11,
『敵性存在を検知しました。敵性存在を検知しました。席に座り、シートベルトをお掛け下さい』
「ジル」
「もう終わっています」
「シートベルトなんてあったのか?」
『敵性存在を検知しました。敵性存在を検知しました。席に座り、シートベルトをお掛け下さい』
「ここの隙間ですよ!え、えっあ皆さん?!」
セキスイ以外は皆立っていた。反応が鋭い。もしエレベーターが崩落でもしたら最後まで生存しているのは彼女だろうな。そんな事が起きたらどうせみんな死ぬのは変わらないが。
壁の一部が動いて、後部にある荷台への道を開く。明らかに客が通るような扉では無さそうだから、メンテナンス用の通路だろう。ジルはこのかごをずっと前から掌握していた。僕が暗がりの中に進むと、誰かの靴音が続いた。
鉄でできた床を踏む音とモーターの駆動音が静かに響く。電子音でできた聖歌の響く教会のようだ。もう誰も知らない、誰も歌えなくなった音楽を奏でているように無意味な音だ。少し進んでからせせこましい足音が近づいてきた。ちょうどケーブルにミサイルが当たってかごが激しく揺れた。
「うわっ……もど、戻りましょうよ。指示に従いましょう、危険ですよ」
「いや。迎撃する」
「宇宙には地球同盟軍がいるじゃないですか!?」
「忘れたのか。ノア級はケプラー452の軌道上に居る。もう静止をやめて衛星軌道に戻ったんだ」
僕は彼女の方を見ずに話す。加速度的に言葉の速度が高まっているのは、自分で言っていてなかなかまずい事態だと気づいたからだ。
「宙空の無人兵器に期待するか。だけど、そもそも人工筋肉が使われていない古典的な砲台を見つける方が難しいだろう。ここのエンジェルが化け物に変わった以上信頼できない」
「そして、宇宙エレベーターのケーブルが破断されることはない。炭素フィブリル構造が19kmあるんだ。僕たちの居るかごが破壊されるのが一番危険で、一番そうされる可能性が高い。だから迎撃しかない」
矢継ぎ早に繰り出した言葉は軍靴のリズムと混じった。数10m程度しかない筈なのにやけに遠く感じてしまう。ごへっ、みたいな音が聞こえた。セキスイがどういう顔をしたのかは分からない。想像する気も無かった。
彼女が、あ、と何かに気づいたように声を発した。僕はようやく振り返る。心の中で何度か試みたことをようやく実行した。僕の後をつけてきた2人と、取り残されたような1人。歩くスピードを調節できなかったのかと、そこはかとなく罪悪感を感じた。
彼女はそこに立ったまま服の裾を掴んだ。コーデュロイ地のジャケット、色は暗くて分かりづらいがカーキだ。
「す、すみません。またやってしまって。はい。ごめんなさい」
「……またも何もない。何もやってないだろ」
「それでも、迷惑はかけましたから。私の」
僕は必死に取り繕おうとして言葉を探した。悪い因習が悪い結果へとつながり、何も思いつくことは無かった。彼女にとって触れられたくない事だったのか?
「落ち着いてくれ、セキスイはこれくらい知っているだろう。僕たちと違って才能があって勉強もしていたからな。じゃなきゃ企業には入れない。緊張せずに考えればいい」
「そん……な。そうかも、しれないですけれど。はいええと。はい」
「……あんましいじるなよな」
「何がだ」
いちいち考えたり慮っているような暇もないから。それは言い訳なんだろう。自分は変われるとは思えない。いくら取り繕ったとしても本性をさらけ出す時は来る。何の準備も出来ていないのに人を傷つけるのだ。結局の所僕は感情を一部理解できて、一部出来ていない。くだらない俗人で完璧には程遠いもの。
何も変わりはしなかった。マクスウェル機関と脳を繋いでも、父親を殺しても。僕は柔らかくて不確かなものと触れ合うことができない。最近になってから気づいたことだが、ずっとそうだったのだろう。
次の扉が目の前に現れたのはそれから直ぐのことだった。簡素な照明と鉄骨の張ったドック。後ろに積み込み用のシャッターが降りていた。シンプルなステルス塗料に覆われた一台の装甲車がそこにある。ミサイルが掠ってかごが揺れるたびに車体が揺れていた。
戦車か消防車かと見まごう大きさの車。装甲車の後部兵員室は不自然なほど盛り上がっている。中にデーモンが4機とカタパルトが詰まっているせいだ。ケーブルと溝だらけの車内。一度見たけれど、とても人間が長時間居ていいような空間ではなかった。畳められた砲塔とケーブルでスペースは埋め尽くされて、床にはガイドラインが刻まれているため迂闊に足を進められない。いちおう、そこが待機スペースらしい。
ただ、その能力はとても使える。以前の戦闘で使ったファフロッキーズ。もし事が起きればデーモンは溝を移動して、砲塔の中に張り巡らされた人工筋肉の鞘に載せられる。必要な装備も押し込めたら準備は終わる。リニアカタパルトから発射され毎秒200m程度の速度を出し終着点へと向かう。地表へ触れると筋肉がショックを吸収してゆっくりと着地する。
そうして僕たちは戦場を作ることができる。今まさに、それが行われようとしている。
「せまっ」
「セキスイ、充填はどうなってる」
「お、終わっています」
「僕が最初だ。続け」
ケーブルの茂みを乗り越えて筋肉の鞘の正面に立つ。この人工筋肉だって、いつかはあの怪物になるのか?そうなれば死ぬだけだから、無意味な想像だった。切れ目に手を突っ込んでデーモンに指紋と脈拍を見せた。その直後、静かに僕は悪魔へと飲み込まれる。
頭の中からノイズが減って、頭痛が消えていく。正常に感じていた感覚が異常だと理解できるようになる。ようやく僕は戦場へと帰れる。それも不謹慎だろう。
『フライトユニットを確認。ヴァシミールスラスター供給電源0%。マイクロミサイルリンク完了、ハプティスタリンク完了』
ジルが乗っ取るまでもないサポートAIは限りなく簡素だ。最新型の開発者も僕と同じようにAIを嫌っていて喜ばしい。
スライドを引いて銃弾をチャンバー内へ。ナイフと拳銃は太腿のホルスター、肩部にハプティスタ対物ライフル。フライトユニットにミサイルポッド、グリア粒子のリンクは繋いである。動作を確認する暇はないので、昨日の整備を信用するほかない。
思考が巡ったのが2秒ほどの間。それからすぐに僕は深淵の中へと飛び立つ。加速によって裾を掴まれる僕の体をリキベントとマクスウェル機関が元に戻す。切り離される。1つの法則から。
デーモンの表面が光を飲み込んでいる。グリアミサイルの光芒が煩くても銃が構えられる。HUDに描かれた軌跡にサイトを合わせて引き金を下ろした。12.7×99mm弾頭がグリアミサイルを掠め、貫いて撃ち落とす。CILWSの光が灯るとまた真っ赤な色の爆風が増えた。
さらにカラフルになった戦場へと向けて、僕は歩みを進める。ヴァシミールスラスターがデーモンを推して、あっという間に最高速へ。死のうとしてマルファスを機敏にした時よりかは緩やかだけど、今回はそれでいい。
光が押し潰されたなか、グリアミサイルを発射する。しかしながらエンジェルのまだ肉に塞がれていない部分から迎撃用のレーザーが放たれた。現状の主力兵器として当然防御性能も兼ね備えている。僕の攻撃は無意味に宇宙へと粒子を散りばめるだけで終わった。ライフルはミサイルの迎撃に手一杯で、攻撃の手段が乏しい。
エンジェルはライフルの射程外から攻撃を続ける。僕はエレベーターのケーブルを遮蔽に使い、すり抜けて来たものをライフルとCILWSで捌く。膠着した、いや段々と不利になっていく戦況へと砲門が降りる。肩部に装備された対物ライフル、ハプティスタ。FCSと直結された砲塔はひとりでに動いて彼方へと狙いを定めた。
2つの爆発が起こる。僕の近くで、そして遠くのデブリの中で。30×173mmAG弾はグリアミサイルごとエンジェルを撃ち抜いた。肩部に備えられたラックには特殊な機構が付いている。それそのものが跳ね上がり、人工筋肉によって勝手に引き金を引いてくれる。わざわざ旧式の銃器を肩に付ける必要が無くなった。
ただ、人工筋肉とフレームが軋む音は射撃のたびに鳴って止めようがない。対物ライフルはとても人間が撃つような口径と銃身長をしておらず、デーモンでも撃つたびに不安にさせる。
エンジェルの死は煌々と輝いた、そしてただの細胞死に過ぎなかった。射撃は自動的に続く。全身に振動が伝わる度にエンジェルは撃ち落とされていくが、ミサイルはむしろ数を増していく。ついに攻撃も行えなくなったとき、ようやくその時がやってきた。
ファフロッキーズが唸りをあげて、デーモンを発射した。肉塊へと向かうミサイルを撃ち落としながら通信を繋ぐ。
「エンジェルは軌道外部だ。援護しろ。相手は増え続けている」
「N16°、Z289°の方向。距離は218km先です」
『何で増えてんだよ……』
「人工筋肉が宇宙空間で破裂し、感染したような形です」
「軌道エレベーターに沿って降下していく。相手戦力は多いが、やれるな」
『やらねえとは言ってないだろ!』
『だが隊長、あいつらの量が俺たちだけでどうにかできるのか』
「出来ないな。だからセキスイを呼んだ。ケーブル表面にあるビーコンを見つけてハッキング、救援を要請する。最悪でも地球同盟が来る」
僕はそれが正しいことなのか分からなかった。地球同盟が駆け付けるとは思えない。彼らが軌道に配置しているデーモン部隊は僅かだろう。PMCも危険すぎる依頼に手を出すとは考えにくい。それでも道は一つだけだ。迷う必要はない。
「行くぞ。編隊を乱すな」
兵火は激しさを増した。エレベーターのかごはあっという間に溶けて無くなった。後で弁償なんてさせられないとは分かってるが、ネリーの見下した顔を思い出すとどうだろう。
アウターシールドの煤が装甲に焼き付いた。赤く、やや幻想的なグリアミサイルの爆風は僕たちを容易に死に至らしめることができる。感情抑制によって整えられた神経を乱すように、ミサイルの雨は降り注いでくる。4人になって強固になったはずの防御網を抜けている。
ライフルは人工筋肉によって半自動的に動き、ミサイルの子弾を撃ち落とす。重量の感覚から弾倉を抜き取って交換した。残りは4。この数分で2本使った。対物ライフルでエンジェルの撃墜はしているが、一向にFCSの影は消えない。ジルの言った通り敵が増え続けている。
サーチライトが壊れて夜が戻ってくる。色彩の変わった視界の中に新たな表示が生えてきた。ジルがビーコンを見つけてくれた。
「セキスイ」
『はい』
濃淡のない声色が聞こえた。ライフルの反動が混じって、どことなく震えのようなものがあったように思ってしまう。デーモンが補正すると感情の機微も分からなくなる。元から理解出来ないと言うのなら、そうだ。だから無駄だろう。
一時的に進軍を止める。軌道エレベーターの中腹に設置された電波中継用のビーコンを囲んで陣形を作った。おおよそやっていい事ではないが仕方がない。
空からやってきたものが空中でばらばらにほどけて、小さい何かが現れる。親弾から子弾が分離した。集束爆弾のように大きなミサイルの中にマイクロミサイルが格納されている。パワー級エンジェルはこれを200発も詰め込んでいる。代わりに銃器は搭載されていないが、そもそもそんな距離で戦闘を行わないのが彼らの戦術だ。
調べておいたその無慈悲さが、今僕たちを包もうとしている。スコープを覗くことなく引き金を下ろし、迎撃を行う。狙いはデーモンがやってくれるので考えなくていい。トーチカとなった3機のデーモンは乱暴な射撃で防衛を続けていた。だが、限界が訪れているのを僕は感じていた。
メンテナンスパネルを力任せに引きちぎり、鳴ったアラームはケーブルを挿して黙らせる。少し前のおどおどした彼女とは違ってやや乱暴な手つきで。横目で見たそれは、簡単な違法行為だからそう時間は掛からなかった。だけど、ミサイルが訪れるには十分すぎる時間だった。
「退避しろ」
『ま、待って。ください。プログラムがまだ終わって』
「いいから逃げてくれ」
爆発が起こる頻度が増える。僕たちとの距離が縮まる。保たないと思った直後にミサイルが防衛網を突き破った。離れろ、と叫んだ。外殻を蹴り出したデーモンは2機、1機だけ反応できていない。レドームが背中に付いたデーモン。セキスイ。
レバーを力任せに引っぱった。爆砕ボルトが起動してミサイルコンテナがパージされる。グリア粒子が詰め込まれたミサイルが止めていた慣性に引っ張られていく。起爆のための火種はそこらじゅうで爆ぜ続けている。
最大戦速を出すとさすがに頭の血が遠くに持っていかれた。それも僅かな間だけだ。真紅の爆発が僕たちを照らした。グリアミサイルは近接信管でも十分な殺傷能力を持つ。熱せられた粒子はアウターシールドごと人体を炭化させてしまう。それは僕のデーモンに搭載されたものでも同じだ。
頭部の僅かな凹凸は景色を写さず、しかめるように動いていた。僕は彼女を掴んで足場を強く蹴り上げる。一時的に速度が増して、どうにか平均誤差半径から離脱できた。
「接続は済んだな。さっさと降下するぞ」
『はい、すみません。役立たずで』
「いいから動いてくれ。デーモンには重力があるんだ」
確かに彼女はPDWのひとつさえ構えていなかった。だけどそれはバックアップとして雇われたための不幸な事故と言うか、飲み込むべきリスクが露呈しただけだ。その前のことはどうだか分からないが、少なくとも今追求するべきではないことだけは確かだ。だから彼女に責は無い。それを伝えている暇が無いけど。
反転して射撃を継続する。重力加速度に運ばれながら移動を続ける。発射されたドローンが爆発に巻き込まれて飴細工のように溶けていく。印象派の絵画のように光が満ち足りていた。軌道エレベーターの外壁が宇宙へと飛んで行くさまも、真っ黒くこの宙域には僕たちしかいないのか、と想像を膨らませてしまう。
信号が送られてから数分か、もしくはもっと短いか。仕事をしている時みたいに時間を確認する暇がない。保険会社の救助か、依頼に釣られた馬鹿な傭兵が来ることを願った。
何かが飛んでくる。紅の光に照らされた柱のようなもの。ミサイルの親弾だ。うまく動作しなかったのか、子弾が積まれたコンテナ部分が開かないまま僕たちに向かって来ている。銃弾が何回もそれを撃ち落とすために発射された。しかし、撃墜には至らない。
爆発的に飛散していく粒子、それを妨げる大気や重力はない。粒子の奔流が体に触れた。右脚が燃え尽きた。
崩れてしまった陣形へとミサイルが降り注ぐ。バレルロールで咄嗟に避けてシザーズ。ようやく攻勢が止まってから被害を確認する。IFFに消えてしまった光点は無い。
「負傷は」
『左腕をやられた』
『だ、大丈夫です』
『ちくしょう、指がもってかれた!』
「お前が一番軽傷だ。それぐらいなら問題はない」
『うるせえ!どうすんだよこれ!?撃っても撃っても……!』
僕はやっと彼を注意してみることが出来る。被弾した分総重量が減ったせいだ。アゲナはずっとトリガーに指を置いたままだ。どうやら負傷は利き手ではない。普段だったら注意しなければいけないことだけど、現在の状況では問題がない。
『あいつをさっさとやめさせてたら』
「後でやってくれないか」
ジョージは右腕の前腕部分が消えていた。彼も利き腕は右だが、左に持ち替えて射撃を続けている。以前のような動揺は見られない。僕とトリチェリのことを思い出せば不思議はない。どうやら状況は少し悪くなっただけで済んだ。まだ決定的ではない。それだけだが。
何回も、何回でも。攻撃は止むことなく続いている。アゲナの言う通りだ。射撃がズレて何秒間か連続して引き金を下ろしていた。失血による手の震えを人工筋肉が補正しきれなかったのだ。効率の悪化はそのまま僕たちに跳ね返ってきた。
壁面にグリア粒子が跳ね返り、無作為に破滅的な温度を撒く。赤いそれが肩に触れた。咄嗟に回転して振り払う。そのつもりだったけれど、右腕が無い。失血のために反応さえ遅くなっている。十数分のうちに意識にも影響が出始めるだろう。それと主兵装を失った僕、どちらの終わりの方が早いだろうか。
何となくレーダーを見ていた。振動に耐えることとスラスターを使うこと以外にやることが無かったためだ。重力レーダーには4つの光点、それと軌道エレベーターの線しか無いはずだった。
重力波が来る。軌道下部にある船団の群れが近づいている。中小商業船がお互いの需要を求め、緩やかに寄り集まったもの。そこになら傭兵がいる。どうにかして押し付ければ僕たちを助けざるを得なくできる。
そして、希望が来るよりも早く夕暮れが近づいてくる。ミサイルの雨が激しく降り注いだ。誰かの脚が無くなったが、それが誰なのか分からない。完全に攻撃能力が迎撃能力を上回ってしまった。弾頭は重金属の壁面に当たり、デーモンのアウターシールドに反応して爆発を続けた。
軽くなった僕一人であればどうにかなるだろうか。いや、隊長が言う事では無いか。それなら僕以外の方が後腐れがないな。
「誰か分からないが脚を1本やられたやつ」
『あー、そこのデーモン軍団たち。どきなさい』
『誰だよ!?』
『幸運のセントエルモの火さ。君の主人の準備はどうだい、ジル?』
『船が来たぞ!逃げろ!焼かれちまうぞ!』
そうジョージが言った。僕はさすがに民間的な対処法までは知らなかったので、その言葉が聞こえてから反応するしか無かった。長大なミサイルが、延長された神経のなかではっきりと見える。C.K.とペイントされたそれはかつての火星で戦ったときに見た骨董品に似ていた。
3人よりやや遅れたせいでそれが作動する方法を見れた。燃料を噴射して減速し、熱されたグリア粒子を噴霧器のように撒く。マイクロミサイルが宙域に漂った粒子に近づくと近接信管が反応して爆発した。それが繰り返されて大きなグリア粒子の星雲になる。
数秒と経たないうちに僕たちの前は赤いグリア粒子で埋め尽くされた。S方向からやって来た宇宙船の前にもそれが留まっていた。それなりに量産出来ているらしい。自分がやりたくないことをやって儲けるというのはどういう気持ちだろうか。
『要請は聞きました。すぐにこちらへ。暴走エンジェル群は私たちのフリゲートが対処しています』
輸送のためのコンテナがごてごてと積載された船がハッチを開いた。通信の声は穏やかに僕たちに語りかける。先ほどのエフェクトのかかったものではない。どうにか残った意識で考える。
少なくともあのミサイルに似たものが燃えている間は安全だろう。暴走したエンジェルに防衛線を突破するような知能はない……はず。もし彼らが敵だったとしてもどうにか退避できる。この船の重力反応は一般的な艦船の範疇に収まっているから。何にせよ、ここで足踏みするという選択は何も生まない。
『隊長、大丈夫なのか?攻撃の意志は無さそうだが……』
「声の主は知らないが、これを開発した奴は知ってる。何にせよ負傷しているんだ。遠慮なく乗ろう」
『ああ、そうしてえよ』
どうやら足を失ったのはアゲナだったようだ。




