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第21話 昼休みの遭遇


「はぁ……ようやく解放された……」


 昼休み。

 俺は担任教師から職員室に呼び出されていた。

 呼び出された理由は説教――ではなく、引っ越しに伴う各種情報の変更や教科書類の再注文の手続きなどのため。何でも、必要最低限の変更手続きは親父が全部やってくれていたらしく、後は俺の方で学校側に必要な申請をすればすべて完了する状態になっていたようだ。自由気ままな親父だけど、こういう時は本当に頼りになる。


「さて、何食べようかな」


 手続きはすぐに終わったとはいえ、昼休みはもう三十分も残っていない。今日は弁当を用意できていないから、購買に行ってパンか弁当を買ってぱぱっと食べるのが得策だろう。


「焼きそばパンとか残ってるといいけどなあ」


 波乱の一時限目のせいで身体がスーパー疲弊しているから、エネルギーの補充がしたい。

 と。


「あ、理来。こんなところにいた」


 購買へと続く廊下を曲がったところで、二葉と再会した。


「お昼に誘おうと思ってたのに。いつの間にかいなくなってたから探した」

「ごめんごめん。ちょっと先生に呼び出されちゃってさ」

「……もしかして、私のせい?」


 何を勘違いしているのか、しゅん……と落ち込む二葉さん。ははーん、これはもしかしなくてもアレだな? 一時限目の件を申し訳なく思ってる感じだな?


 叱られた犬みたいに項垂れる二葉の頭に、俺は右手を優しく置く。


「家が焼けた件でいろいろとな。そっちの話じゃないから安心しろって」

「本当?」

「ああ。そもそも、俺は何も気にしてないし。むしろ楽しかったじゃん、あの変なノリ。漫画みたいでさ」


 普段目立たない俺がああやって注目され、二葉と共に一緒に楽しく盛り上がれたんだ。責めるような要素は何一つない。


「……怒ってない?」

「だから怒ってないって。それとも、怒った方がいいか? よくもあんな目に遭わせてくれたなー! って」

「(ぶんぶんっ)」


 両手を構えて怒るポーズをする俺に、二葉は慌てた様子で首を横に振る。


「なら気にしないでいいよ。それよりも、もう飯食ったか? 俺まだでさぁ。よかったら一緒に購買に行かないか?」

「喜んで。私が奢ってあげる。理来、まだお金ないでしょ?」

「そうだった……」


 通帳とかカードとかまだ再発行出来てないんだった。え、つまり俺って当分は三姉妹のヒモになるしかないってことか? ……可能な限り早めにすべての財力を取り戻さないと。


「ねぇ、理来」

「ん? 何だ?」


 二葉と並び、一緒に購買へと歩き始めた直後、彼女は俺の名前を呼んだ。

 二葉は俺の顔を横から見上げてきながら、


「理来はやっぱり、優しい」

「え? どこら辺が……?」

「そういうところ」

「???」


 言っている意味が分からずに首を傾げる俺を見て、彼女は嬉しそうに微笑んだ。





   ★★★





「理来。放課後空いてる?」


 放課後。

 帰りのホームルームを終え、椅子から立ち上がろうとしていた俺に、二葉がそんな言葉をかけてきた。


「夕飯の買い出しに行くまでは暇だけど……どうしたんだ?」

「これから格ゲーの練習をしにゲームセンターに行こうと思ってる。理来も一緒に来ない?」

「ゲーセンかぁ」


 ゲーセンなんてもう何年も行ってない気がする。今ってどんな感じになっているんだろうか。まだUFOキャッチャーってあるのかな。


「二葉さえ良ければ喜んで。でも、邪魔にならないか?」

「大丈夫。格ゲー以外にもやりたいゲームがある。理来にはそれに付き合ってほしい」

「そっか。じゃあ問題ないな」


 天才ゲーマーの貴重な放課後を潰すような気がして忍びないけど、そもそも誘ったのは二葉の方だ。そういう心配はするだけ失礼というものだろう。


「一夜さんと彩三には連絡した方がいいかな?」

「私がもうしておいた」

「俺を誘う前に……?」

「……理来なら来ると思ってた」

「何も考えてなかったんだよな?」

「うっ……仰る通り。ごめんなさい」


 ぺこり、と可愛らしく頭を下げる二葉。今日は彼女からよく謝られる日だ。

 怒ってないよの気持ちを込めて、二葉の頭を軽く撫でる。彼女は気持ちよさそうに目を細めていた。


「さて、じゃあ行くとするか。あんまり遅くなると買い出しの時間になっちまう」

「ん。ゲームセンターまでは私が案内する」

「おう。お願いします」


 鞄を持ち、二葉と共に教室の扉へと向かう。友達と放課後に遊びに行くのは久しぶりなので、地味に心が躍っているのはここだけの秘密だ。


「(……ん? 友達?)」


 友達という言葉が何故か引っかかった。

 俺と二葉は、はたして友達と呼べる関係なのだろうか。


 元々クラスメイトではあったけど、俺が一方的に話しかけていただけの関係だ。

 そして今は、家を提供してもらっている側。言うなれば家主、言い換えれば同居人。友達とは何か違う気がする。


 じゃあ、このお出かけはいったいなんなのか。友達でもない女の子から一緒にゲームセンターに行こうと誘われた、この状況は――


「ふふっ。理来とのデート、楽しみ」


 隣で、二葉が嬉しそうにそう呟いた。


 デート。

 学園の人気者である天才三姉妹の次女と、ゲームセンターデート。

 もしかして、今の俺ってかなりリア充なのでは――


『『『『ッッッッチィィッッッ!!!!』』』』

「オイ、少しは浮かれさせろよお前ら!!!!」


 嫉妬狂いのクラスメイト達に渾身のツッコミを入れた後、俺は二葉と共に教室を飛び出した。

【あとがき】

読んでいただきありがとうございます!


もし「話が面白い!」「ヒロイン可愛い!」と思っていただけましたら

作品のフォロー、評価などしていただけるととても嬉しいです。


モチベーションが爆上がりになります!


まだまだ続きますので、引き続き本作をどうぞよろしくお願いします!

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― 新着の感想 ―
[一言] 「ギルティ!」 「吊るせー!!」 「あ、双葉、明日からお弁当作ろうと思うんだけど、食べたいものとかある?」 「理来の作るものはなんでもおいしいから任せる」 「…やっちまうか…」
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