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6.阿久乃城ぜめ

 オーク軍とゴブリン軍の協力を得て、阿久乃城郊外まで迫ったものの、敵もさるもの。激しい反撃にあって、味方の損害ばかり多く、敵への損は少ない。

 天下第一の要害、阿久乃城には、仇である勇者の徳山と不忠者、箕田ウルスがいるというのに、あな口惜しや、彼らに小指一本触れることができない。

 ここで、空太郎、かねてからの軍略を実現すべく、一人、山奥へ向かう。

 数日、不眠でひたすら滝に打たれる。

 空太郎の軍略とは、強靭な精神力をもって、勇者徳山のチートスキルを打ち破ることだ。勇者徳山のチートスキルは、<催眠術>。この術にて、人心を惑わし、箕田ウルスを虜にしたのだ。

 バンカラ由来の強靭な精神力を、滝行をもって再度打ち直す。焼きを入れた刃物はより鋭くなるように、とにかく精神力の向上を図る。

 十日ほど不眠不動で滝に打たれた頃。

 流石の、空太郎も、疲労困憊。心は砕けていないが、すでに肉体は限界を迎えている。

 そんな時だ、川の水面を一人の老人がゆらりゆらりと歩いてくる。

 そんな馬鹿な現象があるわけがない。水面を人が歩くなんてと、空太郎が思っていると。その老人は、一瞬のうちに空太郎のもとまで移動している。

 走った様子もない。これが仙人というものだろうか。

「儂は上泉信綱という者じゃ。仙人となり、俗世どころか、この世を離れ、異世界にて修行を積んでいるところ」

「上泉信綱殿っ?元亀天正の人間が生きているわけがない。嘘を言うな」

「仙人になったと言っとるだろう。仙人になれば、世界の行き来も自由、寿命なんかもない」

「その仙人様が、俺になんの用だ。あさりの砂抜きをするのと同じで、滝行で清められた頃合いを狙って俺の臓腑でももらいにきたのか」

「そう早ちとりするでない。儂の近くで、同郷の者が修行に取り組んでいるからの。ちと、手助けしてやろうと思うたのじゃ」

 上泉信綱は、剣をサッと達人の手つきで抜くと、空太郎が反応する暇もなく、おでこに剣の刃を当てる。それで、大根の皮むきをするかのように、薄皮一枚さっと、切り落としてしまった。

 剣豪に脳を切られては、俺の人生も終いだと、空太郎、慌てて額をさするがなんともない。額が、妙につるつると、漆器のように滑らかだ。

 空太郎が、川面に自分の姿を映してみると、額に鏡ができている。

 空太郎、これが伝説の剣豪のなせる技かと度肝を抜かれて顔をあげると、すでに上泉信綱公は消え失せていた。


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