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5.ウサギ狩り

 ケモノというのは、偉大だ。人間には消えつつある、野生の力を持っている。

 空太郎とマリンを背に乗せたみつ子は、あれほど苦戦した道のりを、スイスイと進み、半日で森を抜けた。

「マリン、どうした。歯がカチカチと鳴っているぞ。風邪でも引いたのか」

「いたって健康よ。どんな健康な人でも、ケロベロスの背中に乗って移動なんかすれば、全員同じ症状を見せるわ」

 どうも、マリンは大型犬が苦手らしい、と空太郎は合点する。

「幼い時分に嫌な思い出でもあったのか。でも、見てみろ。みつ子は随分と澄んで優しい目をしているじゃないか。そこらの俗人より、よっぽど聖人君子だと見える」

「イヌは大好きだったけど、今日から嫌いになりそうだわ……」


 森を抜けて、数刻平野を進む。

 すると、丘の向こうから鬨の声が聞こえてくるではないか。

「ややっ、いくさかもしれん。行ってみよう」

 空太郎は、みつ子に声をかけると、このイヌは随分と知能が発達しているようで、主人の意に答えて、駆け出した。

 

 丘の眼下では二つの軍勢が、睨み合っている。

「あれは!私たち魔王軍のゴブリン軍団とオーク軍団ではないか。どちらも父上を支えた忠臣たち。なぜ彼らが争っているのだ!」

 二つの軍団は、すでに牽制のために、矢をひゅんひゅんと飛ばし合い、前面では剣を研いだ勇士たちが突撃の準備を始めているではないか。

「こりゃあ、ダメだ。争っちゃ、いかん」

 空太郎、みつ子に逆落としの坂を全力で下らせると、すぐさま二つの軍勢の間に割って入る。

 突然の、猛獣ケロベロスと大男の乱入に、両軍ともにひるみ。ともかく、臨戦の緊張は解けた。

五風林ごぶりん家と大久保おおくぼ家の両大将よっ!貴殿らは、魔王の忠臣と聞く。それが何故に争う!」

 ゴブリン側から、一人の緑色の男が出て、告げる。

「我らが、我が亡君の仇を討とうとするのを、このオークどもが邪魔をするのよ」

 すると、オーク側からも大将と見える、立派な鎧を身にまとった筋肉隆々の肥えた男が出る。

「何をっ、まずはアクノ城を奪回するのが、先決だ。先代の願いは魔王の存続にある。仇を討つのに全力を尽くしてしまえば、それだけで我々は滅びてしまう。まずは拠点の確保だ」

 両大将はにらみ合い、緊張の度合いは再び高まる。

 空太郎は、みつ子の背から降りると、両軍の陣取る間に寝そべった。

「この喧嘩、俺が預かった。双方に、一分の理あり、互いに争っちゃいけねえ。争えば、得をするのは、仇である勇者、徳山のみよ。この調停に、文句があるなら、俺、板野空太郎を殺してからにしなせえ。さあ、一同に俺の命を預けた。ひと思いに殺しておくんなせえ」

 さあ、殺せ。俺を殺してから、殺しあえ。

 天に空太郎の叫びがこだまする。

 一人の兵士が武器を置いた。それにつられて、我も我もと兵士達は武器を下ろした。

 空太郎の説得に押されて、結局、ゴブリン側、オーク側ともに武器を下ろす。

 だが、ゴブリン大将とオーク大将はやはり納得していない。

「空太郎とかいうの、君の勇気には敬意を表すが、勇者の仇とアクノ城奪回の問題はどうするのだ。君に喧嘩を預けたからといって、問題は解決していない」

 知的な雰囲気を漂わせる痩せた小男のゴブリン大将が、空太郎を値踏みするように質問する。

「徳山の勇者は阿久乃城にいるんだ。ここを攻め落とすついでに、徳山も殺してしまえばよかろう」

「二兎追うものは一兎も得ずと、昔から言うぞ」

 オーク大将が、ゴブリン大将の発言を補足し、空太郎を責め立てる。

「俺は昔から、兎狩りが得意だ。二兎追いながら、三兎仕留めたこともある。その名人が、こうしていっているんだから間違いない。ともかく、俺に任せることだ」

 こうして、空太郎が軍略を話し始めると、両大将ともに納得し、空太郎への協力を誓った。


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