第39話 祭りの後に
第一部最終回です。
「そろそろお開きにしましょうか」
王様ゲームの後、料理を食べたり他のゲームで遊んだり、本当にいろいろな楽しいことをして時間を過ごした。やはり学校をサボって遊びまくる快感は何物にも代えがたい。さっきまで自分が死ぬほど落ち込んでいたことなんて忘れてしまいそうなほどに。
「私は部屋の飾りを片付けるから、彩三はゴミ捨てをお願いね」
「はーい」
「じゃあ俺は食器類を何とかしますね」
「私は理来を手伝う」
それぞれで即座に役割分担を行い、各自の担当に散らばっていく。一夜さんと彩三に任せてしまうのは少々心配だけど、まあきっとそれなりに何とかしてくれるはずだ。……多分。
俺は二葉と共にテーブルの上の食器を集め、キッチンのシンクへと運んでいく。
「洗った皿を置いていくから、二葉はタオルで水気をとってくれ」
「うん。分かった」
食洗器があればいいんだけどな、なんてことを思いながら、スポンジと洗剤で皿を洗っていく。我ながら手際には自信があるのでそこまで時間はかからないだろう。
ただまあ、洗い終わるまでは暇なので、二葉に話を振ることにした。
「今日はありがとな。みんなのおかげで元気が出たよ」
「楽しかった?」
「もちろん。ここ数年で一番楽しかった」
「そう……私も、今日は楽しかった」
そう言って、微笑みを見せる二葉。ただのクラスメイト程度の仲でしかなかったあの時と比べると、随分と素の表情を見せてくれるようになったと思う。姉妹を除けば俺にだけこの笑顔を見せてくれているのだと思うと、ちょっとだけ優越感を覚えてしまったり。
「理来には、いつも元気でいてほしい。理来のおかげで、練習も大会も、頑張ろうと思えるから」
「あはは、そう言ってもらえるのは嬉しいな」
俺が彼女たちのモチベーションになっているというのであれば、こんなに嬉しい話はない。
「そういえば、次の大会とかコンクールっていつなんだ?」
「来月。他の二人もそうだと思う。来月から大会とコンクールの頻度が増えるから、今みたいにずっと一緒にはいられなくなるかも……寂しい」
「なるほど。じゃあたくさん応援行かないとだな」
ゲームと陸上はともかく、ピアノのコンクールって応援するようなものじゃない気もするけど。
「理来が応援してくれたら、絶対に勝てる」
「うーん、流石にそれはハードルが高すぎるかな……」
「誰に応援されるよりも、理来に応援してもらえるのが一番嬉しいし、頑張ろうって思えるから」
「……あ、相変わらずそういうことを素直に言えて凄いっすね二葉さん」
「??? なにかおかしなこと、言った?」
「いえ別に……」
心臓が爆発するかと思った。あまりにも好意的な発言に思わず「もしかして俺のこと好きなのかな」なんて勘違いをしてしまいそうだ。
バックンバックンと大きな音を立てる心臓に冷や冷やしつつ、最後の皿を二葉に渡す。
「と、とにかく、何かサポートできることがあったら遠慮なく言ってくれ」
「(こくり)」
できるサポートと言ったら主に生活面になるだろうけど。練習相手になれるように、俺もゲームの練習とか始めてみようかしら。
今後のサポートについて思考を巡らせ、小さくうんうん唸る俺。
――と。
「……あの、センパイ。ちょっといいですか?」
さっきまでゴミの片づけを行っていたはずの彩三が、ダイニングキッチンを挟んだ先に立っていた。気のせいか、どこか気まずそうな表情をしているように見える。
「どうした? もしかして、ゴミの分別で迷ったのか?」
「いいえ、そういうんじゃないんですけど……」
いつも明るく素直な彩三にしては珍しく煮え切らない態度だな。自分からでは言い出しにくいことなんだろうか。
それなら、俺の方から相談しやすい空気を作ってやるべきだな。
「何かあったのか? 俺でよければ相談に乗るぞ?」
「あ、ありがとうございます」
彩三は自分の腕を抱きながら、
「実は、先ほど顧問の先生から連絡がありまして……」
居心地悪そうに視線を逸らしつつ――
「あたし……もしかしたら、来月の大会……出られなくなるかもしれません」
――とんでもない爆弾を投下してきたのだった。
ここまで読んでいただきまして誠にありがとうございます!
今回で、第一部が完結となります。
次回からは第二部の連載開始となりますが、プロットや書き溜めを行うため、8月1日より連載を再開させていただこうと思っております。
続きを楽しみにしてくださっている読者の方々をお待たせしてしまい申し訳ありませんが、
より楽しんでもらえる作品を書きたいと思っていますので、ご容赦いただけますと幸いです。
長くなりましたが、もし「話が面白い!」「ヒロイン可愛い!」と思っていただけましたら
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モチベーションが爆上がりになります!
まだまだ続きますので、引き続き本作をどうぞよろしくお願いします!