8,
それは脱出艇というより小型の貨物船に見えた。僕は一人二人程度しか入れない宇宙史最初期のシャトルみたいなものを思い浮かべていた。しかし、レドーム近辺が船になるほど200kmもある空母は痩せ細ってはいないようだった。
一応僕はフロントガラスの中を確認する。確率は低いにしても、中身が火星の兵士だとも分からない。並走しながら隣をのぞくと、緘黙した士官たちが見えた。迷彩と同じ緑色の軍服。所々に金色の装飾具をつけている者もいる。
フロントガラスにスラスターの光が混じる。マルファスが前方をすれすれに飛んでいくと、軍人のひとりが憔悴し切った顔をあげた。脂汗の滲む顔についた瞳孔が恐怖のために縮んだ。
これ見よがしに船の前方を飛びながら誘導プログラムを起動する。するとスラスター・ウイングの末端にある電灯が暗黒の中で光の道を作る。あとはただ、宇宙船に向かえば良い。
船の外側へ開いたガレージの突起に足を引っ掛ける。すると床が引き戻されながら重力がついていく。人工筋肉の檻が外れ、僕はデーモンの支配から自由になる。ちょっとの間なら重力で空気は留められているので、窒息死の危険性はない。空気塞栓症になるより、マクスウェル機関が壊れる方がずっと先だ。
感覚抑制によって押し込められていた感情と感覚が戻ってくる。ひどい倦怠感と不快感。そりゃそうだ。耐Gなんて考えず、音速を超えたスピードで戦闘なんてしたのだから。
デーモンにはリキベントシステムと重力制御が付けられている。人工筋肉が体を締め付け、リキベントが血液の代わりをして、重力で体を慣性から守ってようやく人間は悪魔に乗れている。
戦闘機よりもずっと無茶な軌道ができるデーモンのそれが働かないと人間はこんなことになるという目をしながら、僕はバケツに頭から突っ込んだ。目の前に何があるか分からない。何の音が鳴っているかも。鼓動だけがただ聞こえる。心臓が急激に脳へ血液を送っている。
もしかしたら、ストランドを撃ち込まれた人間はこうなるのではないかと思うような痛み。それが頭の中を支配する。脳の血管が弾けないことを祈りながら、僕はファインマンの足首を掴んだ。
「吐きそう」
「もう吐いてるだろ」眼上の影が事もなさげに言う。どうやって僕がそれをファインマンだと断定したのか、まるで分からない。
「吐いてない。ファインマン。10割あんたのせいだけど」
「謝らないぞ。トロッコ問題みたいなものだ。君がやらなければ私は死んでいた。だから君がやる必要があった」
「僕の生死は?」
「君は兵士だ。命を投げ打つのが仕事だ。自分の生死なんて考える必要があるのか?」
彼の答えになぜだか僕は納得してしまった。そうとも。僕はトロッコを少ない人間の方に向けなければならないし、人数の少ない船は沈めなければならない。論理的にどうであれ、取捨選択をしなければならない。たとえ切り捨てるのが自分であっても。
兵士は常に合理的であるべきで、僕はそれについて忠実だった。もしこの船の人間を助けられるなら、僕は切り捨てるべきであると心のどこかで思っていた。
それはそうとして乗るたび人が死にかけるようなものを作るのは技術職として責任問題だと思うけれど。
「話を逸らさないでくれ。あんたが殺人機械に仕上げなけりゃ良かっただけだ」
「もちろん。ただ、君がオフュークスみたいに殴るかと思ったのでね」
彼は弱々しい、しかし今の僕には十分な力で手を振り払った。それ以上何かを言うことは諦めた。気分が悪い。
ようやく視界が戻ったのは医務室に引きずられてからだった。のたうつような血流と、二日酔いの朝のような頭痛はまだ続いている。
僕はベッドの中で脱出艇にいた人間たちのことを聞いた。宝箱の中身はすし詰めになった地球同盟軍の士官たちだったらしい。僕は軍服に詳しくないけど、肩章の立派さからそいつらが階級の高い人間たちだと予想していた。彼らは指揮権を行使し、臨時的にエングラム社に戦闘行動を行わせるらしい。
しかし、僕は相変わらず悲観的だった。彼らが髭の中の仰々しい口を開けたとして、僕たちに何をいうのだろう?命令できることなんて殆どない。しかも、それによって何か変わることもない。遅かれ早かれ、あの光の中に吸い込まれるだけじゃないか。
その男が来たのは太陽が沈み始めた頃だった。より正確に言うなら、火星時間17:06。火星の夕焼けはいまだ青い。
火星の大気が地球と同じになったのに、なぜ青いかは解明されていない。まるで地球と火星は分かたれたものであるとでも言うかのような蒼白さに火星が染まっていく。
見慣れたものに対してそうするように、火星の首都が青い太陽によって飲まれていく様を男は黙って眺めていた。殺風景なブリーフィング・ルームでは、それぐらいしか見るべきものが無かった。それも少しの間だったかもしれない。神経質そうに、顎に手を置いたまま話し始めた。
「作戦を説明します」
「作戦?たった二人のデーモン乗りと貨物船に?」
オフュークスが苛々した態度を隠さずに言う。できることなら僕もそうしたいが、頭痛がまだ続いているせいで喋りたくない。
「私は地球同盟宇宙軍中尉、ジョン・アダムです。地球間同盟法第三十二条を行使し、臨時的にエングラム社の指揮を行います」
ジョン・ドゥとニアミスしたような名前だな、と僕は思った。実際の所、その馬鹿らしい例えは的を得ていた。彼の目の下には深い隈が刻まれ、目は緊張と疲労のために見開かれている。身元不明の遺体のゾンビ、レブナントのような精気のなさ。
典型的なPTSD、またはPSSDの人間に似ていた。たとえ症状が同じだったとしても、それが一ヶ月以上続かないとPTSDとPSSDには認定されない。
チッ、という舌打ちの音が楽器のように鳴り響いた。
彼はちらりとオフュークスを見たが、咎めもしなかった。無視というより諦めに近い。ジョンは一度閉じた唇をふたたび開いた。
「申し訳ないが、質問と挑発に答える暇はない」その口調には一種の自棄が宿っていた。
「は。それには同意する。こんな所からはとっとと逃げた方がいいだろう?自殺のための作戦など放棄しろと、今すぐあの張りぼての勲章をじゃらじゃら付けた奴らに進言してこい」
「命令だ。命令なんだ」
ジョンは拳銃をゆっくり抜き、オフュークスに銃口を向ける。焦点の定まらない目を向けて狙いを定める真似事をする。彼女は動揺さえせずくだらない、の音節を作るために唇を動かそうとした。それよりも素早く彼は続けた。
「ただ」
「ここから逃げたところで結局は変わらない。恐らく第二次攻撃隊に回されるだけだ。そしてあの光に飲まれるか、胸に銃弾を撃ち込まれる」
彼は一瞬窓の外に目を向けた。ジョンが見ているかどうかはわからないが火星はその輝きを収め、黒々とした面を見せていた。銃口は伏せられていた。
「結末が同じなら、俺は少しでも生きながらえる方を選びたい。そしてその道は今しか辿れない」
「つまりあんたは、この状況を打開出来ると言いたいのか?」僕はそう尋ねた。
「ある意味では」
彼は狂人のような顔のままそう言った。それが自棄であるのか、勇気であるのか僕には判断がつきようが無い。しかしどちらでも良いとも思っていた。
概ね僕が考えていたことは彼が言ってしまった。地球同盟は物量戦を仕掛けるだろう。これは推量でも何でもなく、一番確実な勝ち方だ。あの光はノア一個分程度は簡単に崩してしまう。ただそれだけだ。兵士が一人倒れても、また一人送ればいい。
今日無くなった空母の数ぐらい、すぐに地球同盟と他の星たちが生産するだろう。そしてより多くの空母で包囲すればいい。そうすれば、そのうちのいくつかは火星に辿り着ける。
その作戦を地球同盟が選ばなかったとしても、小型艦船によるゲリラ戦を仕掛けて宙域を封鎖すれば勝手に火星の資源は尽きるだろう。
もちろんどっちになっても、前線に送り込まれるのは僕たち傭兵だ。多くの犠牲を払ってでも勝つのが地球連邦のやり方で、僕たちはその犠牲になる。
「よく啖呵を切れたものだ」
銃口を向けられたまま彼女は笑った。非常に扱いやすくて結構だ。直情的、感情的、傲慢。そして兵士としては一級品。僕は彼女のことを分かった気になった。
確かに彼の言動には何かがあった。狂気のような、魔術的なものが。
隣の人間を見ていた目を正面に戻すと、紫煙を吐き散らす人間がいた。宇宙船の中でそんな事するのは一人しかいない。ファインマンだ。彼は科学軍事特別顧問とかいう訳の分からない役職を振りかざして、船の中でタバコを喫うという暴挙に出ている。
煙が宙に舞い、途中で切れてなくなった。ナノマシンによって煙は空中にできた球の中にとどまっている。それがナノマシンが許容できる煙の領域なのだろう。それでもその膜を突き破ってしまうのでないかと思ってしまうほど、彼は凄まじいペースで紙巻きを消費していた。震えた手が灰をゆり落とすたび、灰皿に灰が降り積もっていく。
苛ついている、または恐怖している、というふうに彼はタバコの白くなった先端を灰皿に落とした。まるで疲弊した人間のように。それは初めて見た、ファインマンの人間らしい部分だったかもしれない。僕は彼のことをアメリカンスピリットとジャックダニエルを消費するための機械としか見ていなかった。
「馬鹿らしい。私がそんな言葉に踊らされるとでも。お前は人々を死へと扇動したいだけだ。ちっぽけな名誉のために……」その言葉は怒りというよりも恐怖のために震えていた。
「全てはさっき言った通りだ。ファインマン。あなたに信用してもらわなくとも俺の仕事は変わらない。よりよく死ぬためにこの二人を動かす」
そうとだけジョンは言うと、プロジェクターを起動した。反対する人間にかまけている気は無いようだった。
青白い線で描かれた火星が宙に浮かぶ。その周りには多数の線と点が蠢き、生まれ、そして消えていく。僕たちの船が何処にあるのか分からないほどそれらは大量にあった。
「これは地球から観測された火星付近の重力反応だ。見ての通り大量の反応がある。これが火星軍にしても地球軍にしても、あの光……便宜上『重力砲』とでも呼ぼうか。重力砲の撃ち漏らしは多いらしい。だが、恐らくそれが敵の狙いだ」
「どう言うことだ?」
「簡単だ。火星はアルゲンテア条約で兵器の製造を制限されていた。支援した企業の兵器や、開戦から製造したものもあるかも知れないが、そんなものたかが知れている。あっちは戦力が喉から手が出るほど欲しいはずだ。だから……」
「鹵獲か」
「ああ。つまり隙はある」
彼は立体映像の一点を赤く強調表示した。赤い点の大きさはひどくアンバランスで、まるで地球儀にチェスの駒をくっつけたみたいだ。さらに、周りを小さな点によって囲まれていた。
「ノア級……」
「そうだ。船団後方に配置されていた17番艦、リュドミラが現在攻撃に遭っている。今回の作戦はその救出だ」
「大して変わってないじゃないか」唇を尖らせて、オフュークスが尋ねる。
「命令されたのはな。准将たちはそれさえすれば義理と面目を保てると思ったらしい」
「細部は僕たちに任せておけば、成果を犠牲に生き汚くなってもそいつらの責任にはならない、か。今ごろ脱出艇に燃料を積んでいるんじゃないのかな」
「よく分かってるな」
そういう上司には慣れてる、と言うとジョンが私もだ、と返した。なら、そういう人間に対するやり方も知っているはずだ。
「だが、その後については命令されていない。任務は果たしたのだから代理指揮官である私、ひいては私たちがどうしようと勝手だ」
「で、何処へ行くんだ?万が一成功するとして、安全な場所なんてないぞ」
「そこにある」
そういって彼は窓の外を指さした。暗黒の中に、ひとつの星の輪郭だけが光を伴っている。火星だ。僕にはそれが希望のメタファーには見えなかった。宇宙よりも少しだけ明度の高い黒の中にどうして、生きるための筋道があるのだろうか?そこは僕たちが戦っている人間たちがいる場所だ。
しかし、そこにしか道筋がないのならやるべきだ、と僕の脳みその一部分が叫ぶ。もう彼を信じられるのかどうかなんて確かめようがない。人の頭の中は誰にも暴けない。どっちみち重力の中に引き釣り込まれるのなら、一人でも殺してからの方が良い……
WHY。それが彼女が出した問いだった。ジルの残滓を継ぎはぎしたマルファスにはAIもそのまま入れ込まれている。
そもそもAIや機械には『なぜ』を問う機能がない。検索フォームに文字を打ち込めばそれに対する事柄が出てくるように、機械が与えるものは常に答えだ。なぜかというと、機械というものはおおむね人間のために作られているからだ。そのために大体の機械はこの世が一体どうなっているのか、自分が一体何なのかなんてことに興味なんてもたない。ただ人間にとって善良なプログラムを遂行するだけのものでしかない。
ラポールだってそれらしく質問しているように取り繕っているけど、それもただいくつかのパターンの選択に過ぎない。選択それぞれに数値が設定されていて、その増減と脳波の乱れ方がある一定まで到達するかを計測し、兵士という職業に就けるかどうかを判定しているのだ。つまり、脳波を誤魔化したまま完璧な答えを選び続ければ兵士になれる。
ラポールは知能があるフリをしているけれど、本質的にはタブロイド紙の心理テストと変わらない。僕が彼、または彼女を嫌う理由の一つだ。人間じゃないくせに人間のふりをしている。
ただ、最近は僕もそうではないのかと思うようになってきた。僕は選択を繰り返す。次々に変わっていく状況を打倒するために、生き残るために。しかし、それは何のためだ?僕には夢はない。焦がれるほどの愛や恋があるわけでもない。僕はただ生きている。それだけだ。
それなのに生き汚くなるのは、脳がそういうテストを行っているからじゃないのか。僕の脳が判断と呼ばれるものを下すために、周りの状況を観測し、採点して、ある一定を超えたらイエスかノーかを決めている。そう考えれば僕の判断は、生き残りという人類に打ち込まれたプログラムの一部だと言える。なら、僕は本質的にはただの機械にほかならないということになる……
それでもきっと、僕が生き残るということは正しいことだ。僕は脳を支配する、表しようのない情動をそう結論づけた。それはきっと意思で、感情で、僕を突き動かすものだ。そう思った。または期待した。
僕は死体を睨みつけるようにして見据えた。栗色の髪をした、まだ幼さを残した男。欠けた後頭部は細胞のパテで塞がれていて、もう血の跡はない。ただ肌色の組織だけがある。僕は彼の顔と名前は知らなかったけど、彼が誰であるかは知っていた。
あの時、暗がりの宇宙船内で話しかけてきた青年だ。熱を失った体の背格好がかなり似通っていたのもあったし、何より声だ。
鋭く響いた声。僕はそちらに意識を向けていなかったので、何を言ったかは分からない。それでも士官たちを糾弾したその音はドッグの喧騒の中でも聞こえて、すぐに彼だと分かった。確か、「グリア粒子を積まないでください」、か「食糧を積み出さないでください」とか。
その後に銃声が鳴った。僕は久しぶりにそれを聞いた。宇宙空間でいくら引き金を引くことがあっても、空気のある場所ではあまりない。まして、彼らのような使い方をすることもなかった。
揉み合いになって、士官が持っていた拳銃が暴発したらしい。運悪くも脳天に銃弾が通ったために即死だった。
僕がやったように幹細胞培養をすれば良いじゃないか、と思うだろうか。しかしいくら手足を培養できても脳は培養できない。医学は門外漢だけど、何となくそれは理解できる。脳はほんの少しダメージを負っただけで溶ける砂糖菓子だ。
残念だ、と医者は言った。それは本当のようで、彼の言葉には悲しみがあふれていた。残念だ、と僕も言った。
彼の葬式は極めて質素に行われた。数時間後には火星へ突入するような状況なので、献花を捧げることもできない。予備の冷凍ポッドに押し込められた死体は飾られることなく、宇宙の虚空に消えていく。
死体を星に戻すには遠すぎる。艦長の判断は、少しでも荷重をなくすために彼の遺体を宇宙に流すというものだった。僕はそれを正しいと思っていたけど、他の人間はそうでもなかったようだった。
彼を宇宙に送り出した後、非難する声がどこからか上がった。しかしながら、船長は咎めることはしなかった。自分でもそれは理解していたようだった。
非難するべきは士官であって、船長ではない。あなたたちは機嫌を損ねても殺されることのない人間を選んで、自分たちの苛立ちと恐怖とを義憤として昇華させたいだけだ。そう言うことは簡単だったけど、やめた。どうせ無駄だと知っていたから。
僕は彼の死に対して、どう思うこともできなかった。ただ、僕は全く悲しまなかった。人が死んだのにまるで何も思わないこと、僕は僕の生存のために行動できること、それはまるで機械のようだと思った。
どうしてなんて思えなかった。動かなければならないとだけ、僕は答えを出した。
踵を返してドッグへと向かう。救出作戦はもうすぐに迫っている。
彗星のような光芒たちが宇宙を照らしている。
ひょっとしたら、ダークマターは孤独で出来ているのではないかと思うほど宇宙というものは粛然としている。しかし、この時は違った。曳航弾とスラスター光を引き連れて、沢山の宇宙船とデーモンたちが一点に向かって移動している。おそらく、僕は彼らの目的地を知っている。
目を向ける必要すらなく、白い巨船が瓦礫の中から覗く。鯨が海から跳ねるように加速し始めるが、まとわりつく敵艦とデーモンたちの手によって阻まれている。僕たちが行ってきた戦闘とはかけ離れた、酒場の喧嘩のような戦い。
陣形や戦術など殆どなく、縺れ合う艦船とデーモン。また、その破片たち。それがいま目の前を構成する全てだった。僕たちが行ってきた戦闘とはかけ離れた酒場の喧嘩のような戦い。敵味方なく殴り合い、身をよじり、血と歯を撒き散らし、そして明確な勝者のいないまま、夜が明けていく。ひとつ違うのは、参加した者たちが次々に息絶えていくことだろうか。
僕は初めて、戦場が宇宙でよかったと思った。叫び声を伝播させる空気はここにはない。通信を閉じさえすれば、どんな叫び声や呻き声、断末魔たちの合唱も聞こえなくて済むのだから。
『IFFは機能しているな?』
「ああ……だけど、こんな状況じゃどこを撃ったって同じようなものだ」
三次元的に視覚化されたミニマップの中では、数えきれない数の味方と敵がカミーユ・ピサロの点描画のような光景を作り出した。そんなことが出来るのは僕が左腕に入れていた生体端末と同じようなものが兵士の一人一人に埋め込まれているから、らしい。
地球連邦とそれに与する傭兵のコードがわかっているから、それ以外が全て敵だと識別できている。僕はあれのことをそうだとしても、この数は異常だった。 その中へ突入する。そう思うと身の毛がよだつような気になる。ただ、僕はそれを脳の反応として感じているだけで、現実では問題なく突入してしまうのだろう。
『なら、いいじゃないか。目の前のものを全て壊せばいい』
「あんたはそれでいいけどな……」
『回線は繋いだままに。リュラは救助信号を出しているものの援護、搭載出来そうなデーモンの誘導は此方でやる。オフュークスは敵を切り捨てろ。尚、この作戦は30分間のみ継続する。復唱の要なし』
「『了解』」
嵐の中へ。