第11話 引っ越し初日
ここまでのあらすじ!
火事で住むところを失った俺、加賀谷理来はなんやかんやあって、学園で最も有名な天才三姉妹こと天王洲三姉妹とのシェアハウスが正式に決定した!
「いやー、我ながら意味不明すぎるやろその急展開、って感じだよなー」
他人事のように呟く俺の周りには、家具も飾りも何もない、なんとも殺風景な部屋が広がっている。
ここは、天王洲三姉妹から与えられたマイルーム。元々空き部屋だったところを特別に借り受けたんだけど……私物が全部火事で燃えているので、持ち込むべきものが何一つないのである!
「教科書とかどうしよう……月曜日になったら先生に確認しなくっちゃなぁ。それ以前に服はどうする? 学校の制服しか持ってねえぞ?」
新生活が始まるぜ、などと喜んでいる場合ではない。
今着ている衣服を除けば、俺の所持品なんてせいぜい財布とスマホぐらいのものだ。通帳の再発行やら生活必需品の確保やら、やるべきことは山積している。
絶望が上からのしかかり、頭がずぅぅんと下がっていく。
「買い出しに行くにも金がないんだよな……」
「それじゃあ一緒に買い物行く?」
「いや、自分のことでみんなに迷惑をかけるわけにはいかないし……」
「一張羅を使い回される方が迷惑なのだけれど。スペアを用意するまで洗濯すらままならないのでしょう?」
「それはそうなんですけど……」
「センパイ、くさーい」
「く、くさくないやい! ――って、あれ?」
俺はさっきから誰と会話してるんだ?
床に向けていた視線を、上の方へと向けてみる。
そこには、何故か私服姿の姉妹たちの姿があった。
「あれ? 俺の部屋で何してるんですか?」
「ちゃんと荷解きできてるか様子を見に来たのよ」
「えー? 荷物がないって最初から知ってたよね? 扉の前でそわそわしてたのは誰だったかなー?」
「あ、彩三! それは言わない約束でしょう!?」
「理来が困ってるなら、私が助けてあげたい。なんでも相談して?」
言い争いする長女と三女を尻目に、二葉は俺の手を掴み、口角を上げる。
「でも、金を借りることになっちゃうし……」
「その分、私にご飯を作ってくれればいい」
「え、そんなことでいいのか?」
「私は料理ができないから。理来がご飯を作ってくれるなら、生活必需品の分のお金は出してあげる」
「二葉サマ……」
つい最近までまともに会話すらしていなかったのに……この子はもしかしたら天使の生まれ変わりかもしれない。
聖母フタバの優しさに心打たれる俺。
すると、彼女の両肩に手がひとつずつ置かれた。手の主は言うまでもなく、長女と三女である。
「ちょっと二葉。なに二人だけの世界に閉じこもってるの?」
「そうだよ。あたしたちだってセンパイに恩を売りたいんですけどー」
「チッ。気づかれた」
「一姉! 今この人舌打ちしたよ!」
「やっぱり。しれっと理来との距離を縮めようとしたわね……そうは問屋が卸さないんだから!」
ぎゃいぎゃいぎゃいと口喧嘩を始める姉妹たち。本当に仲いいなこの人たち。
「長女命令! 理来の生活必需品はみんなで買いに行く! いいわね!?」
「……理来とのデート計画が」
「ふふふ。センパイを独り占めしようだなんて許さないよ二姉」
俺のあずかり知らぬところで話が勝手にまとまろうとしていた。いや、別にいいんだけどね。俺はお金を払ってもらう側だから。今回ばかりは何も反論しません。今の俺にそんな権利は存在しない。
「それじゃあまずは何を買いに行くー?」
「もちろん決まっているわ。理来の服を買いに行きます」
「え。服は最後でいいんじゃ……」
「駄目よ!」
まずは歯ブラシとかそういうのじゃないかって思ったんだけど、凄まじい剣幕で却下された。
「私たちと一緒に歩くんだから、それ相応の恰好をしてもらわなくっちゃ」
「一姉は無駄なこだわりが凄い」
「まーまー、考え方を変えてみようよ二姉。お高めの服に振り回される可哀そうなセンパイが見られるかもしれないんだよ?」
余計なお世話だこのやろう。
「理来の私服姿……うん。服を買いに行くの、賛成」
「二葉も彩三も異論はなさそうね。それじゃあ理来? これから服を買いに行くから……着せ替え人形にさせられる覚悟を、今のうちに決めておきなさい!」
拝啓、海外を飛び回っている親父様。
シェアハウス一日目から、俺の人生は前途多難のようです。
【あとがき】
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まだまだ続きますので、引き続き本作をどうぞよろしくお願いします!




