きみのながれぼしになる
むかしむかし
あるところに 親なしの女の子が寒い冬の夜空を見上げておりました
「しあわせになりたいな…」
女の子がそうつぶやいた時 星が一つ夜空を横切っていきました
「どうなったら しあわせなの?」
急に後ろから声をかけられて振り返ったそこには 女の子の幼なじみの男の子がいました
「わたしのことを守ってくる家族がいて あたたかいお家があって おいしい食べ物があったらしあわせだと思う」
「そうなんだ じゃあ ぼくが君の流れ星になるよ」
そういってにかっと笑った男の子は それから毎日一生懸命働き食べ物を買って帰って来ては女の子にわたし
働きながら勉強もして資格を取って 時間はかかりましたがお金を貯め家を買いました
その日 男の子は女の子に「僕の家族になってください」とお願いをして
二人は幸せに毎日を過ごしていました
そんなある日 国で戦争が始まり 男の子も出征することになりました
「君をもっと幸せにするために 功績をあげて 無事に帰ってくるから」そういって男の子は出ていきました
遠い離れた地でこの国を守るために人々が戦争をしているため 女の子のいる場所では戦争が始まっているなんて全く感じることはありません
暖かい家もまだあり 食べ物を買うお金も 声をかけてくれる近所の人もいて 女の子は困ることもありません
でも しあわせではないのです
男の子がいない現実と 失うかもしれない恐怖で 暖かい日差しが降り注ぐ中でも暗闇で暮らしているようでした
そんな生活を続けて初めて女の子は 自分が男の子に幸せにしてもらっているだけの存在であることに気が付きました
そしてそんな状態が幸せとは違うことにも気が付いたのです
まず最初に 女の子は仕事を始めました
家を守るためにお金が必要です
男の子が帰ってきた時に安らげる家を おいしい食べ物が食べられるように食料を調達するためにも
一生懸命に働き始めたころ 町では戦争孤児が増えてきていました
女の子はかつて男の子が自分にしてくれたように食べ物を孤児に分け与え始めました
その数はどんどん増え 一人ではどうしようもなくなってきた時
女の子は家にある本を読んで独学し 男の子と同じように資格を取り そして孤児院の経営を始めました
大変な事ばかりでしたが 子供たちにご飯を食べさせるために 雨風にさらされず眠れる場所を用意するために 女の子はがむしゃらに働きました
そんなある夜 ふと ようやく女の子は心に暗闇を感じていないことに気が付きました
男の子がいなくなってから 夜空を見上げては無事に帰ってくることばかりを祈っていましたが
その夜 女の子は空を見上げてこう祈りました
「健康な身体を与えられたことに感謝します 私に幸せをくれた人と同じように幸せを分け与えられるようにお助け下さい
無事に帰ってきたら 私がもっと幸せにしてやる」
女の子がそうつぶやいた時 星が一つ夜空を横切っていきました