双子座の兵隊蟻軍隊・カストル&ポルックス
【双子座の兵隊蟻軍隊・カストル&ポルックス】
【謎のD・P・屋】
〖最近引っ越して来たD・P屋さんは、八市の2階の部屋から良く見える位置に在る、大体70メートル先の所だ〗
〖夜の八時に成ると閉店らしいが、カーテンの隙間から【スーッ】と
灯りが漏れて居るのが見える〗
〖多少の残業も有る様で、10時位まで灯りが付いて居る事が多く成って
居る様だった〗
〖朝の9時が仕事の始まり見たいで、D・P・E・の看板を出すのが
仕事の始まりだ〗
〖D・P・屋さんの両隣は空き家なので特に夜等は良く目立つ〗
【夜に成ると一軒だけ【ボーッ】と怪しく浮いて見える】
【謎の黒いカーテン】
〖店のドアを開けると店のご主人声を掛けて来た、ドアは自動でなく
手動だ〗
【いらっしゃいませ】
〖40才位のご主人だった。短い頭髪でサッパリした感じの人だった〗
〖24枚撮り35ミリフィルムを取り出して〗
『これをお願いします』酒井弥八市
『同プリでよろしいですか、40分後の仕上がりに成りますね』
『40分後にいらして頂きますか、それともそちらのイスで40分お待ち
頂いても結構ですよ』
『それじゃあ、イスに座って待って居ようかな』八市
『そうですか、ではちょっと失礼致します』と ご主人は奥の部屋に
引っ込んだ
〖2分位して部屋から出て来た〗
〖ネガ現像機にセットした〗
〖目の前に大きな黒いカーテンが掛けられている壁が在った、壁一面に
黒いカーテンなので、何だろうと気に成った〗
〖横幅2間位で縦1間半位の大きさだった〗
〖10分位でネガ現像機からフィルムが出て来た・更にフィルムを自動
プリンターにセットした・プリンターの前でキーボードを叩き始めた〗
〖店内にはゴミ等落ちておらず綺麗に掃除されて居た・周りの物にも
ホコリ等付いては居なかった・キチンと整理整頓されて居た〗
〖良く見ると気が付いたが、周りの壁が写真の展示でなく黒いカーテンが
あちこちに引かれて在った〗
〖目の前のカーテンが一番大きかった、その為に照明が在っても店内
全体が暗く成って居た〗
〖店のご主人に聞いて見た〗
『あのー、この黒いカーテンは何ですか』八市
『壁のあっちこっちが全部黒いカーテンが引かれて居ますが』
【ああー・この黒いカーテンですか、私が研究して居る昆虫の写真
なんですよ】
【へーっ・どんな昆虫何ですか】八市
【蟻何ですよ、蟻の写真何ですよ】蟻蜜治虫主人
【蟻ですかー】八市
【ええー・蟻です凄く賢い奴何ですよ・実はね私の言う事を良く
聞くのですよ】蟻蜜治虫
【へーっ・言葉が解るのですか・超能力蟻ですね】八市
【勿論ですよ、言葉を聞き分ける事が出来るのは2匹だけ何ですがね】
【写真をお見せ致しましょう】と
【壁全部の黒いカーテンを片側に次々と寄せ始めた】
【おおーっ】と思わず声が出た
【どの壁も蟻の写真だらけだった】
【蟻達の様々な生態を写し出した写真だった、マイクロレンズで撮影
した様で綺麗に・克明に撮れて居た】
【どの壁も・蟻・蟻・蟻・蟻・蟻・蟻・だらけの写真だった】
【何かに群がって居る大勢の蟻・立ち上がって戦って居る蟻達・うじゃ
うじゃ・うじゃ・うじゃ・と盛り上がって大きな蟻達の山】
【大きな蟻塚も幾つも撮れて居た、大きいサイズも在り・全紙・半切
四つ切・六つ切り・八つ切り・まで800枚位有りそうだ】
【店内全体がまるで蟻達の蟻塚の様に見えて来た】
【暫く居ると、体全体がかゆく成って来そうな気分に成って来た】
【店に入って全く気が付かなかったが、ふっと天井を見てビックリした】
【なんと、天井一面に大きな一匹の蟻の絵が描かれて在った】
【一匹の女王蟻が正に卵を産み付けて居る・産卵のシーンだった】
【天井の絵は横6メートル・縦4メートルも在る大作だった】
【精密画で詳細に再現されて居る】
【この蟻達は何処かで飼われて居るのですか】酒井弥八市
【この店の奧にドアが在りまして、開けると廊下に成って居まして別棟に
繋がって居ます】
【その別棟は部屋が7つ在ります、14畳が4つ20畳の部屋2つと私が
寝起きする12畳の部屋が一つです】蟻蜜治虫
【その内の三つの部屋が兵隊蟻達の住み家に成って居ます】
【へーっ・大きい家ですねー】酒井弥八市
【蟻達の部屋の隣だと蟻達が侵入しませんか、砂糖とか蜂蜜なんかを
見つけると直ぐに侵入しますよね】八市
【それ何ですが、私の部屋には全く侵入しませんね】蟻蜜治虫
【そうですかー、普通の蟻達はどこからでも侵入しますがねー
侵入しない何か訳でも在りますかー】八市
【先程言った言葉の解る兵隊蟻に命令して居ます】蟻蜜治虫
【出来るんですかそんな事が、ちょっと信じられませんが】八市
【詳しい事は言えませんが、在る特別な餌付けをして居ますその餌
欲しさに私の言う事を聞いてくれます】蟻蜜治虫
【言葉が解る蟻は2匹だけですが、その蟻が他の兵隊蟻に命令して居ます】
【その2匹の蟻はとても強大で賢い兵隊蟻何ですよ】
【頭の悪い兵隊蟻は居ますか】八市
【蟻の中には色々と仕事をこなす賢い蟻が居る反面、先天的に弱い者を
いじめる蟻も居ますね】蟻蜜治虫
【八市さんの言う通り兵隊蟻の脳味噌は働きアリに比べて、3分の壱位の
大きさしか無くて頭が悪いです・私個人の感想ですが戦争ばっかり
吹っ掛けて居る人間と同じですね・ケンカの事しか思いつかない脳味噌
を先天的に産まれ持って授かった様ですね・ロシアにも一匹居ますね】
【主な仕事はケンカだけで赤ちゃんの面倒は全く見ません】蟻蜜治虫
【ケンカ以外の事は何も出来ず、ただウロウロして時間潰して居ますね】
【働き蟻の雌を毎日レイプして毎日食料を強奪して居ますね】蟻蜜治虫
【ロシア語でプ~チンス~クとも言いますね】
【赤ちゃんの面倒見るのは働き蟻の雌だけですね】
【話が逸れましたが本当の事ですよ】蟻蜜治虫
【体も通常の兵隊蟻の500倍位有ります、とても大きいのです】蟻蜜治虫
【そんなにでかい兵隊蟻ですか・ひょっとして、名前が在りますか】八市
【勿論名前が有りますよ・名前を呼ぶと必ず来ますよ】
【カストルとポルックスと言う名前です・実は双子の蟻何です】蟻蜜治虫
〖八市は蟻の話を聞いてから、蟻の部屋を見学して見ようかとも思ったが
今日のところは止めにした〗
〖目の前の大量の兵隊蟻の写真と話で気が滅入ってしまった〗
〖その日はそれで店を後にした〗
【失踪する犬と猫】
〖友達の金久が前に言っていた化け物とは、一体何だろうか〗
〖普通の兵隊蟻より500倍位大きい兵隊蟻の事だろうか〗
【写真にもビックリしたがそれだけでは無い、何かが在るのかも知れない
と思った】
【そんな或る日の事、近所の坂本さんの奥さんが玄関のベルを鳴らした】
【こんにちは坂本ですが、実は家の猫を探しておりまして此の子何です】
と 一枚の写真を見せた
『ここ一週間程家に戻って来ないものですから、あちこちのお家に
お伺い致しまして探して居るのですが、もし見かけましたら連絡して
頂きたいのです』坂本
『そうですか、それは心配ですね』八市
『写真を置いて行きますので宜しくお願い致します』と 裏の電話
番号を見せた』坂本さん
〖猫何て昔からふっといなくなるーと、思いつつも〗
『はいっ、解りました、見かけましたらお電話致します』と 返事した
〖それから数日後、近所の室内犬が2匹脱走した切戻って来ないと
飼い主が探す事が在った〗
〖近所の電信柱に2匹の室内犬の写真が張られて居た、下の方に
連絡先が書いて在った〗
〖最近の室内犬は高級犬が多いから、迷って居る犬を見て喜んで連れて
ゆくのだろうなーと思った〗
〖最近は金に成りそうだと見ると、何でもさらってしまうので恐ろしい
世の中に成った〗
〖数日後近所の溝口さんとばったり道で会った〗
『こんにちは』と 『こんにちは』
『実はですね家のラッキーが居なくなったのですよ』溝口さん
『ラッキーはいつも犬小屋に繋がれて居たのでは』八市
『そうなのですよ、繋いで居たのですが鎖だけか残されていたのですよ』
『それから散歩がてら、探して居るのですよ、サッパリ手掛かり
無ですよ』
『8年間も飼って居たのですがね』溝口さん
『家族も皆しょんぼりしゃってねー、やっぱり寂しいものですよ』
〖多数の犬とか猫とか行方不明に成って居ると町内会で噂に成った〗
【各班に注意喚起を促す回覧版が回って来た】
【高級犬に限らず雑種犬も同様に行方不明に成って居るらしかった】
【あちこちの電信柱に何枚もの・犬・猫達の写真が張られる様に成った】
【双子座の兄弟・カストルとポルックス】
〖八市はD・P・屋さんで蟻達の部屋を見学する事にした〗
『あの~・蟻蜜さん兵隊蟻の部屋を見学したいのですが、
どうでしょうか』
『ああ~・そうですか・いいですよ、もう少ししたら案内しましょう』
『双子座の兄弟・カストルとポルックスを紹介しましょう』蟻蜜治虫
『はいっ・ではこれに履き替えて下さい』と
〖長靴と懐中電灯を差し出した〗
『蟻は明るい所は苦手でして、部屋は暗くして有ります、懐中電灯は
見えにくい時だけ時々着けて下さい、なるべく刺激しない様に
して下さい』
【C・10号・∞】と表示して在る部屋のドアを開けた
【ドアを開けると120㎝四方の四角い部屋に成って居た・2重ドアに
成って居た】
【薄暗い照明で何やら足元がヒンヤリして来た・足元には20㎝位の深さ
で水が張って在った】八市
【目の前のドアを開けた】
【おお~っ!】八市は思わず声を上げた
【20畳の部屋の中央に四角に囲われた大きな穴が在った、その中には
兵隊蟻の大群がうじゃ・うじゃ・うじゃ・うじゃとうごめいて居た】八市
【しかも大きく盛り上がって蟻塚に成って居た・2メートル位の高さに
までも成って居た】八市
【勿論それらの表面も兵隊蟻だらけに成って居た】
【蟻蜜さん、この部屋全体で何万匹位居るのですか】八市
【そうですね、詳しく数える事は出来ませんが一億5千万匹位は居ると
思いますね・毎日80万匹ずつ産まれて居ますね】蟻蜜治虫
【カストルとポルックスは何処に居るのですか】八市
【今呼びますね】と口笛を吹いた
【ビュ~イ】【ピッピィ~】【ピッピィ~】独特な吹き方だ
【すると山盛りに成った蟻塚の中から一匹の大蟻が姿を現した】
【うわあ~!】
【余りのでかさに八市は思わず息を飲んだ】
【モンスター蟻だ・話では500倍位の大きさと言って居たが1000倍位は
有りそうだ】八市
【周りの蟻達を踏み付けながらこっちを向いた・触角が激しく動いて
少し首を傾げて居る・人間を観察して居る】八市
【蟻蜜治虫さんが口笛の吹き方を変えて鳴らした】八市
【ピッピィ~】【ピッピィ~】【ピュ~イ】
【モンスター蟻は静かに穴に引っ込んだ】
【今のが・カストルです】蟻蜜治虫
【冷静な行動と賢くて正しい行動が特徴ですね】蟻蜜治虫
【兵隊蟻達に人気が在ります・皆従いますね】蟻蜜治虫
【働き蟻の雌をレイプして、食料を強奪する様な事はしませんね】
【次の部屋に居るのがポルックスです】蟻蜜治虫
ドアに【P・13・∞】と表示して在った
【C・10号・∞】と 同様に2重ドアで入口には20㎝の深さで水が
張って在った】
【ドアを開けた】
【おお~っ・これは一体!】
【この部屋の蟻達は、カストルの部屋の兵隊蟻達と違って激しく早く
動き回り既にケンカを始めて戦って居た】
【大きな蟻塚が2つ在った、2つの蟻塚は2メートル程の高さに成って
ぐじゃ・ぐじゃ・ぐじゃ・ぐじゃと歩き回って居る】
【今正に右の蟻塚の蟻達と、左の蟻塚の蟻達が戦争状態に成って居た】
【良く見て居ると頭を嚙まれ首がちぎれた蟻・胴体が半分ちぎれた蟻等
無数に転がって居る】
【余り多過ぎて良く解らない・ぐじゃ・ぐじゃ・ぐじゃ・ぐじゃ
して居る】
【的を絞って観て居ないと良く解らない】
【蟻蜜さん決着はつくのですか、どうなるのですか】八市
【相手の兵隊蟻達を全部喰いつくした方が勝ちに成ります】
【女王蟻は毎日産卵して居ます、産卵の為に巣穴からは滅多に出て
きません】蟻蜜治虫
【80万匹のうち20万匹は食用として食べられてしまいます】
【ポルックスを呼び出しましょう】蟻蜜治虫
【ピュ~イ】【ピッピィ~】【ピッピィ~】
【右側の蟻塚の穴の方から先程のカストルよりもひと回り大きい
モンスター蟻が出現した、体の色は濃い赤茶色だ】
【穴から出ると行き成り、ポルックスは足元の兵隊蟻達を食べ始めた】
【ガギッ・グチャ】【バリッ・グチャ】【バリッ・グチャ】
【まとめて30匹位かみ砕いて居る・不気味な音だ】
【辺り構わず300匹位はあっという間に平らげた】
【八市の方を見ると激しく触角を動かして居る】
【酒井弥さん少し後ろへ下がって下さい、ちょっと警戒して居ます】
【その時突然ポルックスの口から】
【ピュシュー】 と 蟻酸が飛び出した
【何と3メートルも飛んだ】 もう少しで蟻酸が掛かる所だった
【カストルとポルックスの蟻酸は特に強烈ですから気を付けて下さい
目に入ると失明する可能性があります】蟻蜜治虫
【全てを食い尽くす悪魔の絨毯】
『酒井弥八市さん、偶に山登りなんか行ったりしますか、鳥達の死骸等
見た事在りますか』蟻蜜治虫
『山には時々行きますが、鳥の死骸は一度も見た事無いですね』八市
『そうでしょうね、鳥達はいつか力尽きて地面に落ちますが、その
死骸は全て蟻達が食い尽くして居ます、何でも食い尽くします』
『犬でも猫でも5千万匹位の蟻達が群がるとあっという間に死骸は
消えてしまいます・勿論イノシシ・鹿・猿等も喰いつくします』蟻蜜
『時間を掛ければ、骨にむしゃぶり付いて骨も消えます』蟻蜜治虫
〖3つ目の部屋は【C・P・99号・∞】と 表示して在った〗
『すみませんが、この部屋は特別室で見せる事は出来ません』蟻蜜
『新しい餌付けの実験中です、またの機会にして下さい』蟻蜜治虫
『カストルとポルックス・他の兵隊蟻達には餌として何を与えて
居るのですか』八市
『大体昆虫が主ですね、数が多いので手っ取り早く砂糖とか蜂蜜等も
混ぜて時々与えて居ますね』蟻蜜治虫
『砂糖とか蜂蜜は効果絶大で途端に動きが激しく成り、攻撃的に成り
死ぬまで戦いますね』蟻蜜治虫
『カストルとポルックスも同じ餌を与えて居るのですか』八市
『カストルとポルックスには特別食として肉を与えて居ますね、肉を
2時間程蜂蜜漬けにした物ですかね』蟻蜜治虫
『一匹に付き一回30g位ですかね』蟻蜜治虫
『一回に肉30gは可成りの大食漢ですね・蟻ですからねー』八市
【蜂蜜漬けの肉を食べると可成り興奮する様ですね】
【戦闘能力も可成り上がる様ですよ】蟻蜜
【それで蟻達に何を命令するのですか】八市
【まあー・そうですねー・ちょっとした事ですね・右へ曲がれ・左へ
曲がれ・こっちへ来い・そのまま待て・とかそう言う簡単な事ですね】
【それを見たいのですが、見せて貰えますか】八市
【そうですね、それでは【C・10号室】へ行きましょう】蟻蜜治虫
【カストルの居る所ですね】八市
【C・10号室】へ入ると口笛で呼び出した
【ピュ~イ】【ピッピィ~】【ピッピィ~】
【カストルが蟻塚の頂上に登った・下を向いて首を振った・右へ振ったり
左へ振ったり・斜めに振ったりした】
【その都度兵隊蟻達が整列し始めた】
【チュッ・チュッ】【チュッ・チュッ】と 聞こえる微かな声を出した
【何と、何千万匹の蟻の整列から大行列と成り、正に大きな絨毯へと
変貌した】
【大行列と成った兵隊蟻達は、カストルの首の動きに合わせて右へ
曲がったり・左へ曲がったり・ちょっと立ち止まったり・早足に成ったり
自在に動いた】
【兵隊蟻達の軍隊そのものだった】
【カストルの命令によって蟻酸も一斉に吐き飛ばした】
【ピュシュ~】【ピュシュ~】【ピュシュ~】【ピュシュ~】
【蟻蜜治虫は、数千万匹の兵隊蟻軍隊を操る総司令官の様な表情で
満足気に笑って居た】
【こうやって見て居るだけで満足しますね、付き合うと可愛いもの
ですね】蟻蜜治虫
【ポルックスの所はどうですか】酒井弥八市
【ポルックスの所は今日の所止めましょう】蟻蜜治虫
『あそこの部屋の兵隊蟻達は、整列して大行列に成ってしまうと
ポルックスの性格そのものに成ってしまうのですよ』蟻蜜治虫
『直ぐに軍隊行進が始まってしまうのですよ』蟻蜜治虫
『それにカストルの兵隊蟻達よりも10倍もの攻撃能力が在ります』
『そう成ると暴走してしまう可能性が高いのです、後の始末が大変
何ですよ』蟻蜜治虫
【別名・悪魔のプ~チンス~ク兵隊蟻軍隊と言って居るのですがね】
【いや~・ま~・冗談・冗談】と 蟻蜜治虫さんは笑って見せた
〖蟻蜜治虫さんに長靴と懐中電灯を返すとその日は帰った〗
〖八市は本当に冗談で済めば良いがと思った〗
【八市の気掛かり】
〖ひょっとして【C・P・99号】室の兵隊蟻達の餌付けの実験とは
蜂蜜漬けの肉の塊ではないだろうかと思った〗
〖もし、そうだとすると可成り凶暴な兵隊蟻に成長して居るのでは
ないだろうかと思った〗八市
【それを指揮するのがポルックスだとしたら、悪魔の絨毯と成って
この町全体を襲い出すかも知れない】八市
【いつあのD・P屋から兵隊蟻達が溢れ出るかも知れない】
【可成り心配に成って来た】八市
〖八市は2階の部屋からD・P・屋を見張るのが日課に成ってしまった
失業中の八市には好都合だったが〗
〖蟻蜜治虫さんの話では、カストルとポルックスは双子座の兄弟でも
性格は全く正反対だと話して居た〗
【ポルックスが悪魔だとしたらカストルは悪魔じゃ無くて、もしかしたら
天使なのかも知れない】
【確証は無いがカストルの態度を見て八市は何となくそう思った】
〖夜中にD・P屋さんの周りに油を撒き放火して、家諸共全焼させた
方が良いのか、しかしそう成ると放火殺人犯と成ってしまう〗
【それとも、カストルの兵隊蟻軍隊にポルックス兵隊蟻軍隊を全滅
させた方が良いかもしれないと思って来た】八市
【水責めにすると最初は良いが途中で溢れ出て来そうだ】
【やっぱり早いうちに、カストル軍隊に力を貸して貰うしかなさそうだが
ポルックス軍隊に勝てる見込みが在るのだろうか】
〖蟻蜜治虫さんに相談して果たして聞いてくれるだろうか、それが一番
問題だ〗
〖拒否されたら2度と店内に入る事は出来そうにもない、それに用心して
戸締りは可成り強固な物にするのに違いない〗
〖八市はそれと無く蟻蜜治虫さんの心の内を探る事にした〗
【圧倒的な強さ・悪魔のポルックス軍隊】
『こんにちは』と 『こんにちは』蟻蜜治虫
『ところで兵隊蟻達はまだ増え続けて居るのですか』八市
【そうですね、毎日産卵して居ますね、可成り増えて居ますね】
【女王蟻の交尾はどの様に行われて居るのですか】八市
【カストルとポルックスを見て何か気が付きませんでしたか】蟻蜜治虫
【暗くて良く解りませんでした】八市
【カストルとポルックスは大きな翅が生えて居ます、勿論女王蟻も
大きな翅が生えて居ますよ】蟻蜜治虫
【交尾は空中で行います】蟻蜜治虫
【夕方頃に交尾が行われて居る様です】蟻蜜治虫
【もう、5憶8千万匹位に成って居ますね】蟻蜜治虫
【餌の準備も大変じゃー無いですか】八市
【最近では色々と餌をやっていますね】蟻蜜治虫
【余り増え続けると兵隊蟻達の部屋も足りなく成りそうですね】八市
【そうですねー、兵隊蟻達の部屋を増築しないと間に合いませんね】
【少し兵隊蟻達の数を減らした方が良いのかも知れませんね】八市
【折角産まれて来たのです、殺す様な事は私には出来ませんね】蟻蜜
【火責め・水責め・何て可哀想だなー】蟻蜜治虫
【カストル兵隊蟻軍隊とポルックス兵隊蟻軍隊を戦わせて、数を
減らすのはどうでしょうか】八市
【そんなの最初から勝負は決まって居ますよ】蟻蜜治虫
【あっという間に、ポルックス兵隊蟻軍隊がカストル兵隊蟻軍隊を
食べ尽くしてしまいますよ】蟻蜜治虫
【数十倍の強さですからねー】蟻蜜治虫
〖確かに一時的に数は減るが、ポルックス兵隊蟻軍隊が残るのは
尚更危険だ〗八市
〖カストル兵隊蟻軍隊が、ポルックス兵隊蟻軍隊より強大なパワーを
付けないと勝つことは出来ないと言う事に成る〗
【ポルックス兵隊蟻軍隊が10倍の強さなら、カストル兵隊蟻軍隊は
30倍・40倍もの体力を付けないと勝てない】八市
〖この答えは、【C・P・99号】室に在ると八市は思った〗
【謎の部屋【C・P・99号・∞】室
〖そんな或る日、D・P・屋さんのカーテンが閉まってから6日が
経って居た〗
〖店の休みは良く有ったが2日~3日位が通常だった〗
〖どうしたのかなー・と遠くから眺めて居るうちに14日も経って居た〗
〖八市は少し心配に成り、店のカーテンの隙間から覗いて見たが人影
らしき者は見えず店内は静かに成って居た〗
〖店の裏口に回り裏木戸から侵入して裏口のドアノブを回して見た〗
〖当然の事だが鍵は掛けられていたが、人の気配は感じられなかったので
鍵は壊して侵入した〗
〖家に入り先ずは長靴と懐中電灯を探した・目の付く所に置いて有った〗
〖家の中は前と同じ様に薄暗く小さな灯りが付いて居た〗
〖歩き回るのには支障は無かった〗
〖先ず蟻蜜治虫さんを探す事にした、兵隊蟻達の部屋以外の部屋が
蟻蜜治虫さんの部屋だ・ドアに【治虫】の表示が在る〗
〖そっと開けて見た、灯りを付けると整理整頓された部屋だった〗
〖やはり壁一面に蟻の写真で一杯だった〗
〖つい最近まで居た様な気配だったが、家中を探しても蟻蜜治虫さんの
姿は何処にもなかった〗
〖一体何処に行ったのだろうか、まさか大事な蟻達を残して旅行する訳
でもないし〗
【姿が消えてしまって居た】
【八市は日頃から気に成って居た【C・P・99号】室の部屋を見る
事にした】
【他の兵隊蟻達の部屋と同様に入り口には水が張って在った】
【懐中電灯でゆっくり中を照らして光を移動させた・真ん中に四角に
囲った兵隊蟻達の場所が在った】八市
【兵隊蟻達は何やら黒い塊に群がってが、他の兵隊蟻達の部屋に
比べると数は少ないがそれでも500万匹位は居そうだった】
【それに他の兵隊蟻達よりも10倍位大きく力も漲って居た】
【周りを見渡すと蓋付きのポリバケツが、順序良く並べられ20個位
置いて在った】
【八市はポリバケツに近づき蓋を取って見た・蜂蜜漬けだったが黒い
塊がうずくまって居た】
【しかし、良く見ると小型犬が丸く成ってうずくまって居たのだった】
【おおっ!】【これは!】
【犬と猫が丸ごと蜂蜜漬けにされて在った】
【八市は気絶しそうに成ったが、気を取り直してひとつずつポリバケツの
蓋を取って全ての中を見た】
【余りの惨さに愕然とした】
【蟻蜜治虫さんの言って居た特別な餌とは、犬達と猫達の蜂蜜漬け
だった】
【これが兵隊蟻達の強大なパワーの秘密だった】
【何と恐ろしい事だろうか】
【今この部屋で兵隊蟻達に食べられて居るのは小動物なのか】
【八市は思わず両手を合わせて拝む事にした】
【ポルックス兵隊蟻軍隊が居る【P・13号】室のドアをそっと開けた】
【部屋の中央の穴の中で、2億万匹と思える兵隊蟻達が何か大きな塊に
群がって居た】
【暗くて良く見えない・八市は懐中電灯でゆっくり照らして見た】
【随分と大きい塊だった】
【おおっ!これは人間だ!】
【あっあー!蟻蜜治虫さんだ!】
【足を滑らして中に落ちたらしい・兵隊蟻達に食べられて居た】
【バリッ・ガリッ】【グチャ・ガリッ】【バリッ・グガッ・グチャ】
【ガリッ・グチャ】【バリッ・ガリッ】【グチッ・グチャ・バリッ】
【クチャ・クチャ】【ベロッ・ベロッ】【クチャ・クチュ・クチュ】
【P・13号】室全体に人間を食べる音が響いて居る】
【兵隊蟻達の群れの形が人間の形に成って居た】
【頭部と思われる所で、ポルックスが脳味噌をすすって居た】
【チュ~チュ~チュ~ィ】【チュ~チュ~ィ・チュ~ィ・チュ~ィ】
【最強パワーアップ・カストル兵隊蟻軍隊】
【何と言う恐ろしい光景だろうか、警察に通報するべくスマホを手に
取ったがもう一人の八市が止めさせた】
【カストル兵隊蟻軍隊をパワーアップしてポルックス兵隊蟻軍隊と
戦わせて見るのはどうだろうか】もう一人の八市
【その日からカストル兵隊蟻軍隊に牛肉の蜂蜜漬けをやり続けた】
【ポリバケツの犬猫達は全員丁寧に埋めました・両手を合わせて拝み
ました】八市
【皆・天国で幸せに暮らしてね】八市は思わず呟いた
〖この時点で双方合わせて兵隊蟻達の数は18億を越えて居る、余り
時間が無い7日もしたら28億を越えて更に増え続ける〗
【決戦の日】
〖2週間もすると、カストル兵隊蟻軍隊は見るからに体は大きく成った〗
〖ポルックス兵隊蟻軍隊よりも3回り位大きく、体の動きも素早く成り
スピードも乗って来た〗
【もう一週間、蜂蜜漬けにした肉の塊をやる事にした】八市
【蟻蜜治虫さんのマネをして口笛を吹く練習も何度も繰り返した、餌を
やる度に口笛を吹いた】八市
【兵隊蟻達の数は双方合わせて38億を越えた、カストル兵隊蟻軍隊は
八市の吹く口笛を理解した様だった】
【カストルもポルックスより3回り位の大きさまで成長して居る】
【八市はプ~チンス~ク兵隊蟻軍隊には餌はやらなかったが、人間を
喰ったので何時までも動いて居た】
【7日程するとプ~チンス~ク兵隊蟻軍隊は少しずつ動きが鈍く成って
スピードが落ちて来た】八市 【兵糧攻めが効いて来た】
【カストル兵隊蟻軍隊は、毎日蜂蜜漬けの肉の塊を喰って居る体力の
差が大きく成って来た・身体も大きく力がみなぎって来ている】
【プ~チンス~ク兵隊蟻軍隊13億匹・カストル兵隊蟻軍隊25億匹だ】
【よーしっ・今日だ】八市
【プ~チンス~クが居る部屋の水を抜いてそっとドアを開けた】八市
【後ろを振り向くと13億匹のカストル兵隊蟻軍隊が大行列を作って、
カストルの指示を待って居る】八市
【カストルは八市の合図を待って八市の顔をじっと見て居る】
【八市はドアの側を離れると、あらかじめ作っておいたガラス窓から
中の様子を覗く事にした】
【上から飛びかかる様に、蟻塚の周りに在る四角い壁に四方から板の
傾斜を緩やかに取り付けて在った・表面がザラザラして居る】
【口笛を吹くと、プ~チンス~クに気付かれてしまうので手で
合図をした】
【八市の手が降りた】【突撃の合図だ】
【カストル兵隊蟻軍隊が黒い絨毯と成って、弱ったプ~チンス~ク軍隊に
一斉に上から飛び掛かった】
〖不意を突かれて油断して居たプ~チンス~ク軍隊は、突然の攻撃に
逃げ惑うばかりだが〗
〖元々気性の荒い性格なのでそれでも立ち向かって来た、まだ6億匹位
が戦って居る〗
〖カストル兵隊蟻軍隊も5億匹位食われてしまった〗
【遂にプ~チンス~ク軍隊の大将プ~チンス~クが現れた】
【弱った身体とは言え、小さなザコ共が群がってもプ~チンス~クは
ザコ共の首を喰い千切り・胴体を食い千切り・暴れて収まらない】
【ザコ蟻では全く歯が立たない】
【カストルは残りの12億匹の兵隊蟻軍隊を突入させた】
【それでもプ~チンス~クはザコ共を食い千切り・喰い散らかした】
【プ~チンス~ク兵隊蟻軍隊は流石に10万匹位まで減って来た】
【プ~チンス~クは1匹で2億匹位を食べ散らかした】
【疲れた様子も全く無い】
【カストルとの一騎打ちに成った】
【カストルとプ~チンス~クは昔戦った事が在った】
【その時はプ~チンス~クが勝って居た】
【しかし今のカストルは以前とは全く違う強大なパワーを手にして居た】
【カストルがプ~チンス~クに飛び掛かった】
【2匹はそこら中を何十回、何百も転げ回りお互いに噛みつき在った】
【カストルはプ~チンス~クを投げ飛ばすと、透かさず首を食い
千切った】
【プ~チンス~クの胴体は兵隊蟻達に食われてしまった】
【プ~チンス~クの兵隊蟻達は全滅した、1匹残らず食われてしまった】
【プ~チンス~クの首だけはカストルの兵隊蟻達に担がれて行進した】
【カストル兵隊蟻軍隊は整然と隊列を作って【C・10号・∞】の
部屋に行進して行った】八市
【数日後店に侵入してカストル兵隊蟻軍隊の部屋のドアを開けた】八市
【あっ】 と 声を上げてしまった
【もぬけの殻に成って居た・蟻の子1匹も居なかった】
【好物の牛肉の蜂蜜漬けが残って居た】八市
【店中、処を探しても蟻1匹も居なかった】八市
【一体何処へ消えてしまったのだろうか】八市
【カストル・最後の命令】
【更に数日後・町中が騒ぎに成って居た、近所の小山川に20億匹位の
蟻の死骸が浮いて、流れて居た・人集りが出来て居た】
【八市は駆け付けた】
【20億匹位の山に成って静かに流れて居た・まるで兵隊蟻達の葬儀の
様だった・八市には見覚えが在った】八市
【紛れも無いカストル兵隊蟻軍隊の精鋭達だった】
【川に飛び込んで自殺をする様に命令したのは・紛れも無いカストルだ】
【此の兵隊蟻達の中にはカストルらしき蟻を見つける事は出来なかった】
【賢いカストルは増え過ぎた兵隊蟻軍隊の、運命の行く末が解って
居たのかも知れない】八市
【八市は両手を合わせた】
【良くやってくれたね・カストル】
【お前らしいよ・カストル】八市の頬には涙の粒が光って居た
【カストルのマネをして首を傾げて見た・吹いて見た】
【ピュ~イ・ピュ~イ】【ピッピィ~・ピッピィ~】
【エンディングテーマ曲が流れます】
【石川セリ】【八月の濡れた砂】
終わり
種子火
【此の物語はフィクションです・登場した団体名・個人名は存在して
居りません】
【登場人物】
【酒井弥八市】【蟻蜜治虫】【伊集院金久】
【近所の坂本さん】【近所の溝口さん】【溝口さんの飼い犬ラッキー】