上と違ってここは水の中。大量の海水が重しとなって体にまとわりつき、動きを阻害してくる。

 だが、今回のルールでは顔面にさえ当たらなければリタイアにはならないので、俺はなるべく顔の守りを固めながら回避に徹していた。


(一夜さんは……)


 二葉と猛攻を繰り広げながら、横目で一夜さんの方を見る。


「そこっ!」

「甘い」

「くっ、なんで今のが当たらないのよ!?」


 二葉が俺に攻撃を仕掛けている今が好機と考えたのか、一夜さんはこっそりと二葉の横に移動して水鉄砲を撃つも、あっさり躱され――いや、水弾を水弾で撃ち落とされていた。なにあの芸当。プロのガンマンか何かであらせられる? 


「弾を打ち落とすぐらい朝ごはん前」

「ゲーマーといえどもめちゃくちゃだろ!」

「隙あり」

「あ、あぶねえ!」


 思わずツッコミを入れてしまったその隙を突くかのように、二葉が水鉄砲で狙撃してきた。数発体に当たってしまったが、依然問題なし。顔にさえ当たらなければいいんだ、顔にさえ当たらなければ。


「理来! ここは一旦協力しましょう! 強敵を倒さないことには私達に勝ち目はないわ!」

「了解です!」

「フフフ。多対一……燃えるシチュエーション」


 一夜さんと一緒に二葉を間に挟むように立ち回ってみる。流石に相手が複数だと辛いのか、二葉の動きがさっきよりも鈍重になり始めていた。


「これなら勝てる……くらいなさい二葉!」

「っ、甘い……!」


 一夜さんが放った水弾が二葉の胸元に直撃する。その反動で彼女の豊満な胸が大きく弾んだのを俺は見逃さなかった。

 まあ、見逃さなかったせいで、俺の動きが物理的に阻害される結果になってしまったのだけれど。


「理来、今がチャンスよ――って、前かがみになってどうしたの!?」

「き、気にしないで下さい……これはその、明後日の方向から攻撃を受けてしまっただけなのです」

「何を言っているのかさっぱり分からないのだけれど……」


 くっ……ただでさえ今の二葉は目のやり場に困るのに、そこに同じく水着姿の一夜さんまで視界に入ってきて、本当に理性がヤバイ。俺が鉄壁の理性を持つ誇り高き童貞じゃなかったら大変なことになっていた。

 なんとか水着から意識を逸らして興奮を抑えつつ、俺は二葉に水弾を放っていく。


「これなら……どうだっ!」

「っ……あんっ……危ない、もう少しで負けるところだった」

「へ、変な声出すのやめてくれないか!?」

「胸に弾が当たったせい。気にしないで。嫌なら一姉を狙うべき」

「それはどういう意味かしらああああああああ!?!?!?」


 間接的に体のとある部位をディスられた一夜さんが爆発した。

 怒り心頭の彼女は水鉄砲を構え直すと、勢いのままに二葉に連射し始めた。


「このっ、このっ……女の魅力は胸の大きさだけじゃ決まらないって、教えてあげるわ……!」

「どうして怒ってるのか分からない。一姉には一姉の魅力があるはず。胸以外の」

「なんの慰めにもなってないんじゃあああああああ!」


 一夜さんが放つ無数の水弾を二葉は器用に避けていく。というか、一夜さんの水鉄砲はいつ弾切れするんだ? さっきから無限に撃ち続けてるように見えるんだが……これが怒りのパワーというやつか。

 と。


「ん? なんかさっきよりも水嵩が低いような……」


 気のせいかと思ったが、どうやらそうではないらしい。

 嫌な予感がした方を見ると、そこにはこちらに迫ってくる高波が確認できた。


「っ……二人とも、波が来ます! 気を付けて!」

「へ? きゃあああああ!?」

「くっ……でもまだ、勝負の途中……ひゃっ……!」


 注意喚起の声をかけるも、相手は大自然。多少の受け身を取る程度の抵抗しかできず、俺達はそのまま波に飲み込まれた。


「がぼ、がぼがぼ……ぷはっ! ふ、二人とも大丈夫ですか!?」

「けほけほっ! ふぅ……ええ、私は大丈夫よ」

「こほっ、こほっ……私も大丈夫」

「よかった。やっぱり海で油断はするもんじゃないでs――げほぉっ!?」

「??? どうしたの? 私の顔に何かついてる?」

「い、いや、その……そもそも顔じゃないんだけど、何かついているかというより、ついていないせいというか……」

「どういうこと?」

「ふ、二葉! あなた水着はどうしたの!?」

「水着?」


 一夜さんから指摘を受けた二葉は不思議そうな顔のまま自分の身体を見下ろす。

 そこには、一糸まとわぬ状態で世界にさらされている、彼女の自慢の豊満なお胸の姿があった。


「あれ? いつの間にか水着が脱げてる。理来、そっちにない?」

「わああああああ! こ、こっち向くなって! 見えちまう、いろいろと見えちまうから!」


 波に揺られて、動きにつられて。彼女の巨乳がぽよんぽよんと揺れている。水着という支えを失っているせいか、いつもよりも数倍増しに揺れていらっしゃった。


「ごめん。私は水着を探すから、理来は私の胸を隠してくれる?」

「どうやって!?」

「こう、手で胸を隠すように……」

「無理無理無理無理だって! それは流石に、思春期の男子高校生に頼むようなことじゃねえぞ!?」

「理来になら大丈夫。なんなら見られてもいい」

「よくねえよ!」


 本能としては首を縦に振りたい提案ではあるけど、理性がそれを許さない。というか、二葉の胸を鷲掴みにしましたなんて事実が発生したが最後、俺は零士さんに殺されてしまうだろう。

 俺は目を手で塞ぎながら――指の隙間から見えてしまうものは仕方ないよね――一夜さんに声をかける。


「い、一夜さん! 俺は海から出るんで、二葉のこと頼みます!」

「別にいいけど……あ、これ二葉の水着じゃない? 私のところまで流れてきてるわよ」

「ナイス一姉。これで試合を続行できる」

「すんません。俺は不戦敗にしといてください……」


 これ以上この戦いを続けていたら、理性がいくつあっても足りないから。


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