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天才美少女三姉妹は居候にだけちょろ可愛い。【書籍発売中】【3巻発売決定】  作者: 秋月月日
第一部

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第15話 姉妹たちと夕食


 姉妹たちの協力のおかげで、必要なものをひとまず買い揃えることには成功した。


「本当にありがとうございます」

「お礼なんていい。私たちがやりたくてやったことだから」

「でも、センパイにお礼言われるのは悪い気分じゃないですねー」

「お金出したの私なのに、なんであなたたちが自信満々に言ってるのかしら……ありがとう泥棒じゃない?」


 ショッピングモールから家に戻り、現在はリビング。俺の作った夕飯を、二葉たち姉妹と四人で囲んでいる真っ最中だ。

 一夜さんは俺の作ったハンバーグをナイフで切りながら、


「それにしても、本当にハンバーグを作るなんて……帰ってすぐに夕食の準備を始めたし……疲れたりしてないの?」

「多少は疲れてましたけど、約束でしたからね。美味しいハンバーグを作るって」

「しかも本当に国旗を立ててるし…」

「喜んでくれるかなと思いまして」

「……あっそ」

「一姉嬉しそう」

「だ、誰が嬉しそうですって!?」


 二葉に向かって叫びつつ、「あむっ」と勢いよくハンバーグを頬張る一夜さん。今のは流石に俺でも分かる。彼女なりの照れ隠しだ。

 今日のメニューは一夜さんの要望にあったハンバーグ。それに加えてサラダや白米など、割とシンプルな洋風で揃えさせてもらった。もちろん、一夜さんのハンバーグに国旗の旗を立てることも忘れていない。


「うーん……美味しいけど、カロリーが心配かも……」


 欠けたハンバーグをフォークの先で突きながら、口を尖らせる彩三。

 そんな彼女に、俺は得意げな顔で親指を立てる。


「大丈夫だ。カロリー控えめにしておいたから」

「え、マジですか?」

「カロリーを気にしてるって言ってたからな」

「そ、そうですか。……ありがとうございます」

「彩三嬉しそう」

「だ、誰がこんな頼りないセンパイなんかに!」


 今のは流石に俺でも分かる。普通に馬鹿にされただけだ。

 彩三は切ったハンバーグを一口食べると、


「まあでも? いつも食べてるスムージーよりは? センパイの作ってくれた料理の方が多少はマシかもしれませんけど?」

「食材冒涜スムージーと俺の料理を比較すること自体が許せないんだけど。二度と食うなよあんなもん」

「えー? だってあれが一番早いんですもーん」

「はぁ……あんなんじゃいつか体壊すぞ。肉食え肉」

「食べてますよ? サラダチキン」

「最低限じゃねえか!」


 いくら必要な栄養素が賄えるからと言って、いつまでもあんなものに頼っていてはマジで体を壊しかねない。人間は食事を楽しんでこそ健康になれる生き物なのだから。


「はぁ……俺がちゃんとしてやらないと……」

「げー。なんですかその使命感」

「いいや決めた。少なくとも、家で食べる飯については俺が作ったもんを基本的には食べてもらう。あんな変なもん食うより何百倍もマシだ」

「えー」


 どこか嫌そうな彩三。これはもう一押し必要かもしれないな。

 俺は箸を置き、テーブル越しに彩三の両肩に手を置くと――


「これからが俺が毎日美味しいもん作ってやるからな!」

「っ……! あ、あぅあぅ……そ、そこまで言うなら……し、仕方、ないですね……」

「あなた二度と私のことからかうんじゃないわよ」

「彩三、顔真っ赤」

「う、うるさいよそこの二人!」


 何故か姉妹に叫んだ後、彩三は俺の手を振りほどくと、顔を赤くしたまま黙々と飯を食べ始めた。どうやら最後の一押しが効いてくれたみたいだ。ちょっと恥ずかしかったけど、効果があったなら問題なし。

 みんなが料理を堪能してくれていることに安堵しつつ、これからの仕事を考える。


(飯を食い終わったら洗濯して……部屋に運ばれてる私物とかの整理もしたいな)


 そろそろ休みが終わってしまうし、学校が始まる前にやるべきことは終わらせておくべきだろう。

 その他に、やるべきことと言えば……。


「あ、まだ風呂入ってなかった」

「帰ってきてすぐにご飯食べてますしね」

「え、みんなも入ってないのか? 俺が料理してる間に入ってくれればよかったのに」

「宅配の対応とかピアノの練習とかでいろいろ忙しかったのよ」

「あたしは日課のランニングに出てましたし」

「私はゲームしてた」


 そういえば、一分一秒が大事な天才たちなんだった。

 だとすると、今から風呂の準備をしないといけないわけか。ここは豪邸なだけあって、大浴場かと見間違うほどに風呂がでかい。風呂を洗ってお湯を張るとなると、今から一時間はかかるだろう。


「順番に入るとすると、最後の人は結構遅い時間になっちゃうかもしれませんね」

「別に、シャワーで済ませるから問題ないわよ」

「なに言ってるんですか! シャワーなんかじゃ一日の疲れは癒せませんよ? 特にピアニストは肩こりとの戦いなんですから、ちゃんと湯船には浸かってもらわないと!」

「ご、ごめんなさい」


 つい一夜さんに詰め寄ってしまった。だけど、俺の言っていることは間違っていないはずだ。


「二葉も彩三も、なるべくシャワーで済ませないようにした方がいい。どっちも身体を使う仕事をしてるんだからな」

「でも、今から順番に入ると遅い時間になっちゃうって言ったのはセンパイですよ? 早めに済ませるためにも今日はシャワーの方がいいのでは?」

「ぐっ……そ、それは……じゃあ、俺だけシャワーで済ませるから、その分で時間を短縮してだな……」

「あなたこそ疲れてるはずでしょ。却下よ却下」


 互いに互いを気遣っているせいで話が一向に進まない。こうなったら、近くの銭湯でも探してみるか……?

 この状況を打開する術を、頭をひねりながら考える俺。一夜さんと彩三もうんうんと唸り声を上げている。どうしたものか……。

 そんな三人の思考を中断させるかのように、二葉が声を上げた。


「私にいい考えがある」

「はい、二葉さん」

「四人で一緒にお風呂に入ればいい」

「「「ぶーっ!」」」


 二葉からのまさか過ぎる提案に、俺を含めた三人が一気に噴き出した。


「な、なに言ってんだ二葉!」

「順番で時間がかかるなら、一緒に入ればいい。名案。ふんす」

「ダメだ、本気で名案だと思ってやがる!」

「そ、そうよ二葉! 理来と一緒にお風呂に入るだなんて……あ、ありえないわ!」

「右に同じだよ! センパイからいやらしい目で見られたらどうするの!?」


 悔しいかな、否定はできない。


「分かった。じゃあ二人はそれぞれで入ればいい。私は理来と一緒に入るから」

「ちょいちょいちょい。俺の意思は!?」

「ひとまず横に置いておいてほしい」

「一番置いちゃダメなものだろうが!?」


 めちゃくちゃな提案が過ぎる。これは一夜さんたちにも彼女を説得してもらうしかない。

 俺は一夜さんにアイコンタクトを送る。それに気づいた一夜さんは、二葉の説得を開始した。


「二葉。いい? 理来みたいな凡人に、私たち天才の裸体を見せるわけにはいかないの」


 もっと良い言い方あっただろ。


「凡人とか関係ない。私は、理来に裸を見られても大丈夫。裸の付き合い、大事」

「ぐっ……それっぽいことを……」

「それとも、一姉は理来に裸を見せられない? 意外と臆病」

「(ブチッ)」


 あ。その言い方はダメだ二葉。

 強がりの一夜さんにそんな言葉をぶつけてしまったら……」


「誰も無理なんて言ってないでしょう!? 理来と一緒にお風呂に入るぐらい、余裕よ!」

「お、落ち着いて一夜さん! これは孔明の罠だ!」

「理来は黙ってて! いいわよ、それなら四人で一緒にお風呂に入りましょう!」

「え、あたしも巻き込まれてる!?」

「ふふ。久しぶりに、家族水入らずでお風呂……」


 暴走する一夜さん、巻き込まれる彩三、そして少しズレた喜び方をする二葉。

 三者三様の三姉妹を蚊帳の外から眺めながら、この後控えているであろう騒動の予感に、俺は盛大に溜息を吐いた。




【あとがき】

読んでいただきありがとうございます!


もし「話が面白い!」「ヒロイン可愛い!」と思っていただけましたら

作品のフォロー、評価などしていただけるととても嬉しいです。


モチベーションが爆上がりになります!


まだまだ続きますので、引き続き本作をどうぞよろしくお願いします!

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