幼稚園の頃に
「年長さんの劇は、ヘンゼルとグレーテルをやります」
先生がそう発表した。
ボクの幼稚園では、年少、年中さんは、踊り、年長さんは、劇をやることになっていた。
ヘンゼルとグレーテルかあ、確か、お菓子の家に遊びに行っておおかみに食べられそうになるやつだったよね…
あれ?おばあさんだっけ?
それをヘンゼルとグレーテルがやっつけて…ってやつだった。
いいなあ、これを劇にするのかあ。面白そう。
ヘンゼルが確か主役だったっけ?
ヘンゼルとグレーテルとおばあさんくらいしか役はないよね…
ヘンゼルくらい出しゃばるのはちょっとな…
グレーテルってやっぱ憧れる…
お兄ちゃん想いで、素敵だよね!
グレーテルになりたい!
グレーテルになったら、女の子になれるかな…?
「では、役を決めまーす。ヘンゼルやりたい人~」
『はーいはーい!』
たくさんの男の子の手が挙がった。
当然ボクはグレーテルをやりたいので、挙げていない。
「ハーイ次いきまーす。グレーテルやりたい人~」
そしてボクはここで挙げた。
いくつか女の子の手が挙がっていた
「みき、、グレーテルは女の子の役だよ」
「え…そうなの…」
ボクはひどく失望した。
じゃんけんで負けるならともかく、そもそも立候補することも出来ないなんて…
ちょっと納得がいかなかった。
とりあえず、他にも役があったのでボクは木の妖精に決まった。
そして、妥協した。
なんだかんだあって、衣装が届いた。
木の妖精の衣装は、緑色の、キラキラしたものだった。
でもそのときも、そのズボンの衣装を着るとちゃんと理解はしていても、木の妖精の、女の子のスカートの衣装がすごく羨ましかった。
きっと、あんなのを着られたら、更にうきうきするんだろうな…。
そういえば、前にもこんなことがあった気がする。
年中のとき、男の子は嵐のHappinessを踊った。
女の子は、Perfumeのチョコレイト・ディスコを踊った。
ボクたちが終わった後に、チョコレイト・ディスコを見ていたとき、そのときも、ひどく女の子を羨んでた。
本当はあのステージの中でやりたかったなあ…っと少し思っていた。
あの感覚にちょっと似ているかもしれない。
一緒に遊ぶのは、大抵女の子。
別にだからといって深い意味はない。
結局、劇はちゃんと成功した。
そして、ボクは結局のところ、大満足だった。
だから、悔いはなにもない。
でも、その数週間後には、入院をしたんだけど。
ボクは昔から病気がちで、結構な頻度で入院を強いられていた。
喘息持ちだったから、かもしれない。
とにかく、運動するのも体力が全然なくて、出来なかったから、音楽をやっているんだ。
入院をしている間は、看護師さんがボクを何度も訪ねてきてくれる。
入院は孤独でつまんないと思われがちだが、実際、看護師さんとたくさんおしゃべりできて、楽しい。
入院中にいつもお母さんが買ってくれたものがあった。
それは、プリキュアのふりかけ。
プリキュアは、すごい好きで、プリキュアの変身ベルトなんかも買ってもらったこともある。
ボクの一番好きなのは、レモネード!
なんか、レモン好きだし、おいしそうじゃん、
それで、いつも、そのふりかけで毎朝を迎えていた。
「あー!かわいい!プリキュアだー!」
看護師さんが言ってくれた。
「みきちゃん、プリキュア好きなの~?」
「うん!大好き!いつも見てるの!」
「そうなんだ~、どのキャラが好きなの?」
「キュアレモネード!」
そんな感じで、ボクの話をいつも聞いてくれる。
優しい看護師さんたちだなあ。
ちなみに、ボクは、ライダーものは全く興味がない。
面白いと思ったこともないし、第一自分から見ようとも思わない。
というか、嫌いなくらいだ。
男の子は仮面ライダー、女の子はプリキュア、と決めつけられるのは、なんかやっぱり違うような気がしてる。
あんなの、何が楽しいんだか。
男の子はほとんどの人がヒーローになりたがっている。
ボクはといえば、割と消極的で、中遊びは好きだなあ。って感じ。
みんなそうだと思うけど、「かわいい」って言われると、嬉しいよね。
かわいいものってやっぱり良いよね
おうちにもぬいぐるみ、たくさんあるし、もふもふしたものとか見ると、つい目を輝かせちゃう。
きらきらしているものが好きなのかわかんないけど、 そういう、色とりどり~なものが好きだったりもする。
淡い色が好き。
男の子は、濃い青とか黒とかそういうものが好きな子が多いんだけど、ボクは、水色とか、ピンクとか、淡い系の色がすごく好き。
最近までは、青全般が好きだと思っていたけど、水色の方が好きなことに、最近気づいた。
まあ、まだ子供なんだし、趣味嗜好は、そういう人だって全然いるだろう、っとまとめちゃえば、それまでだから、そんなに気にしないでもいいんだけど。
でも、ボクは、「女の子みたい」って言われると、なんだか照れ臭くもあり、けど、すごく嬉しい。
「男の子なんだから」という言葉は、ものすごく腹が立つ。
そういう自分は、特別、ともちょっと思っている。
ボクは、音楽をやっている。
三歳から、聴いたり歌ったり、楽しく音楽を学んでる。
そのグループは、女の子がほとんどで、とっても楽しい。
本当に、楽しく学ぶことが出来る!
ボクは、女の子を何かと羨んでいる。
でも、まだ自分のことがよくわかってないから、こういうことを考えるのはもっと後でもいいんじゃないかな。
そう思いながらも、やはりどこかずっと気になっていた…